「ストレスチェックは意味ない」といわれる理由│活用方法と企業事例を解説
片桐はじめ


ストレスチェックを実施しても従業員からの反応が薄い、あるいは高ストレス者からの面談希望が来ないことで困る人事労務担当者の方も多いでしょう。義務だからと形式的に進めるだけでは、せっかくのコストや労力が無駄になってしまう可能性があります。
本記事では、ストレスチェックが「意味ない」といわれる3つの理由と、「意味ある施策」に変えるための方法を解説します。他社のストレスチェック活用事例も紹介していますので、自社に合った運用方法を見つけるヒントとして、ぜひ参考にしてみてください。
目次
ストレスチェックが「意味ない」といわれる3つの理由

従業員や経営層からストレスチェックが「意味ない」といわれてしまう背景には、主に以下の3つの理由があります。
- 本音での回答が得られていない
- 回答結果を職場環境改善に活用できていない
- 高ストレス者が面談を申し出ない
本音での回答が得られていない
回答内容によって人事評価が下がることを心配し、本音で回答されないケースがあります。従業員が不利益な取り扱いを恐れている状態では、回答内容の信頼性が損なわれ、組織の現状を正しく把握できません。
例えば、長時間労働が常態化して「眠れない」「仕事がつらい」などの不調や心配ごとがあった場合、本来なら高いストレス反応が出るはずです。しかし、従業員が「問題ない」と回答すると、企業側は「過酷な環境でも耐えられている」と誤解してしまいます。
結果として、適切な人員配置や業務改善が行われず、休職者や退職者が生じる事態になりかねません。本音の回答が得られないことは、企業の自律的な改善を妨げるリスクとなります。
回答結果を職場環境改善に活用できていない
ストレスチェックを実施しても、従業員個人の結果通知だけで終わってしまっては不十分です。回答しても職場環境の改善につながらなければ、従業員は「何も変わらない」と感じてしまい、形骸化していくおそれがあります。
高ストレス者が面談を申し出ない
高ストレス者と判定されても、医師による面接指導を申し出る従業員が少ないことも課題です。「産業医面談を受けると周囲に知られる」「不調者というレッテルを貼られる」といった心理的なハードルが主な要因です。
また、業務多忙で面談の時間が取れないというケースもあります。
ストレスチェックを行う本来の目的

ストレスチェックを有効活用するためには、本来の目的を再確認し、社内での認識を統一する必要があります。ストレスチェックの目的は以下の3つです。
- メンタルヘルス不調の未然防止
- 職場環境改善による生産性向上
- 企業のリスクマネジメント
メンタルヘルス不調の未然防止
ストレスチェックの目的は、メンタルヘルス不調の一次予防です。一次予防とは、従業員が自身のストレス状態を理解して、セルフケアを行うことで不調を未然に防ぐことを指します。
不調者を見つける「二次予防」だけを目的にすると、ストレスチェックに「犯人さがし」のような印象を持たれ、本音で回答されにくくなります。
まずは、ストレスチェックの目的がメンタルヘルス不調の予防であることを周知しましょう。
職場環境改善による生産性向上
ストレスチェックは、個人の健康管理だけでなく、組織の課題を可視化するツールでもあります。集団分析を通じてストレス要因を特定し、職場環境を改善することで、従業員の生産性向上につなげることが可能です。
働きやすい環境が整えば、離職率の低下やエンゲージメントの向上といった組織的なメリットも期待できます。実施して終わりではなく、その後の環境改善を含めたプロセス全体がストレスチェックの本来の姿といえるでしょう。
企業のリスクマネジメント
企業には、従業員が安全かつ健康に働けるよう配慮する安全配慮義務があります(労働契約法第5条)。ストレスチェックを適切に実施し、高ストレス者への対応や職場環境の改善を行うことは、安全配慮義務を果たすことにつながります。
また、メンタルヘルス不調による労災や損害賠償請求のリスクを回避するためにも不可欠な取組です。コンプライアンスの観点からも、形式的な実施にとどまらず、実効性のある運用が求められます。
ストレスチェックを「意味あるもの」にするための活用方法

