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安全委員会・衛生委員会・安全衛生委員会の違いや設置基準は?4つのポイントで解説

片桐はじめ

安全衛生管理体制の構築には、安全委員会や衛生委員会などの設置が欠かせません。しかし、「安全委員会と衛生委員会の違いがわからない」「自社にはどの委員会を設置すればよいか」と悩むことも多いのではないでしょうか。

 

本記事では、安全委員会・衛生委員会・安全衛生委員会の違いを目的や設置基準、メンバー構成などの4つのポイントでわかりやすく解説します。さらに、委員会の立ち上げ方から、毎月の委員会運営の手順までを紹介します。

 

自社に必要な委員会の理解や、健康経営®につながる委員会運営に向けたヒントとして活用してください。

 

安全委員会・衛生委員会・安全衛生委員会の違いは?

 

会議をする男女

 

安全委員会と衛生委員会は、業種や従業員数によって設置義務が異なります。

両方の委員会の設置義務がある事業場は、これらを統合して安全衛生委員会として開催することが可能です。

 

まずは、安全委員会、衛生委員会、そして両者を統合した安全衛生委員会の違いを「目的」「設置基準」「構成メンバー」「審議内容」の4つのポイントで整理しましょう。

各委員会の役割や設置基準は法令によって定められているため、正しく把握しましょう。

 

1.目的

各委員会は、労働災害防止のために労使が一体となって調査審議を行う場です。企業が積極的に労働者の意見を聴取し、現場の実態に則した効果的な安全・衛生対策を行うことが共通の目的です。

 

委員会ごとに、調査審議するテーマが異なります。具体的な目的は以下の通りです。

 

委員会 目的
安全委員会 労働者の安全確保に関する取組を調査審議し、労働者の危険を防止するための対策や計画を立てる。機械の操作ミスによるケガや、転倒・転落などの労働災害を未然に防ぐための物理的な安全対策について話し合う。
衛生委員会 労働者の健康確保に関する取組を調査審議し、
労働者の健康障害の防止や、精神的健康(メンタルヘルス)を含む健康の保持増進を図るための対策を検討する。
安全衛生委員会 労働者の安全と健康の確保に関する取組を調査審議する。
労働安全衛生法により、安全委員会と衛生委員会の両方の設置義務がある事業場においては、それぞれの委員会の設置に代えて、両者を統合した「安全衛生委員会」を設置することが可能(労働安全衛生法第19条)。委員会を統合することで、安全と衛生(健康)の両方の課題を一つの場で総合的に審議する。

 

このように、委員会ごとに目的が決まっているため、それぞれの目的に沿った運営を行うことが大切です。

 

2.対象業種と設置基準

各委員会の設置義務は、事業場ごとの「常時使用する労働者の数」と「業種」によって異なります。

なお、常時使用する労働者数にはパートタイマーや契約社員なども含まれるため、人数のカウントには注意が必要です。

 

具体的には以下の通りです。

 

委員会 事業場規模
(常時使用する労働者数)
該当する業種
安全委員会 50人以上 林業、鉱業、建設業、製造業の一部(木材・木製品製造業、化学工業、鉄鋼業、金属製品製造業及び輸送用機械器具製造業)、運送業の一部(道路貨物運送業、港湾運送業)、自動車整備業、機械修理業、清掃業
100人以上 上記以外の製造業・運送業、電気業、ガス業、熱供給業、水道業、通信業、各種商品卸売業、家具・建具・じゅう器等卸売業、各種商品小売業、家具・建具・じゅう器等小売業、 燃料小売業、旅館業、ゴルフ場業
衛生委員会 50人以上 全業種
安全衛生委員会 上記の安全委員会および衛生委員会の双方の設置義務を満たす事業場

 

例えば、小売業で事業場規模が80人であれば、安全委員会の設置は義務ではありませんが、衛生委員会は設置が義務付けられています。

 

なお、労働者数が50人未満で委員会の設置義務がない事業場であっても、安全や衛生に関する事項について関係する労働者の意見を聴くための機会を設ける必要があります(労働安全衛生規則第23条の2)。

