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休職者が多い職場の4つの特徴とは?人事労務担当者が取り組むべき対策を解説

甘中 亜耶

休職者が多い職場の4つの特徴とは?人事労務担当者が取り組むべき対策を解説
休職者が多い職場の4つの特徴とは?人事労務担当者が取り組むべき対策を解説

「メンタルヘルス不調による休職者が増えている」「残された社員の負担が心配」と対応に悩む人事労務担当者は少なくありません。

 

従業員の休職は、企業全体の生産性の低下や連鎖的な休職・退職を招くリスクをはらんでおり、どの企業にとっても看過できない課題です。

 

この記事では、休職者が多い職場に共通する特徴から、人事労務担当者が取り組むべき具体的な対策まで解説します。

 

休職者対応に悩む企業は多い

 

職場で勤務するビジネスパーソンのイメージ

 

メンタルヘルス不調による従業員の休職は、10事業所に1つの割合で発生しているのが現状です。 

 

厚生労働省のデータによると、過去1年間にメンタルヘルス不調により連続1か月以上休業した労働者がいた事業所の割合は10.2%に上ります。特に、事業所規模が大きくなるほどこの割合は顕著に増加し、多くの企業が休職者対応に直面していることがわかります。

 

【事業所規模別】メンタルヘルス不調により連続1か月以上休業した労働者がいた事業所の割合

区分 連続1か月以上休業した労働者がいた割合(%)
1,000人以上 88.2
500~999人 81.1
300~499人 70.7
100~299人 52.2
50~99人 24.8
30~49人 10.9
10~29人 4.2

※「令和6年労働安全衛生調査(実態調査)の概況」(厚生労働省)を編集して作成 

 

メンタルヘルス不調による休職者対応が課題となる理由

 

メンタルヘルス不調を抱えるビジネスパーソンのイメージ

 

メンタルヘルス不調による休職者対応は難航しやすく、社会的にも深刻な課題です。その背景には、主に以下の2つの要因があります。

 

(1) 高止まりするメンタルヘルス不調者の発生数

まず挙げられるのが、社会全体でメンタルヘルス不調者が右肩上がりのまま高止まりしているという現状です。下のグラフを見ても、精神障害にかかわる労災保険給付の請求件数は年々増加し、2010年度(平成22年度)に比べて3倍以上にまでふくらんでいます。

 

【精神障害事案の労災保険給付の請求件数】

労災請求件数の推移

出典:令和7年度過労死等防止対策白書(概要版)|厚生労働省 

 

このようにメンタルヘルス不調による休職は、もはや一部の企業や個人だけの問題ではなく、どの職場でも起こりうるリスクとなっています。

 

(2) 再休職率の高さと、それに伴う現場の疲弊

もう一つ、実務担当者を悩ませるのが再休職の問題です。メンタルヘルス不調で休職した従業員の約半数(47.1%)が、5年以内に再休職しているという報告があります。

 

再休職が起こる主な原因は、まだ十分に回復していない段階での「時期尚早な復帰」や、復帰後の職場の「受け入れ体制(業務量など)とのミスマッチ」の2つです。 

 

特定の従業員が休職と復職を繰り返す状況は、フォローに入る周囲の従業員の負担を慢性化させ、現場を強く疲弊させることにもつながります。

 

メンタルヘルス不調による休職は、従業員個人の問題として片付けることはできません。そのため企業には事後対応にとどまらず、組織全体でのメンタルヘルス教育や職場環境の改善など、休職および再休職の発生を防ぐ包括的な取り組みが求められています。 

 

※「主治医と産業医の連携に関する有効な手法の提案に関する研究」(厚生労働省科学研究費補助金 平成28年度労働安全衛生総合研究事業)を編集して作成

 

休職者が多い職場の4つの特徴

 

休職届のイメージ

 

休職が発生しやすい職場には、従業員個人のストレス耐性の問題だけでなく、組織の仕組みや職場環境に起因する構造的な課題が潜んでいます

ここでは、休職者が多い職場に共通して見られる4つの特徴を解説します。

 

(1) 長時間労働の常態化と休みにくい風土

厚生労働省の「令和6年 労働安全衛生調査(実態調査)(以下、調査)」によると、従業員が仕事で強い不安や悩み、ストレスを抱える原因として、上位に挙げられるのが仕事の量です。恒常的な長時間労働は、心身の疲労を蓄積させ、メンタルヘルス不調を引き起こす直接的な要因となります

 

しかし、深刻なのは残業が多いという事実だけではありません。人員不足や業務の属人化(特定の人しかできない仕事がある状態)が起きている職場では、「自分が休むと業務が回らなくなる」「同僚に迷惑がかかる」という強いプレッシャーが働きます。

