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働き方改革関連法で労働時間や産業保健はどう変わる?

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働き方改革関連法で労働時間や産業保健はどう変わる?

(更新:

働き方改革関連法が2018年6月に成立、2019年4月から施行されます。労働時間に関する制度の見直しや産業医の権限・産業保健機能の強化などが盛り込まれましたが、いつ、何が、どのように変わるのでしょうか。「長時間労働の是正」を中心に、概要を解説します。

 

<解説する変更点>

 

残業時間の上限を規制(2019年4月1日、中小企業は2020年4月1日)

月60時間を超える残業は、割増賃金率を引き上げ(2023年4月1日)

5日間の年次有給休暇の取得を企業に義務付け(2019年4月1日)

高度プロフェッショナル制度の創設(2019年4月1日)

勤務間インターバル制度の普及促進(2019年4月1日)

産業医・産業保健機能の強化(2019年4月1日)

 

働き方改革関連法とは?

 

働き方改革関連法は「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律」を指します。多様な働き方を自分で選択できる社会を実現する”働き方改革”を推進するための法律です。

 

中でも「長時間労働の是正」は、柱の一つとなっています。

 

長時間労働の是正、多様で柔軟な働き方

 

働きすぎの防止と、ワークライフバランス・多様で柔軟な働き方の実現を目指して、労働時間の上限規制、割増賃金率の引き上げなどが行われます。

 

労働時間に関する制度の見直し(労働基準法、労働安全衛生法)

◇残業時間の上限を規制(2019年4月1日、中小企業は2020年4月1日)

 

そもそも従業員に法定労働時間(1日8時間、週40時間)を超えて残業(時間外労働)をさせる場合には、36協定が必要です。36協定では、「残業を行う業務の種類」や「1日、1カ月、1年あたりの時間外労働の上限」などを決める必要がありますが、これまで残業時間には法律上の上限はなく、行政指導があるのみでした。今回、労働基準法が改正され、初めて法律で残業時間の上限を定めました。この上限を超える残業はできなくなります。

 

違反した場合は罰則があり、6カ月以下の懲役か30万円以下の罰金が科されます。

 

 

残業時間の上限は、原則月45時間・年360時間。
臨時的な特別の事情がなければ、これを超えることはできません。(月45時間は、1日あたり2時間程度)

 

臨時的な特別の事情があり、労使が合意する場合でも
*年720時間以内
*複数月平均80時間以内(休日労働を含む)
*月100時間未満(休日労働を含む)
を超えることはできません。
(月80時間は、1日あたり4時間程度)

 

原則である月45時間を超えられるのは、年間6カ月までです。

 

◇月60時間を超える残業は、割増賃金率を引き上げ(2023年4月1日)

 

現在、月60時間を超える残業割増賃金率は、大企業は50%、中小企業は25%ですが、中小企業も割増賃金率を50%に引き上げます。

 

◇5日間の年次有給休暇の取得を企業に義務付け(2019年4月1日)

 

企業は、10日以上の年次有給休暇が付与される従業員に対して、毎年時季を指定して5日間の有給休暇を与えなければなりません。

 

◇高度プロフェッショナル制度の創設(2019年4月1日)

 

職務の範囲が明確で、高年収(1,075万円以上を想定)の労働者が、高度の専門的知識を必要とする業務をする場合、労働時間、休日、深夜の割増賃金の規定を適用除外とします。

 

ただし、年間104日以上、かつ4週4日以上の休日を確実に取得させるなどの健康確保措置をすることや労使委員会の決議、本人の同意などを要件としています。また、制度の対象者について、在社時間が一定時間を超える場合、企業はその人に、必ず医師による面接指導を受けさせなければなりません。

 

勤務間インターバル制度の普及促進(労働時間等設定改善法)(2019年4月1日)

 

勤務間インターバル制度とは、勤務終了後、翌日の出社までの間に一定時間以上の休息時間を確保する仕組みです。

 

働く人たちの十分な生活時間や睡眠時間を確保するため、この制度の導入が企業の努力義務となりました。企業は、前日の終業時刻と翌日の始業時刻の間で、一定時間の休息確保に努めなければならなりません。また、企業の責務として、短納期発注や発注内容の頻繁な変更を行わない配慮についても努力することとされています。

 

 

産業医・産業保健機能の強化(労働安全衛生法など)(2019年4月1日)

産業医・産業保健機能も強化しました。

 

①産業医の活動環境の整備

 

現在、産業医は労働者の健康を確保するために必要があると認めるときは、企業に対して勧告することができます。企業は、産業医から勧告を受けた場合、その勧告を尊重する義務があります。

 

改正後は、企業から産業医への情報提供を充実・強化。企業は、長時間労働者の状況や、従業員の業務の状況など、産業医が従業員の健康管理を適切に行うために必要な情報を提供しなければなりません。また、企業は、産業医から受けた勧告の内容を、労使や産業医で構成する衛生委員会に報告します。衛生委員会での健康確保対策の検討に役立てるためです。

 

 

【産業医

 

労働者の健康管理などについて、専門的な立場から指導や助言を行う医師。労働安全衛生法では、従業員50人以上の事業場での産業医選任が義務となっています。また、従業員50人未満の小規模事業場でも、従業員の健康管理を医師などに行わせるように努める必要があります。

 

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【衛生委員会

 

労働者の健康管理などについて、労使が協力して効果的な対策を進めるために、事業場に設置する協議の場。従業員50人以上の事業場では、委員会の設置が義務です。

 

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②労働者に対する健康相談の体制整備、労働者の健康情報の適正な取り扱いルールの推進

 

産業医などによる、労働者の健康相談が強化されました。企業は、産業医が従業員からの健康相談に応じるための体制整備に努めなければいけません。

 

また、企業による従業員の健康情報の収集や保管、適切な管理について、指針を定め、従業員が安心して職場で健康相談や健康診断を受けられるようにします。

 

働き方改革関連法の「長時間労働の是正」の柱を中心に解説しました。

 

制度によってそれぞれ施行期日が異なるので、しっかり確認し、早めに準備をすることが大切です。

 

文・編集/サンポナビ編集部

 

参考)

厚生労働省リーフレット「働き方改革 ~ 一億総活躍社会の実現に向けて ~

 

厚生労働省「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律(平成30年法律第71号)の概要」

 

厚生労働省「36協定で定める時間外労働及び休日労働 について留意すべき事項に関する指針」

 

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