 

3.構成メンバー

安全委員会と衛生委員会では、構成メンバーが異なります。委員の構成要件がそれぞれ定められているので、適切なメンバーを選定し、円滑な運営体制を整えることが重要です。

 

役割 安全委員会 衛生委員会
議長 総括安全衛生管理者(または事業の実施を統括管理する者など)
委員
  • 安全管理者
  • 安全に関し経験を有する当該事業場の労働者
  • 衛生管理者
  • 産業医
  • 衛生に関し経験を有する当該事業場の労働者

 

安全衛生委員会を立ち上げる場合は、上記すべての要件を満たす有資格者(安全管理者、衛生管理者、産業医)を選任して構成しなければなりません。

 

4.審議内容

それぞれの委員会が目的とするものが異なるため、調査審議事項も異なります。

 

安全委員会の調査審議事項

 

安全に関する規程の作成、危険性または有害性等の調査に基づく対策、安全教育の実施計画などについて審議します。具体的には「ヒヤリハット事例の共有と再発防止策」「機械設備の安全点検ルールの見直し」などが挙げられます。

 

1. 労働者の危険を防止するための基本となるべき対策に関すること。
2. 労働災害の原因及び再発防止対策で、安全に係るものに関すること。
3. 安全に関する規程の作成に関すること。
4. 危険性又は有害性等の調査及びその結果に基づき講ずる措置のうち、安全に係るものに関すること。
5. 安全衛生に関する計画(安全に係る部分)の作成、実施、評価及び改善に関すること。
6. 安全教育の実施計画の作成に関すること。
7. 厚生労働大臣、都道府県労働局長、労働基準監督署長、労働基準監督官又は産業安全専門官から文書により命令、指示、勧告又は指導を受けた事項のうち、労働者の危険の防止に関すること。

出典:
安全委員会、衛生委員会について教えてください。(厚生労働省)

 

 

衛生委員会の調査審議事項

 

衛生に関する規程の作成をはじめ、定期健康診断の結果に基づく対策、長時間労働による健康障害防止対策、メンタルヘルス対策などについて審議します。また、法改正に伴い、化学物質による健康障害防止措置(ばく露を最小限にするための措置など)についても、衛生委員会での調査審議が義務付けられるようになりました。

 

1. 労働者の健康障害を防止するための基本となるべき対策に関すること。
2. 労働者の健康の保持増進を図るための基本となるべき対策に関すること。
3. 労働災害の原因及び再発防止対策で、衛生に係るものに関すること。
4. 衛生に関する規程の作成に関すること。
5. 危険性又は有害性等の調査及びその結果に基づき講ずる措置のうち、衛生に係るものに関すること。
6. 安全衛生に関する計画(衛生に係る部分)の作成、実施、評価及び改善に関すること。
7. 衛生教育の実施計画の作成に関すること。
8. 化学物質の有害性の調査並びにその結果に対する対策の樹立に関すること。
9. 作業環境測定の結果及びその結果の評価に基づく対策の樹立に関すること。
10. 定期健康診断等の結果並びにその結果に対する対策の樹立に関すること。
11. 労働者の健康の保持増進を図るため必要な措置の実施計画の作成に関すること。
12. 長時間労働による労働者の健康障害の防止を図るための対策の樹立に関すること。
13. 労働者の精神的健康の保持増進を図るための対策の樹立に関すること。
14. 厚生労働大臣、都道府県労働局長、労働基準監督署長、労働基準監督官又は労働衛生専門官から文書により命令、指示、勧告又は指導を受けた事項のうち、労働者の健康障害の防止に関すること。

出典:安全委員会、衛生委員会について教えてください。(厚生労働省)

 

 

全委員会共通!立ち上げと毎月の運用手順5ステップ

 

自社に必要な委員会が把握できたら、実際に委員会を立ち上げ、形骸化させずに運用していくための手順を確認しましょう。

 