形骸化したストレスチェックを「意味あるもの」にするためのポイントは、以下の5つです。
- ストレスチェックの目的を正しく周知して回答の質を高める
- ストレスチェック結果の情報管理を徹底する
- 高ストレス者が安心して相談できる体制を整える
- メンタルヘルス研修を併せて行う
- 結果を分析して職場環境改善に活用する
ストレスチェックの目的を正しく周知して回答の質を高める
ストレスチェックの回答率と回答の質を高めるには、事務的な連絡だけでなく、目的や個人情報の取り扱いについて丁寧に説明する必要があります。「評価には一切影響しない」「回答内容は実施者のみが確認する」といった点を強調し、「回答によって不利益を被ることがない」という安心感を醸成することが重要です。
また、「不調者の特定ではなく、職場環境をよくするためにストレスチェックを行う」というメッセージを繰り返し発信することが求められます。
さらに、以下のように回答することで従業員自身にどのようなメリットがあるかを伝えるとより効果的です。
- 自身のストレス状態を客観的に把握し、セルフケアに役立てられる
- 会社に個人の結果を知られることなく、職場環境の改善を要望できる
従業員個人にとってもプラスになる施策であることを伝えることで、協力を得やすくなります。
ストレスチェック結果の情報管理を徹底する
従業員の信頼を得るためには、プライバシー保護と情報管理の徹底が不可欠です。実施者から提供されたストレスチェックの結果は5年間保存する義務があり、その管理は厳重に行わなければなりません。
原則として、人事権を持つ上司や役員は実施事務従事者になれないため、本人の同意なく個人の結果を見ることは禁止されています。このルールを守るためには、担当者以外が物理的にもシステム上でも情報に触れられない状態をつくる必要があります。
具体的には、紙媒体の結果は鍵付きのキャビネットで保管し、鍵の管理者を限定します。電子データであれば、アクセス権限とパスワードを設定し、担当者以外はファイルを開けないようにするといった対策が必要です。
また、外部機関へストレスチェックを委託し、社内に詳細なデータを置かないことで、意図しない情報漏洩のリスクを根本から防止できます。
ストレスチェックの外部委託業者の選び方やメリットについては、関連記事をご覧ください。
高ストレス者が安心して相談できる体制を整える
社内での相談に抵抗がある従業員のために、複数の相談窓口を用意します。外部EAP(Employee Assistance Program:従業員支援プログラム)などの外部機関を案内することで、面接指導への心理的なハードルを下げられます。
また、オンライン面談を導入したり、人目につかない場所に面談室を設置したりするなど、物理的な配慮も、従業員に安心感を与えるために不可欠です。
従業員が相談しやすい環境を整えることで、早期の対応が可能になります。
メンタルヘルス研修を併せて行う
自分の意見や気持ちを安心して表現できない職場では、本音で回答したり面談を申し出たりすることが難しくなります。特に管理職の理解不足は、部下の相談を阻害する要因の一つです。
そのため、管理職向けのラインケア研修を実施し、メンタルヘルスへの理解を深めることが必要です。また、従業員向けにセルフケア研修を行い、結果の見方やストレス対処法について学ぶ機会を提供することで、ストレスチェックと教育を効果的に連携させられます。
結果を分析して職場環境改善に活用する
集団分析の結果から高ストレス部署を特定し、改善策を実行します。何から手をつけるべきかわからない場合は、厚生労働省の「職場環境改善のためのヒント集」(こころの耳(厚生労働省))などを活用するとよいでしょう。
以下のように、作業手順や職場環境、制度などについて、快適に働くためのアイデアが掲載されています。従業員同士で改善策を話し合う際に活用できるでしょう。

出典:職場環境改善のためのヒント集(厚生労働省)
改善策の検討には、人事部門だけでなく該当部署の管理職を巻き込むことが必要です。「挨拶を増やす」「会議時間を短縮する」といった、コストをかけずにできる小さな改善から始めることで、現場の納得感を得やすくなります。
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ストレスチェックを有効活用している企業事例3選

実際にストレスチェックを活用し、組織改善につなげている企業の事例を紹介します。自社での運用のヒントとして、ぜひ役立ててください。
ストレスチェック結果の見方を研修で解説(株式会社小田急フィナンシャルセンター)
同社では、メンタルヘルス研修を通じてストレスチェック結果の見方を伝えています。従業員が自身のストレス状態への理解をより深めることで、セルフケアを促進しています。
また、エンゲージメントサーベイと並行して実施することで、個人の健康状態と組織の両面から課題を可視化。得られたデータは研修テーマの設定にも活用され、実効性のある施策へつながっています。
参考:「声が届くオフィス」で安心して働ける職場へ│小田急フィナンシャルセンターが目指す心理的安全性の向上│株式会社エムステージ健康経営トータルサポート
全管理職参加のストレスチェック結果報告会で意識改革(スバル用品株式会社)
スバル用品株式会社では、集団分析の結果、対人関係のストレスが他の項目と比較すると少し高いことが判明しました。これを機に、従業員同士の価値観の共有やコミュニケーション改善といった具体的な課題が明確になりました。
同社では、ストレスチェックの集団分析結果の報告会を全管理職が参加する形で実施しています。課題と改善方法が共有されたことで、上層部からの理解も得られ、経営を巻き込んだ職場環境改善の取組へ発展しています。
参考:「ストレスチェックデータの活用で課題が明確に」柔軟な働き方を推進するスバル用品の健康課題とは│株式会社エムステージ健康経営トータルサポート
健康経営推進に向けた「意味ある」ストレスチェックへ(亀田製菓株式会社)
亀田製菓株式会社では、法令対応のための「形骸化したストレスチェック」から脱却し、健康経営の推進を目的にストレスチェックツール『Co-Labo』を導入しました。生産性損失を表すプレゼンティーズム尺度や、独自の設問を加えることで、従業員が抱える不調の可視化を実現しています。
また、グループ3社合同で、集団分析結果の報告会を実施し、組織全体での健康課題の把握を行いました。分析結果を元に、優先順位を定めた実効性の高い改善施策の策定に取り組んでいます。
参考:「“健康”を企業文化として根付かせたい」従業員のヘルスリテラシー向上を目指す亀田製菓グループの取り組み│株式会社エムステージ健康経営トータルサポート
ストレスチェックの意味は運用方法で変わる
ストレスチェックが形骸化している場合、その原因は運用方法にあるケースが多くみられます。従業員が安心して回答でき、ストレスチェックの結果が職場環境の改善につながる実感を持てる仕組みづくりが必要です。
特に、経営層や管理職を巻き込み、組織全体で改善に取り組む姿勢を示すことが不可欠です。集団分析の結果を現場にフィードバックし、具体的なアクションを起こすことで、ストレスチェックは組織を強くする取組へと変わります。
株式会社エムステージのストレスチェック「 Co-Labo 」であれば、詳細な集団分析レポートの提供に加え、報告会を通じて社内での課題共有をサポートします。お気軽にご相談ください。
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