【2026】勤務間インターバル制度とは|いつから義務化される?
サンポナビ編集部


勤務間インターバル制度は長時間労働の是正や健康確保の観点から注目され、2019年以降は企業の「努力義務」として導入が推奨されています。
2026年現在、法制強化に向けた議論が進んでおり、人事労務担当者は最新動向の把握と準備が重要です。本記事では制度の基本から、導入手順や助成金、罰則やリスクを整理します。
監修:舘野 聡子(公認心理士・特定社会保険労務士・シニア産業カウンセラー・メンタルヘルス法務主任者)
目次
勤務間インターバル制度とは?
勤務間インターバル制度とは、働く人が十分な生活時間や睡眠時間を確保できるよう、「終業時刻」から翌日の「始業時刻」までの間に、一定時間以上の休息(インターバル)を設ける仕組みのことです。
制度の目的
この制度が注目されている背景には、長時間労働や不規則なシフト勤務による過労が深刻な社会問題となっている現状があります。制度の主な目的は以下の通りです。
健康の保持と増進:休息が短い勤務が常態化すると、心身の疲労回復が追いつかず、メンタルヘルス不調や脳・心臓疾患などの健康障害を引き起こすリスクが高まります。
安全の確保:睡眠不足による集中力の低下は、ヒューマンエラーや重大な事故を招く恐れがあります。十分なインターバルは、職場と社会の安全を守ることに直結します。
ワーク・ライフ・バランスの実現:仕事以外の私生活(睡眠、育児、介護、自己研鑽など)の時間を保障し、持続可能な働き方を推進します。
労働時間等設定改善法の改正により、2019年4月から企業にはこの制度の導入が努力義務として課されています。

出典:勤務間インターバル制度をご活用ください|厚生労働省 東京労働局
勤務間インターバルは最低何時間あける?
厚生労働省の推奨は9時間〜11時間
「一定時間以上のインターバル」とあるように、インターバルの最低時間は法律で明記されていません。ただし、現在のガイドラインおよび助成金の要件に基づくと、「9時間以上」が最低ライン、「11時間以上」が望ましい水準とされています。
9時間以上: 厚生労働省の助成金(働き方改革推進支援助成金)の支給対象となる下限設定です。日本の多くの企業において、シフト調整や業務運用の現実的な妥協点として採用されています。
11時間以上: EU諸国で採用されている国際標準(EU労働時間指令)であり、十分な睡眠と生活時間を確保するための理想的な基準です。
働き方・職種別に定められている最低インターバル時間
2024年4月から本格施行された「働き方改革関連法」の影響を受け、特定の職種や働き方については、法律や改善基準告示によって具体的なインターバル時間が義務付けられています。2026年4月現在の基準は以下の通りです。
<トラック運転手>
・1日の休息時間は継続11時間以上与えるよう努めることを基本とし、9時間を下回らない
例外:宿泊を伴う長距離貨物運送の場合、継続8時間以上(週2回まで)、休息期間のいずれかが 9 時間を下回る場合は、運行終了後に継続 12 時間以上の休息を確保
※トラックドライバーの新しい労働時間規制が始まります!(厚生労働省)を編集して作成
<バス運転手>
・1日の休息時間は継続11時間以上与えるよう努めることを基本とし、9時間を下回らない
※バス運転者の改善基準告示 (自動車運転者の長時間労働改善に向けたポータルサイト(厚生労働省))を編集して作成
<タクシー運転手>
・日勤:1日の休息時間は継続11時間与えるよう努めることを基本とし、9時間を下回らない
・隔勤:2暦日の休息時間は継続24時間与えるよう努めることを基本とし、22時間を下回らない
※ハイヤー・タクシー運転者の改善基準告示(自動車運転者の長時間労働改善に向けたポータルサイト(厚生労働省))
<医師(B・C水準指定の医療機関)>
・通常日勤および宿日直許可のある宿日直に従事: 始業から24時間以内に継続9時間の休息を確保
・宿日直許可のない宿日直に従事: 始業から46時間以内に継続18時間の休息を確保
なお、A水準指定の医療機関は努力義務です。
※医師の勤務間インターバルの仕組みについて(厚生労働省)を編集して作成
<高度プロフェッショナル制度>
・継続11時間以上の休息を確保+深夜業の回数制限(1か月に4回以内)
※高度プロフェッショナル制度 わかりやすい解説(厚生労働省)を編集して作成
勤務間インターバル制度の義務化はいつから?