 

このプレッシャーが心理的なハードルとなり、有給休暇の取得や、ちょっとした体調不良時の休息をためらわせる休みにくい風土を生み出します。従業員がギリギリまで無理を重ねてしまった結果、メンタルヘルス不調に陥り、休職に至ってしまうという問題が存在します。

 

※「令和6年労働安全衛生調査(実態調査)の概況」(厚生労働省)を編集して作成

 

(2) 対人関係のトラブル

職場のストレス要因として、「仕事の量」とともに上位に挙げられるのがセクハラ・パワハラを含む対人関係です。

 

対人関係のトラブルが起きると、当事者同士の性格の不一致など個人の問題として捉えられがちです。しかし、トラブルを放置すると、セクハラやパワハラといった深刻なハラスメントを誘発する温床になります。結果として従業員が心理的な安全性を保てなくなり、メンタルヘルス不調や休職の直接的な原因となります。

 

※「令和6年労働安全衛生調査(実態調査)の概況」(厚生労働省)を編集して作成

 

(3)コミュニケーション不足

職場の人間関係が特別に悪くない場合であっても、コミュニケーション不足が休職の要因となるケースがあります。

 

リモートワークの普及や、プレイングマネージャーとして管理職の負担が増している状況を背景に、業務連絡以外のちょっとした相談や何気ない雑談の機会が減少している職場も少なくないでしょう。

 

厚生労働省の調査によると、職場のストレス要因として「仕事の失敗・責任の発生等」も上位に挙げられます。仕事でのミスや重圧は誰にでも起こりうるものですが、職場に相談しやすい関係性があれば、周囲のフォローによって心の負担を和らげることができます。

 

しかし、コミュニケーションが不足している環境では、こうした業務上の悩みや不安を一人で抱え込まざるを得なくなり、従業員の孤立感を深めてしまいます



さらに、上司や周囲の同僚が「遅刻やミスの増加」「表情の暗さ」といったメンタルヘルス不調の初期サインに気づく機会を奪ってしまうため、対応が後手に回り、早期発見・早期介入を困難にしてしまいます。

 

※「令和6年労働安全衛生調査(実態調査)の概況」(厚生労働省)を編集して作成

 

(4) 復職支援の形骸化

復職に関する就業規則はあっても、実態が伴わない復職支援の形骸化は、再休職を引き起こす要因です。

 

よくあるのが、休職中の状況把握が不足したまま、主治医の診断書だけを根拠に十分な業務調整を行わず、元の職場へ復帰させてしまうケースです。

 

しかし、主治医は職場環境や業務内容を熟知しているわけではありません。そのため、企業が求める通常業務を遂行できるレベルの回復にはギャップがある場合も多く、産業医の意見も含めて職場復帰可能かを多角的に検討する体制が不可欠です。 

 

さらに復職後も、就業制限の段階的な解除や、産業医や人事による定期面談などのフォローアップが形骸化していると、本人の回復度合いと業務負荷のミスマッチが生じかねません。

 

過度な負担から従業員はふたたび限界を迎えてしまい、再休職を招いてしまいます。

 

休職者が多い企業が直面する問題

 

疲労がたまる中で勤務するビジネスパーソンのイメージ

 

休職者の発生は、休んでいる本人の問題にとどまらず、組織全体に重大な影響を及ぼします。休職者が多い状況を放置することは、企業にとってどのようなリスクをもたらすのでしょうか。

ここでは、企業が直面する代表的な問題を解説します。

 

残された従業員のモチベーションや生産性の低下

休職者が出た際、最も直接的な影響を受けるのが、欠員をカバーする周囲の従業員です。人員の補充がないまま業務を引き継ぐことになれば、当然ながら残されたメンバーの精神的・肉体的な負担は増大します。

 

こうした状況が長く続くと、「いつまでこの状態なのか」といった不満や徒労感が職場全体に蔓延します。その結果、チーム全体のモチベーションや生産性が著しく低下してしまうのです。

 

さらに深刻なのは、カバーに入っていた従業員が疲弊し、彼らまでメンタル不調に陥って休職や退職に追い込まれてしまうリスクがあることです。

 

採用・育成コストの増大

休職が長期化し、そのまま期間満了等で退職に至った場合、企業には大きな経済的損失が発生します

 

欠員を補充するための採用活動費(求人広告費や人材紹介エージェントへの報酬など)は、一人あたり数十万〜数百万円単位に上ることも珍しくありません。それに加え、新たな人材が一人前に育つまでにかかる教育コスト(研修費用や指導する社員の人件費)も見過ごせない要素です。

