ストレスチェックが50人未満の企業も義務化へ|施行時期や実施方法を解説
サンポナビ編集部


令和7年5月、50人未満の企業にもストレスチェック制度を義務付ける改正労働安全衛生法が公布されました。
「ストレスチェックの実施方法が分からない」「産業医がいないのに面接指導はどう実施するのか」と悩む人事労務担当者の方も多いでしょう。
本記事では、50人未満の企業のストレスチェック義務化について、最新動向から具体的な対応まで解説します。
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監修:舘野 聡子(公認心理士・特定社会保険労務士・シニア産業カウンセラー・メンタルヘルス法務主任者)
目次
50人未満企業のストレスチェック義務化はいつから?

令和10年5月までに施行予定
50人未満の事業場におけるストレスチェックの実施について、第217回国会で「労働安全衛生法及び作業環境測定法の一部を改正する法律」が成立し、令和7年5月14日に公布されました。
改正労働安全衛生法の主な部分の施行期日は令和8年4月1日ですが、ストレスチェックの義務拡大に関しては、50人未満の事業場の負担等を配慮し、準備期間を確保するため、「公布後3年以内に政令で定める日」とされています。
つまり、最長でも令和10年5月までには、50人未満の事業場を含む全ての企業でのストレスチェック義務化が施行されます。
施行直前に慌てないよう、従業員数が50人未満の事業場を有する企業は、ストレスチェック実施体制の整備など、早めに準備をしておきましょう。
※「労働安全衛生法及び作業環境測定法の一部を改正する法律案の概要」(厚生労働省)を編集して作成
義務化の背景にある、小規模事業場のメンタルヘルス対策の遅れ
これまで、従業員50人未満の事業場におけるストレスチェックやメンタルヘルス対策は「努力義務」にとどまっていました。
しかし、近年はメンタルヘルス不調による休職・退職者が増加し、直近ではわずかな減少が見られるものの、依然として高止まり傾向が続いており、決して楽観視できる状況ではありません。

※「労働安全衛生調査(実態調査)」(厚生労働省)を編集して作成
精神障害の労災認定件数も年々右肩上がりとなっており、働く人の心の健康確保は喫緊の課題となっています。
【精神障害の請求、決定及び支給決定件数の推移】

こうした状況下で、厚生労働省の調査により「事業場規模が小さくなるほどメンタルヘルス対策の実施率が低い」という実態が浮き彫りになりました。

※「労働安全衛生調査(実態調査)」(厚生労働省)を編集して作成
「労働者の不調を未然に防ぐ重要性は事業場の規模に関わらない」という考えのもと、小規模事業場での取り組みの遅れを解消し、すべての労働者が適切なサポートを受けられる環境を整えることが、今回の義務化の大きな狙いです。
50人未満企業がストレスチェックを実施するメリット

50人未満の企業でストレスチェックを行うメリットは以下の3つです。
- メンタルヘルス不調による休職・離職を防ぐ
- 職場環境の改善ポイントが見つかる
- 企業イメージが向上する
メンタルヘルス不調による休職・離職を防ぐ
従業員数の少ない企業では、一人の従業員が休職すると業務への影響が特に大きくなります。
また、離職してしまうと代替要員の確保にも時間を要し、企業全体の活動にも影響するでしょう。
メンタルヘルス不調は初期段階の対応で重症化を防げるケースが多く、ストレスチェックが有効な早期発見の方法になります。従業員自身が自分のストレス状態を客観的に知ることで、自発的な予防を促せるでしょう。
その結果、メンタルヘルス不調による休職や離職の防止につながります。
職場環境の改善ポイントが見つかる
ストレスチェックの集団分析を行うことで、職場のストレス要因を特定できます。
集団分析とは、部署や職種などの単位でストレスチェック結果を分析することです。
例えば、以下のような具体的な改善ポイントを見つけられます。
- 特定の業務や部署に高ストレス者が集中していないか
- コミュニケーション不足がストレス要因になっていないか
ストレス要因が数値化されて表れるため、具体的な根拠をもとに職場環境の改善を実行しやすいでしょう。
企業イメージが向上する
ストレスチェックを積極的に実施することは、従業員の健康や働きやすさを重視する企業姿勢の表れといえます。
従業員満足度向上につながることに加え、採用活動においても求職者に好印象を与えます。
また、取引先や顧客に対しても、責任ある経営を行っている企業として、信頼獲得につながるでしょう。ストレスチェックは、単なる法令対応としてではなく、企業イメージの向上にも影響します。
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【50人未満企業向け】ストレスチェック実施 5つのステップ

