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嘱託産業医とは?選任義務や報酬、自社に合う産業医の探し方を解説

サンポナビ編集部

産業医

嘱託産業医
嘱託産業医

嘱託産業医とは、従業員50人以上999人以下の事業場で選任される非常勤の産業医です。

 

専属産業医と比べ、勤務形態が非常勤(月1回等の訪問)である点を除き、法律上の権限や役割に違いはありません。

 

業務内容は職場巡視や健康診断に基づく就業判定、休復職面談、衛生委員会への出席など多岐にわたります。

 

本記事では、嘱託産業医の業務範囲から契約・選任手続きのポイントまで分かりやすく解説します。

 

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監修:内田 さやか (産業医/心療内科医/労働衛生コンサルタント)

 

【読者の皆さまへ】医師監修について
掲載されている内容は、記事公開日および更新日における一般的な医学情報に基づき医師が監修したものです。個別の症状については、必ず医療機関を受診してください。なお、この監修は医学情報の正確性のみを対象としており、本サイトが提供または紹介するサービスや商品への誘導・広告に関与するものではありません。

嘱託産業医とは

 

 

常時50人以上の労働者を使用する事業場では、事業者に対して産業医の選任が法律で義務付けられています(労働安全衛生法第13条)。

 

その中で、従業員数が50人以上999人以下の規模において、非常勤の形で選任されるのが「嘱託産業医」です。

 

一般的には、地域の開業医や勤務医が本業の診療業務と兼業するケースが多く、毎月1回〜数回、事業場を訪問して業務を行います。

 

【監修者コメント】

 

近年では、産業医を本業として嘱託産業医を複数兼任する産業医や、1,000人以上の規模の企業が産業保健体制の強化を目的に、専属産業医とは別に嘱託産業医をプラスαとして契約するケースも見られています。

 

 

 

専属産業医のように社内に常駐はしないものの、企業の健康管理や労働環境改善を医学的立場から支える重要なパートナーとなります。

 

嘱託産業医と専属産業医の違い

嘱託産業医と専属産業医の主な違いは、対象となる企業の規模、勤務形態、そして業務の関わり方にあります。

 

嘱託産業医 専属産業医
対象事業場 労働者数 50〜999人 労働者数 1,000人以上

※有害業務の場合は500人以上〜

勤務形態 非常勤 常勤
訪問・勤務頻度 毎月1〜数回
・1回あたり1時間程度
・週3〜5日程度
・1日3時間程度〜フルタイム
役割・関わり方 外部のアドバイザーとして法定業務・定期面談などを継続的に実施 組織の一員として、自社の産業保健体制を主導・統括
主な契約形態 業務委託契約 直接雇用 または 業務委託契約

 

嘱託産業医は労働者数50~999人の事業場を対象とし、普段は診療を行う開業医や勤務医が非常勤として月1〜2回程度訪問します。

法令で定められた巡視や面談などの基本業務をスポットで対応するのが特徴です。

 

一方、専属産業医は労働者数1,000人以上(有害業務は500人以上)の事業場で選任が義務付けられており、企業に常勤(週3〜5日程度常駐)して勤務します。

 

日常的な健康相談や休復職支援、健康推進施策の企画など、組織に深く関与したきめ細やかな業務を行います。

 

 

嘱託産業医の業務内容

 

労働安全衛生規則第14条で定められている産業医の職務は以下の9つに分類されています。

 

なお、嘱託産業医と専属産業医で業務内容に違いはありません。

 

①健康診断の実施とその結果に基づく措置
②長時間労働者に対する面接指導・その結果に基づく措置
③ストレスチェックとストレスチェックにおける高ストレス者への面接指導その結果に基づく措置
④作業環境の維持管理
⑤作業管理
⑥上記以外の労働者の健康管理
⑦健康教育、健康相談、労働者の健康の保持増進のための措置
⑧衛生教育
⑨労働者の健康障害の原因の調査、再発防止のための措置

引用:中小企業事業者の為に産業医ができること(独立行政法人 労働者健康安全機構)

 

 

①健康診断の実施とその結果に基づく措置(就業措置)

健康診断の結果を確認し、通常勤務が可能かどうかの「就業判定」を行います。その際、残業の禁止や配置転換が必要と判断された場合は、会社に対して就業上の措置に関する意見を提出します。

 

②長時間労働者に対する面接指導・その結果に基づく措置

月80時間超の残業などを行った従業員と面談を実施し、就労制限などの措置を会社へアドバイスします。

 

③ストレスチェックと高ストレス者への面接指導・その結果に基づく措置

ストレスチェックの実施者となり、高ストレス者とのストレスチェック面談を行います。会社に対して就業上の措置に関する意見を提出します。

 

④作業環境の維持管理(職場巡視など)

毎月の職場巡視を通じて、オフィスの照明・室温・換気状態や工場の有害物質などを点検します。

 

⑤作業管理

毎月の職場巡視を通じて、長時間のパソコン作業姿勢や重い荷物の持ち方など、身体へ負担がかかる作業がないか指導します。

 