 

また、新入社員が業務に習熟するまでの間の現場の生産性低下といった、目に見えにくいコストも積み重なります。

 

休職から退職への流れが定常化してしまうと、こうした採用・育成コストが企業の利益を大きく圧迫することになります。

 

企業ブランドの低下

休職者や退職者が頻発する状況が続くと、企業のブランドイメージにも深刻なダメージを与えます。

 

現代では、インターネットの口コミサイト等を通じて「働きにくい会社」「休職者が多い職場」といったネガティブな評判が広がるリスクが常にあります。

一度こうした情報が定着してしまうと、将来の採用活動における競争力低下(応募者の減少や内定辞退の増加)を招いてしまいます。

 

さらに、近年重視されているESG(Environment, Social, Governance)の観点からも大きなマイナスです。人的資本の情報開示が求められる中、従業員の健康や労働環境を示す「Social(社会)」の評価は、投資家や取引先からの企業価値そのものに直結します。

 

このように、休職率の高さは社内の問題にとどまらず、企業のブランドイメージや市場価値の毀損に直結する経営課題です。

 

休職者が多い職場の改善に向けた6つの取組み

 

コミュニケーションが活発な職場で働く女性

 

休職者が多い状況を変えるためには、問題が起きてからの場当たり的な対応ではなく、計画的かつ包括的なアプローチが不可欠です。

メンタルヘルス対策には、大きく分けて以下の3つの段階(予防)があります。

 

  • 一次予防(未然防止)
    職場環境の改善や教育を行いメンタルヘルス不調を未然に防ぐこと

 

  • 二次予防(早期発見・早期対応)
    不調に陥りつつある従業員を早期に発見し、適切な対応を行うこと

 

  • 三次予防(復職支援・再発防止)
    休職した従業員の円滑な職場復帰と復帰後の就労継続を支援すること

 

休職者が続出する企業では、どうしても目の前の三次予防(休職・復職対応)に追われがちです。

しかし、根本的に休職率を改善するためには、最も母数が大きく、問題が明確に可視化される前の段階でアプローチする一次予防への取り組みが非常に大切になります

 

ここからは、一次〜三次予防の観点を踏まえ、人事労務担当者が現場で取り組める具体的な改善策を解説します。

 

(1) 労働時間の適正化

長時間労働による疲労の蓄積や睡眠不足はメンタルヘルス不調の要因になります。そのため、メンタルヘルス対策の一次予防の基礎となるのが、長時間労働の是正です。

 

ここで注意したいのは、残業時間の上限を厳しく管理する(PCの強制シャットダウンやノー残業デーの設定など)といった表面的なアプローチだけでは不十分だという点です。業務量が変わらないまま時間だけを制限すると、結果的に隠れ残業や持ち帰り残業を誘発し、かえって従業員を精神的に追い詰めることになりかねません

 

実質的な負担軽減を図るためには、部門やチームごとに業務量の棚卸しを行うことが重要です。その上で、不要な業務の削減、業務プロセスの見直し、そして適切な人員配置の再構築といった根本的な解決策を実行する必要があります。

 

(2) 社内コミュニケーションの活性化

多忙な現場やリモートワーク環境下においても、不調の早期サインを見逃さないための仕組みづくりが重要です。

 

その有効な手段の一つが定期的な1on1ミーティングの導入です。その際、単なる業務の進捗報告ではなく、部下の心身の状態やキャリアの悩みに耳を傾ける傾聴の場として機能させることがポイントです。


日常的な対話を通じて心理的安全性を高め、風通しの良い職場風土を醸成することで、部下が不調を隠さず相談しやすい環境を作ります。

 

あわせて、人事労務部門とスムーズに連携が取れる体制づくりも不可欠です。現場の管理職が部下の異変に気付いた際、人事労務部門へ速やかに相談できるルートを整備しましょう。

「気になる社員がいる」と現場からアラートを上げやすい仕組みを作ることで、重症化に至る前にサポートすることができます。

 

(3) 業務標準化への取り組み

業務の属人化は、担当者に「自分が休むと業務が回らない」という強いプレッシャーを与え、メンタルヘルス不調を引き起こす要因になります。このような個人への過度な負担を解消するため、業務の標準化に向けて組織的に取り組むことは、メンタルヘルス不調を未然に防ぐ一次予防において重要なアプローチです。

まずは、ブラックボックス化している業務プロセスを可視化し、マニュアルの整備や情報共有のルール化を進めましょう。特定の個人に依存せず、チーム全体で業務をカバーし合える体制を構築することが、従業員の心理的な負担を軽減することにつながります。

 