50人未満の事業場がストレスチェック制度を導入・運用するにあたり、担当者が押さえるべきステップは大きく分けて5つです。厚生労働省が令和8年2月に公表した「小規模事業場ストレスチェック制度実施マニュアル」に沿って解説します。
- ストレスチェック制度の実施に向けた準備
- ストレスチェック制度の実施体制・実施方法の決定
- ストレスチェックの実施
- 医師の面接指導及び事後措置
- 集団分析・職場環境改善
1.ストレスチェック制度の実施に向けた準備
事業者による方針の表明
ストレスチェックの実施にあたり、事業者が自ら制度導入の目的や方針を表明しましょう。
方針表明では、メンタルヘルス不調の未然防止が目的であることや、個人のプライバシーが守られること、制度利用を理由とした不利益な取扱いが一切ないことを明確にします。
関係労働者の意見聴取
ストレスチェックの実施体制や方法を決定するにあたり、衛生推進者や安全衛生推進者を中心に、関係労働者の意見を聴取します。
50人未満の小規模事業場では、会議体にこだわらず、定例の業務ミーティングや朝礼での打合せなどを活用し、現場の多様な声を拾い上げることが推奨されています。
社内ルールの作成と周知
意見聴取の結果を踏まえ、下記の6つの基本事項を定めた社内ルールを作成します。
特に、個人情報の取扱いを明確にしておくことが重要です。
①実施体制
②実施方法
③記録の保存
④情報管理
⑤情報の開示・苦情処理
⑥不利益な取扱いの防止
作成したルールは、事業場内のイントラネットへの掲載や書面の配付などを通じて、全ての従業員に確実に周知しましょう。
2.ストレスチェック制度の実施体制・実施方法の決定
外部委託の推奨
50人未満の事業場において、労働者のプライバシー保護の観点から、ストレスチェックの実施を原則として外部機関に委託することが推奨されています
委託先を選ぶ際には、事前に外部機関から「サービス内容事前説明書」を作成・提出してもらい、内容を確認しましょう。
- 実施体制(実施者、実施事務従事者等)
- 実施方法(調査票、調査方法、高ストレス者・面接指導対象者の選定方法、スト
レスチェック結果の通知方法、面接指導対象者への通知方法等)
- 料金体系(料金体系、基本料金、オプション料金の明示等)
- 面接指導(面接指導の依頼先、面接指導担当医師、面接指導以外の相談対応等)
- 情報管理(結果通知等の情報の流れ、結果の保存等)
引用:小規模事業場ストレスチェック制度実施マニュアル (厚生労働省)
実務担当者の選任
外部委託する場合でも、事業場内での実施計画の策定や外部機関との連絡調整などを行う「実務担当者」を選任する必要があります。
実務担当者には、衛生推進者または安全衛生推進者を選任することが望ましいとされています。
なお、実務担当者は労働者の健康情報を取り扱わないため、人事権を持つ監督的地位にある者を指名することも可能です。
医師の面接指導の依頼先の選定
ストレスチェックの委託先を選定・契約する段階で、医師の面接指導の依頼先についてもあらかじめ決めておく必要があります。
委託先の外部機関が提供するオプションサービスを利用するほか、50人未満の事業場であれば、地域産業保健センターで無料で医師の面接指導を受けることが可能です。
50人未満の事業場には産業医の選任義務がありませんが、ストレスチェックの義務化を機に、定期的に訪問してもらう嘱託産業医を選任し、産業保健体制を強化するのも良いでしょう。
実施時期と対象者の決定
実施時期と対象者は、1年ごとに1回決定します。
集団分析を効果的に行うため、少なくとも集計・分析の単位となる集団については、同時期に実施することが望まれます。
受検対象者についてはこちらの記事をご覧ください。
調査票および高ストレス者の選定方法の決定
調査票は、「職業性ストレス簡易調査票(57項目)」を利用することが推奨されます。23項目の簡略版もありますが、詳細な集団分析ができないことに留意が必要です。
調査形態は、紙の用紙による回答かウェブ上での入力か、事業場のPC利用環境などに適した方法を選択しましょう。
高ストレス者の選定方法は、厚生労働省が示す基準に基づき、実施者(委託先)の提案を踏まえて決定します。
③ストレスチェックの実施
調査票の配布・回収・受検勧奨
調査票の配布および回収は、委託先の外部機関が行います。
対象者全員の受検が望ましいため、外部機関または事業者が未受検者へ受検勧奨を行うことができますが、業務命令のように強要してはならないよう注意してください。
受検は業務時間中に行うものとし、管理者は労働者が受検できるよう配慮することが求められます。
ストレスチェック結果の通知と保存
50人未満の企業では、プライバシー保護の観点から結果の通知や、保存管理に特に注意が必要です。
結果は、実施者(委託先)から直接、封書や電子メールなど他者に内容が分からない形で本人に通知します。ただし、本人が面接指導を申し出た場合、その事実や面接指導結果が事業者に伝わります。面接指導対象者に対してはあらかじめその旨を通知しておきましょう。
法令上、事業者は本人の同意なく個人結果の提供を受けられないため、結果の記録や保存についても委託先の外部機関に行わせることが望まれます。
④医師の面接指導及び事後措置
面接指導の申出ルートの整備
対象者が安心して面接指導を申し出ることができるよう、直接事業者へ申し出るルートか、外部機関を経由するルートをあらかじめ整えておく必要があります。
外部機関を経由する場合でも、申し出た事実が事業者に報告されることを事前に労働者へ伝えておきましょう。
医師からの意見聴取と就業上の措置
面接指導後、遅くとも1か月以内に医師から就業区分(通常勤務・就業制限・要休業)などの意見を聴取しなければなりません。
医師の意見を踏まえて就業上の措置を決定・実施する際は、あらかじめ対象労働者の意見を聴き、十分な話し合いを通じて本人の了解を得るよう努める必要があります。措置を理由とした不利益な取扱いにつながらないよう、十分に注意してください。
面接指導結果の記録・保存
事業者は、面接指導結果の記録を作成し、5年間保存する義務があります。
また、医師から事業者に提供される情報は「就業上の措置を実施するため必要最小限の情報」に限定されます。事業者は、医師に対して具体的な診断名、検査値、詳細な医学的情報などの提供を求めてはいけません。
⑤集団分析・職場環境改善
ストレスチェックの最大の目的は、メンタルヘルス不調を未然に防止することです。そのためには、個人のセルフケアとともに、結果を部署や職種ごとに集計・分析して職場環境の改善につなげることが重要になります。
職場環境改善を検討する際は、集団分析結果の他にも、管理監督者による日常の観察や、労働者から直接集めた意見なども総合的に組み計らうことで、より実態に即したストレス要因の軽減措置を講じることができます。
プライバシー保護と結果の保存
労働者のプライバシーを守るため、集計・分析の単位が10人未満の場合、事業者は原則として集団分析結果の提供を受けてはいけません。個人が特定されるリスクを避けるため、慎重な取り扱いが必要です。
また、職場のストレス状況が年々どのように変化しているかを長期的に把握・分析するため、事業者は集団分析の結果を5年間保存することが望まれています。
※小規模事業場ストレスチェック制度実施マニュアル (厚生労働省)を編集して作成
50人未満の企業へのストレスチェック導入のポイント