現在は努力義務ですが、2026年から2027年にかけて労働時間制度の見直し議論が進む見通しです。
当初は2027年4月施行が予測されていましたが、2025年12月に改正法案の国会提出見送りが報じられたため、現時点で義務化の具体的な時期は確定していません。
しかし、過重労働防止や健康確保の観点から、今後も義務化を視野に入れつつ、法規制の強化について検討されていくことが予想されるため、企業は「時期」を待つのではなく、休息時間の基準設定や運用体制の構築を先行して進めることが重要です。
政府が掲げる導入目標
義務化の時期こそ確定していませんが、政府は令和10年(2028年)までに、労働者数30人以上の企業のうち、以下の数値目標を掲げています。
①勤務間インターバル制度を知らなかった企業割合を5%未満
②勤務間インターバル制度を導入している企業割合を15%以上 とする
※過労死等の防止のための対策に関する大綱 (厚生労働省)を編集して作成
勤務間インターバル導入のメリット
勤務間インターバル制度は、従業員の健康を守るだけでなく、人手不足時代の企業経営を支える戦略的な施策です。導入によって得られる主なメリットは以下の3つです。
1. 従業員の健康と企業の安全配慮義務の両立
十分な休息は、疲労回復だけでなくストレス耐性や感情のコントロールに直結し、企業としての法的責任を果たす土台となります。
重大な健康リスクの回避:睡眠時間を物理的に確保することで、メンタルヘルス不調や過労に伴う脳・心臓疾患などのリスクを未然に防ぎます。
安全配慮義務の履行:休息ルールを明確に運用することは、企業が「従業員の健康に配慮している」という客観的な証跡になります。万一の労務トラブルの際も、適切な管理体制があることは、企業を法的に守る強固な盾となります。
2. 従業員の定着・確保
採用市場において「無理なく働ける仕組み」の有無は、強力なアピールポイントになります。
離職率の低下:生活リズムの崩れ(遅番の翌朝に早番など)による体力的な限界を防ぎ、中長期的な定着を促します。
他社との差別化:特に交代制勤務やシフト制の職場ほど、休息のルール化は競合他社に対する大きな優位性となります。
3. エンゲージメント・生産性向上
休息を権利として保障する姿勢が、従業員の意欲を高め、組織全体のパフォーマンスを最大化させます。
集中力の維持による生産性の向上:睡眠不足による集中力低下は、判断ミスや品質不良、重大な事故を招く要因です。
インターバル確保により翌日のパフォーマンスが安定することで、業務の手戻りやトラブル対応のコストが削減され、結果として効率的な業務遂行が可能になります。
組織風土の変革:「私生活を犠牲にしない働き方」を会社がルール化することで、会社への信頼感(エンゲージメント)が高まります。
制度導入を機に業務の平準化や無駄の削減が進むことで、より持続可能で活気のある職場環境が実現します。
※勤務間インターバル制度 導入・運用マニュアル -職場の健康確保と生産性向上をめざして-(厚生労働省)を編集して作成
勤務間インターバル制度の導入ステップ
制度を形骸化させず、現場に定着させるためには以下の4ステップで進めると、制度の目的と現場の現実を両立しやすくなります。
①【現状把握】勤務実態と理想のギャップを可視化する
まずは具体的な検討を始める前に、自社のデータに基づき、「休息時間のリアル」を数字で把握することから始めます。
可視化した実態をもとに制度の経営意義を確認し、導入目的を設定します。
経営層が「健康と生産性を守る」姿勢を宣言することで、全社的な推進力を生み出します。
データ抽出: 勤怠記録から、終業と翌日の始業の間隔が「9時間未満」など、設定目標を下回るケースがどの部署・時期に集中しているかを特定します。