(4) ストレスチェックの集団分析を活用

年に1回のストレスチェックは、従業員のストレス程度を客観的に把握できる貴重な機会です。単に個人の結果を通知して終わらせるのではなく、実施後に集団分析を行うことが重要です。

 

集団分析を活用すれば、部署やチームごとのストレス状況を客観的なデータとして可視化できます。その結果をもとに自社の課題を把握し、現場の管理職と連携しながら職場環境の改善策を検討・実施していくことが、メンタルヘルス不調の根本的な一次予防に繋がります。

 

また、より踏み込んだ組織課題を把握するためには、標準的な調査項目にとどまらず、プレゼンティーズム(出勤しているが、心身の不調によりパフォーマンスが低下している状態)」などの独自尺度を可視化できるストレスチェックの活用も有効です。

 

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(5) メンタルヘルスケア対策の充実化

企業として従業員の心身の健康を守るためには、対策を現場任せにせず、包括的なメンタルヘルスケア体制を構築することが不可欠です。具体的には、主に以下の3つのアプローチが有効です。

 

セルフケア研修の実施

メンタルヘルス不調による休職を防ぐためには、従業員が自身のストレスに気づき、適切に対処するセルフケアの習得が欠かせません。定期的なセルフケア研修を通じて、ストレス状態の把握方法や効果的な対処法(ストレスコーピング)への理解を深め、不調を感じたら早めに相談するというマインドセットを全従業員へ浸透させます。 

 

ラインケア研修の実施

プレイングマネージャー化が進む現場において、管理職が部下の不調にいち早く気づき、適切に対処すること(ラインケア)は容易ではありません。 そのため、定期的にラインケア研修を実施し、不調のサインの見抜き方や声かけの仕方、そして自分一人で抱え込まずに産業保健スタッフへ繋ぐという正しいフローを管理職に学んでもらうことが不可欠です。

 

相談窓口の設置

「上司や人事には評価を気にして相談しにくい」という従業員も少なくありません。そこで、社内外に産業医や保健師といった専門家に直接相談できる窓口を設置し、周知を徹底します不調を抱える本人が早めに専門家とつながり、休職に至る前に健康相談や就業上の配慮(残業制限や業務軽減など)に関する医学的な意見を得る体制を整備します。

 

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(6) 復職支援プログラムの導入

再休職を防ぐには、計画的な復職支援プログラムを構築し、メンタルヘルス不調の再発防止(三次予防)に取り組むことが欠かせません。

 

復職支援プログラムとは、休職開始から通常業務への復帰までの復職支援について、あらかじめ定められた企業のルールのことです。具体的には以下のプロセスを指します。

 

1.休職中のサポート

休職に入る際に、就業規則に関する丁寧な説明が必要です。休職中には、定期的な面談の実施に加えて、回復状況に合わせて復職支援に関する情報提供を行います。また、必要に応じて外部のリワーク施設の利用を促すことも、有効な支援策の一つです。

 

2.復職の判断・復職支援プランの検討

主治医が復帰可能だと判断すると、従業員は事業者に対して職場復帰支援申請を行います。事業主側では、産業医等の産業保健スタッフを中心に復帰の可否を判断します。

 

正式な復帰決定前に、試し出勤制度を導入するなど復帰支援のプランもあわせて検討しましょう。本人の回復度合いを見極めながら、徐々に負荷を上げていくことで、無理なく職場復帰を果たせる仕組みを作ることが重要です。

 

3.復帰後の継続的なフォローアップ

当初のプラン通りには復帰が進まないことも考えられます。復帰後にも本人や上長と定期的な面談を実施し、必要に応じて復職支援プランの見直しをしましょう。

 

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働きやすい職場のイメージ

 

休職者が多い職場には、組織の構造的な課題が潜んでいます。休職の発生を「従業員個人のストレス耐性の問題」として片付けてしまうと根本的な解決には至らず、周囲の疲弊や再休職の連鎖を招く原因となります。

 

これらを防ぐためには、問題が表面化してからの事後対応だけでなく、一次予防から三次予防まで組織全体で包括的なメンタルヘルス対策に取り組むことが不可欠です

 

しかし、休職者を減らすための環境づくりが必要だとわかっていても、「日々の実務に追われて手が回らない」「何から着手すべきかわからない」と悩む人事労務担当者は少なくありません。 


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この記事の著者
甘中 亜耶

甘中 亜耶

公認心理師・臨床心理士
大学院を卒業後、精神科クリニックや保健所でカウンセリング、心理検査を担当した経験を持つ。
現在は従業員数1万人規模の企業で、労務実務担当として働いており、主に安全衛生・休職者対応などに従事。

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