50人未満の企業へのストレスチェック導入のポイントとして、以下の3つが挙げられます。
- 段階的に取り組みをおこなう
- 情報の取扱いを丁寧に説明する
- 助成金を活用する
段階的に取り組みをおこなう
50人未満の企業では、産業医の選任義務がないため、産業医がいない場合が多いでしょう。
そのため、集団分析や職場環境改善を最初から行うことは難しいといえます。
無理なく継続できる体制のため、以下のように段階的に取り組みをおこないましょう。
- 1年目:基本的なストレスチェックの実施と高ストレス者への面接指導体制の整備
- 2年目:集団分析の導入
- 3年目以降:分析結果を活用した職場環境改善
情報の取扱いを丁寧に説明する
50人未満の企業では、従業員同士の距離が近く、互いのことをよく知っているため、プライバシーに対する懸念が高まります。
「上司や同僚に自分のストレス状態が知られるのではないか」と、回答をためらう従業員もいるでしょう。
ストレスチェック結果の取扱いについて、以下の点を丁寧に説明することが大切です。
- 実施前に説明会を開催し、情報の取扱い方針を明確に周知
- 個人結果は本人以外に通知されないことを強調
- 外部委託先の守秘義務体制について説明
プライバシーへの懸念が払拭できないまま実施すると、結果の妥当性に影響が生じます。
従業員が安心して受検できる環境づくりにより、ストレスチェックの効果を高められます。
助成金を活用する
事業主団体などが傘下の中小企業に産業保健サービスを提供した場合の費用を一部助成する、団体経由産業保健活動推進助成金があります。
令和7年度には対象となる産業保健サービスに、ストレスチェックの実施等が追加(50人未満の事業場に限る)されました。
団体経由産業保健活動推進助成金は例年5月中旬以降に受付が開始されます。
最新情報は厚生労働省や労働健康安全機構のWebサイトにて更新されますので、チェックしておきましょう。
ストレスチェックを外部委託するなら「Co-Labo」
50人未満の企業では、従業員数が少ないことからプライバシー保護の懸念がつきまといます。
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この記事の監修者
舘野 聡子
公認心理師・特定社会保険労務士・シニア産業カウンセラー・メンタルヘルス法務主任者
筑波大学大学院卒。大学卒業後、民間企業・社労士事務所等に勤務し、ハラスメント問題を中心としたコンサルティング業務に従事。その後、産業医事務所の事務長として産業保健領域での問題解決及び産業医・産業保健師のマネジメント等を行う。 2015 年に社会保険労務士として独立後、産業保健領域を専門に活動。 特に企業の職場復帰支援プログラムの構築を多数実施。休職者へのカウンセリング、企業担当者へ産業保健についてのコンサルテーションも多数実施【保有資格】 特定社会保険労務士 公認心理師 シニア産業カウンセラー メンタルヘルス法務主任者 他