ヒアリング: 数字に表れない「持ち帰り業務」や「深夜のチャット対応」など、実質的な休息を阻害している要因を現場から吸い上げます。
優先順位の決定: 全社一斉の導入開始が難しい場合は、課題の大きい部署から段階的に導入する現実解を検討します。
②【制度設計】「守れない時」のルールもセットで作る
制度の適用対象やインターバル時間数について検討し、具体的に制度を設計します。
インターバル時間だけを決めて「守ってください」と指示するだけでは、記録の改ざんや制度の形骸化を招きます。
「確保できなかった場合にどうリカバーするか」をあらかじめルール化することが重要です。
運用ルールの策定: インターバルが不足する場合、「翌朝の始業繰り下げ」や「シフトの組み替え」が推奨されます。
これらが難しい場合には、「時間単位の有給休暇」や「特別休暇」として、早帰りや遅出に充当できるようにします。
例外の定義:「災害・大規模障害への対応」「納期直前のやむを得ないトラブル」など、緊急性が高いものに限定します。
例外が発生した際は、上司への報告を必須とし、人員配置や業務分担の見直しにつなげる仕組みを作ります。
③【周知・運用】仕組み化と環境整備
制度内容を管理職や従業員へ周知し、顧客や取引先へも導入を説明した上で、インターバル時間を確保しやすい環境づくりを進めます。ルールを現場の「共通言語」にし、システムで支えるフェーズです。
規定化と説明会: 就業規則へ反映し、全社員に制度の目的を丁寧に説明します。「残業禁止」の強制ではなく、健康と生産性のための投資であることを共有し、隠れ残業を防ぎます。
インフラ整備: 勤怠システムでのアラート機能や、シフト作成時の自動チェックを導入し、仕組みとしてインターバル不足を未然に防ぎます。
外部要因の調整: 夜間の連絡や納期設定など、取引先を巻き込んだ調整が必要な場合は、会社として対外的なアナウンスを行い、周囲の理解を求めます。
④【評価・見直し】業務の仕組みをアップデートする
効果検証や課題等の洗い出しを行い、実態に即した制度内容・運用方法の見直しを行います。運用開始後は、発生した例外を「個人の責任」にせず、「組織の課題」として捉えて改善を繰り返します。
原因の分析と対策:インターバル未達が発生した原因(欠員、属人化、工程の遅延など)を分類し、当番制の見直しや業務の標準化など、根本的な仕組みの改善につなげます。
定点観測:未確保件数や残業時間の推移、さらには従業員の健康指標を継続的にモニタリングし、制度が現場のパフォーマンスにどう寄与しているかを多角的に評価します。
柔軟なブラッシュアップ:洗い出された課題に基づき、休息時間の基準や例外ルールの適用範囲を再検討するなど、より実効性の高い運用へとアップデートし続けます。
「ワーク・ライフ・バランスを向上させる 勤務間インターバル制度導入事例集」では、各企業の導入経緯や制度内容、その効果について紹介されているので、こちらも参考にしてみてください。
※勤務間インターバル制度 導入・運用マニュアル -職場の健康確保と生産性向上をめざして-(厚生労働省)を編集して作成
罰則はある?実務上のリスクとは
「勤務間インターバル制度」の導入は一般企業においては努力義務であり、未導入であるからといって直ちに刑事罰が科されることはありません。
しかし、B・C水準指定医療機関の医師や自動車運転職のように、改善基準告示や法律で休息時間が義務化されている職種において違反が認められた際は、労働基準法違反として是正勧告(行政指導)の対象となります。
その後の改善が見られない場合には、企業名の公表や罰則の適用に繋がるリスクがあります。
一般企業における「実務上のリスク」
刑事罰の有無にかかわらず、勤務間インターバルを軽視することには以下の経営リスクが伴います。
安全配慮義務違反のリスク
