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【緊急事態の専門家が解説】企業が知っておきたい新型コロナウイルス感染症対応策のポイント

(更新:2021/07/02)

国内で感染者が出たこともあり、連日大きな話題になっている新型コロナウイルス感染症」

 

正しい予防の知識を職場で共有できていますか?

 

そして、人事はどのようなことに注意して取り組むべきでしょうか?

 

「新型コロナウイルス感染症」の正しい対策について、危機管理の専門家である本田茂樹先生に解説していただきました。

※本稿は、2020年2月13日現在の情報に基づいて執筆したものです。

 

解説:本田茂樹(ほんだ・しげき)

 

 

三井住友海上火災保険株式会社に入社後、リスクマネジメント会社の勤務を経て、現在はミネルヴァベリタス株式会社の顧問であり信州大学にて特任教授も務める。

 

リスクマネジメントおよび危機管理に関するコンサルティング、執筆活動を続ける一方で、全国での講演活動も行っている。

これまで、早稲田大学、東京医科歯科大学大学院などで教鞭を執るとともに、日本経済団体連合会・社会基盤強化委員会企画部会委員を務めてきた。

 

 

新型コロナウイルス感染症を正しく理解し、正しく恐れる~「知識のワクチン」を共有する

 

新型コロナウイルスの“感染経路”を知って対策する

新型コロナウイルスによる肺炎(COVID-19)(以下「新型コロナウイルス感染症」)の流行が、中国湖北省武漢を中心に拡大しています。

 

流行が急速に拡大する様子をみると不安にもなりますが、企業は、感染症をいたずらに恐れるのではなく、新型コロナウイルス感染症を理解した上で準備を進めることが重要です。

 

特に、人事部門では、感染経路や感染予防に関する正しい知識を衛生委員会で共有し「知識のワクチン」として社内研修などを通して従業員に啓発していくことが求められます。

 

現時点では、飛沫感染(ひまつかんせん)と接触感染(せっしょくかんせん)の2つが考えられます。

 

①飛沫感染

感染者の飛沫(咳やくしゃみ、つばなど)と一緒にウイルスが放出され、他の人がそのウイルスを口や鼻から吸い込んで感染するものです。

 

特に、通勤の満員電車やイベントなど多くの人が集まる場所で起こります。

 

②接触感染

感染者が咳やくしゃみを手で押さえた後、その手で周囲の物に触れるとウイルスがつきます。他の人がその物を触るとウイルスが手に付着し、その手で口や鼻を触って粘膜から感染するものです。

 

ドアノブやスイッチ、電車やバスのつり革などに触れた手で、口や鼻を触ることで起こります。

 

「知識のワクチン」で新型コロナウイルスの感染を予防する

現時点では、新型コロナウイルス感染症への感染を防ぐワクチンや、特に有効なウイルス薬はありません。

 

このため、次に示す感染予防策を自社の従業員と共有しておくことが「知識のワクチン」となり“今できること”の中ではとても重要です。

 

  • 石鹸による手洗いとアルコール消毒薬による消毒を励行する
  • 自分に咳やくしゃみなどの症状がある人は、咳エチケットやマスクの着用(※)を心掛ける
  • 外出する際は、ラッシュなどの時間帯を避けるなど人混みに近づかない
  • 手で顔を触らない(接触感染を防ぐため)
  • 発熱や全身倦怠感などの症状があれば出社しない など

 

※不織布マスクの予防効果は?

不織布性のマスクの着用によって、他の人からの飛沫感染を完全に防ぐことは難しいとされていますが、鼻腔・口腔内の乾燥を防ぐ保湿効果とともに、自分の口・鼻に自らの手を触れさせない効果があると考えられています。

 

行動変容が重要~社内での感染拡大を防ぐ~

感染予防対策を知っていても、従業員が実践していなければ効果はありません。

 

例えば、発熱や咳・くしゃみなどの症状があるにもかかわらず、出社する従業員がいれば、そこから企業内に感染が広がります。

 

従業員一人ひとりが感染予防策を的確に実践できるよう、人事部門などが中心となって行動変容を促すことが必須です。

 

安全配慮義務を踏まえた従業員の健康管理体制の構築

 

 

労働安全衛生法第3条において、企業は単に「労働災害防止のための最低基準を守るだけではなく、快適な職場環境の実現と労働条件の改善を通じて職場における労働者の安全と健康を確保するようにいなければならない」と、安全配慮義務が定められています。

 

つまり、企業としては新型コロナウイルス感染症の流行状況を踏まえつつ、人事・労務担当部門と衛生委員会の協力のもと、感染予防から発生時の対応までを的確に進めることができる健康管理体制を構築しておくことが重要です。

 

また、健康管理体制の運営にあたっては、以下の項目にも留意します。

 