⑥上記以外の労働者の健康管理

メンタルヘルス不調や傷病による「休職・復職面談」のほか、がんや持病の治療と仕事を両立させるための「就業継続支援」、妊娠期・介護期の配慮、健診再検査の放置者への受診勧奨など、個別の健康課題へ柔軟に対応します。

 

⑦健康教育、健康相談、労働者の健康の保持増進のための措置

従業員からの個別健康相談への対応や、生活習慣病・メンタルヘルスをテーマとした衛生講話を実施します。

 

⑧衛生教育

毎月開催される安全衛生委員会(衛生委員会)などに出席し、専門的な立場から助言や意見を述べます。

 

⑨労働者の健康障害の原因の調査、再発防止のための措置

休職者の再発防止策や、労働災害が発生した際の環境改善について助言を行います。

 

嘱託産業医を探す前に整理しておくこと

 

自社に合った嘱託産業医をスムーズに見つけ、選任後のミスマッチを防ぐためには、事前の社内整理が欠かせません。

条件に合う産業医へ的確に依頼ができるよう、以下の3つのポイントをあらかじめクリアにしておきましょう。

 

1.業種や職種ならではの自社の健康課題

2.訪問頻度や対応範囲などの希望条件

3.自社と産業医との相性

 

1.業種や職種ならではの自社の健康課題

得意とする専門分野や経験(精神科、心臓血管外科、整形外科など)は医師によって様々です。

 

産業医は医療機関の医師とは異なり、診断や治療は行いませんが、自社の業務特性や現在抱えている健康リスクを言語化しておくことで、その課題解決に長けた産業医を選定しやすくなります。

 

 

【デスクワーク・IT企業など

長時間労働による疲労蓄積や、メンタルヘルス不調(適応障害やうつ病など)による休復職リスクが主な課題となります。

精神科や心療内科領域の知見が豊富な医師や、メンタルヘルス面談の経験が豊かな産業医が適しています。

 

【製造業・建設業・運送業など】

工場や現場での腰痛・怪我、有害物質の取扱い、過重労働対策などが主な課題となります。

作業環境管理や安全衛生に精通した医師や、外科領域・応急処置に関する知見を持つ産業医が求められます。

 

「自社で今、どのような健康課題が起きているか」を事前にリストアップしてみましょう。

 

2.訪問頻度や対応範囲などの希望条件

嘱託産業医は訪問時間が限られているため、「月に何時間来てもらうか」「どこまでの業務を期待するか」という条件を明確にしておく必要があります。

 

条件が曖昧なまま契約すると、「希望していた休復職面談に対応してもらえない」「訪問時間が足りずに業務が回らない」といったトラブルにつながります。

 

整理しておくべき主な条件は以下の4つです。

 

①訪問頻度・時間

毎月1回の訪問を基本とし、自社の従業員数や面談発生頻度に合わせて「月1回・2時間」「月1回・3時間」などの必要な時間を想定します。

 

例えば、第3水曜日の14時など、訪問日を固定化できると日程調整のコスト削減ができます。 

 

➁業務の対応範囲

法令で定められた基本業務(職場巡視・衛生委員会への出席・就業判定)に加え、「休復職面談の対応」「緊急時の相談体制」など、自社が特に手厚く対応してほしい範囲を挙げておきます。

 

③オンライン対応の可否

リモートワークを導入している企業や拠点が多い場合は、オンラインでの面談や衛生委員会への参加が可能かも重要な条件となります。

 

④コミュニケーションツール・頻度

電話・メール・Slackなどのツールを使うか、いつでも相談可能なのか、回数の上限があるのか等の確認をしておくと、トラブル回避になります。

 

 

3.自社と産業医との相性

自社の産業保健体制の「現在地」と「目指す姿」にフィットする、相性の良い産業医像を整理しておきましょう。

 

【監修者コメント】

例えば、体制の立ち上げ期で基礎から主導してほしいのか、メンタルヘルス対策を強化したいため寄り添い型が良いのかなど、自社のフェーズによって適したスタンスは異なります。その上で事前の顔合わせを行い、「相談しやすさ」「意見の明確さ」「自社の社風への理解」といった人柄や価値観が自社にマッチするかを確認することが大切です。

 

 

 

嘱託産業医の報酬相場

 

 

嘱託産業医に支払う報酬は、従業員規模や業務内容によって異なります。

公益社団法人日本橋医師会が、嘱託産業医として活動する医師に行った調査によると、以下の金額が報酬目安となります。

 

労働者(人) 基本報酬月額(円)
50人未満 75,000~
50~199 100,000~

200~399

150,000~
400~599 200,000~
600~999 250,000~

引用:産業医報酬基準額について│公益社団法人日本橋医師会

 

契約時間外の延長対応が発生した際には、追加で報酬を支払うケースが一般的です。
また、産業医紹介サービス等を介して業務委託契約をする場合には、産業医の報酬とは別途、仲介手数料等がかかります。

 