休息不足による健康障害や事故が発生した場合、「適切な休息を確保させていなかった」ことが企業の過失とみなされ、多額の損害賠償を請求される要因になります。
人材の流出と採用難
「働きやすさ」が重視される現在、休息ルールが整備されていないことは、離職率の上昇や採用競合における不利を招く直接的なマイナス要因となります。
活用できる助成金「働き方改革推進支援助成金」
制度導入に伴う就業規則の改定や、勤怠管理システムの改修、周知研修などにかかる初期コストを軽減するために、中小企業向けの「働き方改革推進支援助成金(勤務間インターバル導入コース)」を活用できます。
助成の対象となる費用例
- 外部専門家(社労士等)へのコンサルティング費用
- 新しい勤怠管理ソフトや労務管理システムの購入・改修費
- 就業規則の作成・変更費用
- 従業員向けの説明会や研修の実施費用
導入時に注意すべきポイント
助成金を確実に受給するためには、手続きの「順番」が非常に重要です。
「交付決定」後の契約・発注:申請や交付決定が出る前にシステムを契約・購入してしまうと、助成対象外となります。必ず「事業計画の提出」→「交付決定」という流れを経てから、実際の発注へ進んでください。
最新情報の確認:助成金の要件や対象範囲は、年度ごとに更新されるケースが一般的です。検討の際は必ず厚生労働省のホームページなどで、最新の公募要領を確認してください。
※令和8年度「働き方改革推進支援助成金」 勤務間インターバル導入コースのご案内(厚生労働省)を編集して作成
勤務間インターバル制度のよくある質問
Q. 通勤時間は「休息時間(インターバル)」に含まれますか?
A.はい、含まれます。 勤務間インターバルとは「終業時刻から翌日の始業時刻までの時間」を指します。通勤時間は通常、労働時間には該当しないため、この休息時間の一部としてカウントされます。
Q. 夜勤明けの後に日勤が入るような「交代制勤務」での計算はどうなりますか?
A.勤務終了から次の勤務開始まで、一律に規定の時間を確保する必要があります。 シフト作成時に「終業から○時間以上空いていない場合は登録不可」とするシステムバリデーションを設けるのが最も効果的です。属人的な管理ではなく、仕組みとして「休息が確保されないシフト」を物理的に作成できないようにすることが運用の定着につながります。
Q.業務量を調整しても、特定の従業員がインターバルを守らず長時間残業を続けてしまう場合はどうすればいいですか?
A.個人の意識改革だけでなく、産業医等による医学的見地からのアプローチが効果的です。
本人が「自分が頑張ればいい」と責任感で動いている場合、制度の強制だけでは根本解決になりません。長時間労働が脳・心臓疾患やメンタルヘルスに与えるリスクを正しく理解してもらうため、産業医による面談を実施することを推奨します。
勤務間インターバル制度の定着には、産業医による医学的なバックアップだけでなく、組織全体の意識改革が欠かせません。
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この記事の監修者
舘野 聡子
公認心理士・特定社会保険労務士・シニア産業カウンセラー・メンタルヘルス法務主任者
筑波大学大学院卒。大学卒業後、民間企業・社労士事務所等に勤務し、ハラスメント問題を中心としたコンサルティング業務に従事。その後、産業医事務所の事務長として産業保健領域での問題解決及び産業医・産業保健師のマネジメント等を行う。 2015 年に社会保険労務士として独立後、産業保健領域を専門に活動。 特に企業の職場復帰支援プログラムの構築を多数実施。休職者へのカウンセリング、企業担当者へ産業保健についてのコンサルテーションも多数実施【保有資格】 特定社会保険労務士 公認心理師 シニア産業カウンセラー メンタルヘルス法務主任者 他