  • 新型コロナウイルス感染症は、2020年2月1日付けで指定感染症として定められているので、それに準ずる対応を理解しておく
  • 糖尿病や高血圧などの基礎疾患を有する従業員は、重症化するリスクが高いことを周知する
  • 産業医や衛生管理者を中心に活動を進め、最新の情報を入手する体制を整える
  • 社員に感染疑いが出た場合の対応は、現状、「14日以内に湖北省または浙江省への渡航歴のある人、またその人に接触された人」とそうでない人によって異なるので注意する(今後も変更があり得るので常に最新の情報を確認する) など

 

新型コロナウイルス感染症の、新たなパンデミック(世界的大流行)に備えておく

 

 

”新型インフルエンザ対策”の概念を活用した取組みが有効的

実は、われわれは近年、新たなウイルスによる感染症の世界的大流行(パンデミック)を経験しています。それは、2009年4月に発生した新型インフルエンザ(A/H1N1)です。

 

この流行における我が国の致死率は諸外国に比べて低い水準にとどまりましたが、一時的に医療資源や物資が不足するなどの混乱が見られ、またさまざまな課題も明らかになりました。

 

このような背景もあり、日本では病原性の高い新型インフルエンザ等感染症や同様の危険性がある新感染症が発生した場合に備えて、2012年5月11日「新型インフルエンザ等対策特別措置法」(以下「特措法」)を制定しています。

 

また、特措法を踏まえて、国、地方公共団体、そして事業者等が連携して総合的な対策を推進するための「新型インフルエンザ等対策政府行動計画」や、各分野における具体的な内容・実施方法を明記した「新型インフルエンザ等対策ガイドライン」が改定されています。(図1)

 

この特措法やガイドラインの概念は、新型コロナウイルス感染症の対策にも当てはめることができますので、人事部門の方は内容を押さえておきましょう。

 

企業の”事業継続”が求められている

ガイドラインでは、企業に対して、社会・経済機能を維持するために、感染防止対策を講じつつ、自社の事業継続を求めています。

 

企業の事業活動が制約されることもある

特措法のもとでは、新型インフルエンザ等が国内で発生し、国民生活・国民経済に甚大な影響を及ぼすおそれがあると認められた場合に、新型インフルエンザ等緊急事態宣言(以下、「緊急事態宣言」)が出されます。

 

この緊急事態宣言では、感染の拡大やまん延を防止するため、外出自粛要請や、興行場使用・催物開催の制限、そして学校・社会福祉施設(通所または短期間入所利用のものに限る)の使用制限・停止を要請できることとしています。

 

最悪のシナリオも想定する

新型インフルエンザ等が発生した場合、「ガイドライン」では、流行のピーク時(約2週間)には、従業員の最大40%程度が欠勤すると想定しています。

 

これは、従業員の発症(5%程度を想定)に加え、家族の世話や介護のため出勤しない、あるいは感染の不安などから出勤しない人がいることを見込んでいるからです。

 

このように流行が拡大・まん延した場合の最悪のシナリオも想定し、自社のBCP(事業継続計画)などを見直し、その上で、実際の流行においては状況に応じて柔軟に、そして適切に運用することが大切です。

参考資料:厚生労働省「新型コロナウイルスに関するQ&A(企業の方向け)および(一般の方向け)」

 

〈解説者のプロフィール〉

 

本田茂樹(ほんだ・しげき)

 

三井住友海上火災保険株式会社に入社後、リスクマネジメント会社の勤務を経て、現在はミネルヴァベリタス株式会社の顧問であり信州大学にて特任教授も務める。リスクマネジメントおよび危機管理に関するコンサルティング、執筆活動を続ける一方で、全国での講演活動も行っている。

 

これまで、早稲田大学、東京医科歯科大学大学院などで教鞭を執るとともに、日本経済団体連合会・社会基盤強化委員会企画部会委員を務めてきた。

 

近著に「中小企業の防災マニュアル」(労働調査会)「健康長寿のまちづくり-超高齢社会への挑戦」(時評社)などがある。

 

【関連リンク】

近著中小医療機関のための BCP策定マニュアル」(株式会社社会保険研究所)

 

【セミナー情報】

2020年10月29日:今、医療機関に求められるBCP(事業継続計画)(防犯防災総合展2020)

 

2020年10月30日:SDGsにおける防災と事業継続〜2030年に向けた取り組み〜(防犯防災総合展2020)

 

2020年11月12日:新型コロナウイルス感染症流行下の防災とBCP ~想定外を作らない

 

2020年11月13日:地震、台風、感染症に備える、最新『BCP(事業継続計画)』の策定と見直し

 

▼本田茂樹先生の連載記事▼

衛生委員会で共有しておきたい「従業員の命を守る仕組みづくり」のポイント

会社の場所は大丈夫?ハザードマップで地震・台風・洪水の被害を予測する

 

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この記事の著者

本田茂樹

本田茂樹

本田茂樹(ほんだ・しげき) 三井住友海上火災保険株式会社に入社後、リスクマネジメント会社の勤務を経て、現在はミネルヴァベリタス株式会社の顧問であり信州大学にて特任教授も務める。 リスクマネジメントおよび危機管理に関するコンサルティング、執筆活動を続ける一方で、全国での講演活動も行っている。

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