嘱託産業医を探す方法

 

 

嘱託産業医を探す方法として、主に次の4つの探し方があります。

 

・地域の医師会から紹介してもらう
・健康診断を契約している医療機関に依頼する
・産業医紹介サービスを活用する
・地域産業保健センターを利用する

 

医師会や健診機関から紹介してもらう方法は、安価で契約できる傾向がありますが、契約や選任後の調整を自社で行う手間が生じます。

また、地域産業保健センターでは必要時のみ産業医のスポット対応が可能ですが、従業員50人未満の事業場に限られます。

 

産業医を探す具体的な方法については、下記の記事を参考にしてみてください。

 

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嘱託産業医の契約・選任手続き

 

選任したい産業医が決まったら、契約手続きと労基署へ選任報告を行います。

トラブルを防ぎ、法令を遵守してスムーズに運用を開始するために、以下の手順と確認ポイントを押さえておきましょう。 

 

業務委託契約の締結と確認ポイント

嘱託産業医との契約は、直接の雇用契約ではなく「業務委託契約」を結ぶのが一般的です(産業医紹介会社や医療機関を挟む場合も同様です)。

 

後からの「こんなはずではなかった」という認識のズレを防ぐため、契約締結時には以下の項目を必ず確認・規定しておきましょう。

 

  • 訪問頻度と1回あたりの滞在時間
    「月1回・2時間」など、基本的な訪問ルールを明確にします。

 

  • 訪問対象となる事業場
    どの事業場に訪問・対応するのかを契約書上で明確に特定します。対象範囲と移動費・出張費の負担ルールについても明記しておく必要があります。

 

  • 契約時間超過時の対応

  長時間の面談対応が重なるなどして規定時間を超えた場合の、延長料金の計算単位(30分単位など)や金額を定めておきます。

 

  • 対応業務の範囲と追加費用の有無
    基本的な法定業務(巡視・衛生委員会出席・健診チェック)以外の業務(オンライン面談、衛生講話、ストレスチェック実施者業務など)が基本料金に含まれるか、別料金かを確認します。

 

  • 個人情報・秘密保持条項
    産業医は従業員の高度なプライバシー情報(病歴やメンタルヘルスの状態など)を取り扱うため、厳密な秘密保持義務について明記します。

 

なお、日本医師会が「嘱託産業医の心得と契約の手引き」を公開していますので、参考にしてみてください。

 

労働基準監督署への「選任届」の提出

産業医が決定し契約を締結したら、所轄の労働基準監督署へ選任の報告を行います。

 

常時50人以上の労働者を使用することになった日、または前任の産業医が解任・辞任した日から「14日以内」に選任届を提出する義務があります。(労働安全衛生規則第13条第2項)

 

提出期限を過ぎると法令違反となるため、迅速な手続きが必要です。

 

提出方法

2025年1月より、常時50人以上の事業場における産業医選任届などの提出は「電子申請(e-Gov)」が原則義務化されています。

 

労働基準監督署の窓口や郵送による紙での提出は、原則として不可(システム障害時等の例外を除く)となっているため注意してください。 

 

提出に必要な書類(電子データ添付)

 

  1. 産業医等 選任報告(様式第3号)
  2. 医師免許証の写し
  3. 産業医であることを証明する書面(日本医師会認定産業医認定証や、産業医科大学の修了証など)

 

電子申請にあたっては「GビズID」や「e-Gov」のアカウント設定が事前に必要となります。産業医紹介会社を利用する場合は、こうした行政手続きのサポート範囲についてもあわせて確認しておくと安心です。

 

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——本記事の監修範囲はここまでです——

 

 

 

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この記事の監修者
ビジョンデザインルーム株式会社代表 SAHANA Retreat Clinic 院長 産業医/労働衛生コンサルタント・心療内科医・公認心理師
2016年にビジョンデザインルーム株式会社を設立。2019年に心身のケアを両立できる施設としてSAHANA Retreat Clinicを開業。2022年より日本産業衛生学会代議員、NPO法人日本人材マネジメント協会 執行役員を務める。現在は、研修講師、地方自治体の健康施策にも参与している。

内田さやか

ビジョンデザインルーム株式会社代表 SAHANA Retreat Clinic 院長 産業医/労働衛生コンサルタント・心療内科医・公認心理師
2016年にビジョンデザインルーム株式会社を設立。2019年に心身のケアを両立できる施設としてSAHANA Retreat Clinicを開業。2022年より日本産業衛生学会代議員、NPO法人日本人材マネジメント協会 執行役員を務める。現在は、研修講師、地方自治体の健康施策にも参与している。

この記事の著者
サンポナビ編集部

サンポナビ編集部

企業の産業保健・健康経営を応援する『サンポナビ』編集部です。健康経営トータルサポートを提供している株式会社エムステージが運営しています。 産業医をお探しの企業様、ストレスチェック後の高ストレス者面接でお困りの企業様、健康経営の推進をしたい企業様は、ぜひお問い合わせボタンからご相談ください。

 

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