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やりっぱなしになってない? ストレスチェック結果を最大限に活用するには

(更新:

2017年6月末の時点で、ストレスチェック制度の義務化以降、対象となる事業場の82.9%がストレスチェックを実施し、労働基準監督署に実施報告書を提出しています。※厚生労働省労働衛生課調べ(2017年7月)

 

ストレスチェックが義務化されたことにより、企業のメンタルヘルスに対する考え方は変化し、実際にメンタルヘルス対策を独自に始めている企業も増えつつあります。

 

しかしながら、「義務化されたからとりあえずストレスチェックをやってみた」という企業も多く、ストレスチェックの本来の目的に対してうまく活用できていない企業がまだまだ多いのが現状です。

 

 

ストレスチェック制度を行なった事業場が直面した課題

 

以下は過去に弊社にお問合せ頂いた企業様が抱えているストレスチェックの課題になります。

 

  • 初年度でストレスチェックを行ったが、高ストレス者面談を対応する医師の選任を行っていなかったため、面談希望者の面談指導実施まで非常に長い期間がかかってしまった。
  • 高ストレス者は判定されたが、その中から面接志望者が出なかった。
  • 人事評価を気にして、正直に回答しない人が多い。
  • データを収集しただけで集団分析を行わず、職場環境の改善にはつながらなかった。

 

これらを紐解くと、多くの企業で抱えているのは【ストレスチェックの実施後の対応、結果の活用方法】であることが分かります。

 

  • 高ストレス者が出た場合の企業側の対応方法
  • ストレスチェックの実施結果をどのように分析・活用し、社内改善策を講じるか

 

この2点が一番の悩みの種であると言えるのではないでしょうか。

 

ストレスチェックの目的を達成するためには

 

ストレスチェックは結果をきちんと活用すれば、本来の目的である【労働者のメンタルヘルス不調の未然防止】を達成する事は出来ます。では、具体的にどのような施策あるいは体制を整えるべきなのでしょうか。考えられる施策・体制をご紹介致します。

 

1.機密性の保持

まず、施策を行う上で最も留意しなければならない点は【機密性の保持】といっても過言ではないでしょう。ストレスチェックを実施する上で、これがきちんと担保されていなければ、社員は本音でストレスチェックの質問票に回答する事が出来ません。実際に上司や人事の評価を気にして、実際とは異なる回答をしてしまうケースも多くあります。

 

ストレスチェックの回答結果を実施者である【産業医】や【産業保健師】などが管理し、人事権を持つ社員に個人の結果が行き届かないよう、企業側は配慮した上で、労働者に対して周知しなければなりません。

 

しかし、得られた結果を今後の社員の健康管理に活用しなければ本来の目的を達成する事は出来ません。次は集計結果の活用についてご紹介致します。

 

※  集団規模が10人未満の場合、個人特定されるリスクが高いため、全員の同意がない限り実施者からストレスチェックの結果をもらうことは禁止されています。原則人数が10人以上の集団を集計の対象としましょう。(ストレスチェック制度簡単!導入マニュアル』より)

 

2.集計結果の活用

ただストレスチェックを実施し、高ストレス者に対して面談を行うだけでは、ストレスチェック制度の本来の目的である【メンタルヘルスにおける社内改善】を達成する事は難しいでしょう。

そのため、ストレスチェック制度ではストレスチェックの結果に基づいて【集団分析】を行う事が努力規定として定められています。

 

(検査結果の集団ごとの分析等)

第 52 条の 14  事業者は、検査を行った場合は、当該検査を行つた医師等に、当該検査の結果を当該事業場の当該部署に所属する労働者の集団その他の一定規模の集団ごとに集計させ、その結果について分析させるよう努めなければならない。

 

2 事業者は、前項の分析の結果を勘案し、その必要があると認めるときは、当該集団の 労働者の実情を考慮して、当該集団の労働者の心理的な負担を軽減するための適切な措置を講ずるよう努めなければならない。

 

労働安全衛生規則より抜粋)

 

この【集団分析】ですが、ストレスチェック制度実施マニュアルでは以下のように定められています。

 

集団ごとの集計・分析の方法

 

  • 集団ごとの集計・分析の具体的な方法は、使用する調査票(ストレスチェック項目) により異なりますが、国が標準的な項目として示す「職業性ストレス簡易調査票」(57 項目)又は簡略版(23 項目)を使用する場合は、「職業性ストレス簡易調査票」に関して公開されている「仕事のストレス判定図」によることが適当です。
  • 独自の項目を用いる場合には、「仕事のストレス判定図」を参考としつつ、これま での研究や実践事例を参考としながら各企業において適切な集計・分析方法を定めるようにしてください。

 

このように「仕事のストレス判定図」という厚生労働省が無料で提供する分析ツールを用いる事が推奨されています。

 

「仕事のストレス判定図」は最小12問の質問による回答結果から4つのストレス要因である

 

  • 仕事の量的負担
  • 仕事のコントロール
  • 上司の支援
  • 同僚の支援

 

を部署ごとにグラフ化する事が出来ます。この分析ツールは個人ごとの結果を特定せずに、一つの集団として分析する事が出来るのが特徴になります。

 

※  集団規模が10人未満の場合、個人特定されるリスクが高いため、全員の同意がない限り実施者からストレスチェックの結果を集計することは禁止されています。原則人数が10人以上の集団を集計の対象としましょう。(『ストレスチェック制度簡単!導入マニュアルより)

 

 

出典:「仕事のストレス判定図」マニュアルより

 

こういった分析ツールを用いる事で、部署などの集団の分析を行う事は出来ます。しかし、集団分析において最も大切なのは【得られた結果からどのような社内改善を行うか】であり、これを社内だけで決定するのは非常に難しいでしょう。そのため、集団分析は自社で行うのではなく、外部に委託することが望ましいかもしれません。

 

3.ストレスチェックの継続的利用

 

ストレスチェックの実施結果から、集団分析を行ったうえでメンタルヘルス対策を行う事は大切ですが、対策結果はすぐに表れるものではありません。中長期的な視点で経過観察をしていく必要があります。毎年継続的にストレスチェックを行い集団分析の数値を経年で確認することはもちろん、休職率の改善傾向を把握したり、メンタルヘルス対策として社内で行った施策について社員からのフィードバック機会などを設け、PDCAサイクルを回していく事が重要と言えるでしょう。

 

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