各委員会に共通する立ち上げや運用のステップは以下の5つです。

 

  • 構成員の選出と組織図の作成・周知
  • 委員会規程の作成
  • 年間計画の立案
  • 委員会の開催(月1回以上)
  • 議事録の周知・保管と改善措置の振り返り

 

 

1.構成員の選出と組織図の作成・周知

まず、事業場の労働者数や業種に応じて、安全衛生の中心となる担当者(安全管理者、衛生管理者、産業医など)を選任します。

選任時に注意すべきなのは「労働者側委員の選出ルール」です。

 

議長以外の委員の半数は、労働者の過半数で組織する労働組合の有無で選出ルールが異なります。(労働安全衛生法第17条・第18条)

 

・過半数で組織する労働組合がある場合: その労働組合による指名

・過半数で組織する労働組合がない場合: 労働者の過半数を代表する者の推薦に基づく指名

 

これは、事業者側の都合だけで構成員を決定するのを防ぎ、現場で働く労働者の意見を委員会の運営や職場環境の改善に反映させるためです。

 

もし、選任プロセスに不備があり「過半数代表者の推薦の手続きを踏んでいない」と、委員会の成立要件を満たしていないとみなされる可能性があります。

適正な手続きで選任した構成員をもとに委員会の構成を決定し、社内に組織図などを掲示して従業員へ周知しましょう。

 

 

2.委員会規程の作成

メンバーが決まったら、委員会の運用ルールを定めた「安全衛生委員会規程(単独の場合は安全委員会規程・衛生委員会規程)」を作成します。

 

規程には、以下の内容を具体的に明記します。

 

  • 委員会の設置目的
  • 調査審議事項
  • 構成員
  • 任務および任期
  • 開催頻度
  • 議案の成立条件
  • 専門委員の指名
  • 事務局の役割
  • 議事録の保管と開示方法 など

 

明文化された規程を設けることで、関係者の役割や業務の手順が整理され、人事異動などで担当者が変わった際にもスムーズに引き継げます。


安全衛生関係のパンフレット等(東京労働局版):2-6 作成例 安全衛生委員会規定(厚生労働省東京労働局)を編集して作成

 

 

3.年間計画の立案

委員会が単なる「形だけの報告会」になってしまうのを防ぐためには、年度初めに年間計画を策定することが必要不可欠です。年間計画とは、健康管理や作業環境管理、労働衛生教育などの活動予定をまとめたものです。

 

マンネリ化を防ぐには毎月のテーマ設定が重要

 

残業時間や職場巡視の結果などの定例の報告事項に加え、季節ごとの健康リスクなど、月ごとに個別テーマを設けるのが効果的でしょう。例えば、以下のようなテーマが挙げられます。

 

  • 4月:新入社員のメンタルケア
  • 夏場:熱中症対策
  • 冬場:感染症・インフルエンザ対策

 

個別の重点テーマを設定することで、委員会のマンネリ化を防ぎ、新鮮な視点で職場環境改善に取り組むことができます。

安全衛生委員会のテーマやNG例については、以下の関連記事で詳しく紹介しています。ぜひご覧ください。

 

 

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4.委員会の開催(月1回以上)

いずれの委員会も、労働安全衛生法によって「毎月1回以上」開催することが義務付けられています。

会議の場では、職場巡視の結果報告や、あらかじめ年間計画で定めたテーマなどについて活発に話し合いましょう。

 

オンライン開催時の注意点は?

 

近年ではテレワークやハイブリッドワークなど多様な働き方に合わせ、委員会をオンラインで開催する企業も増えています。オンラインで開催する場合、「委員相互の円滑な意見交換が即時に行えること」や「音声や映像が安定していること」などが必要要件となります。

 

また、実務上で特に気をつけたいのが「機密情報の取り扱い」です。会議の場で個人の健診結果を直接使うことはありませんが、会議で共有するための集計データの管理や、会議の過程で誤って機密情報が漏えいしないようにしましょう。パスワード設定や不正アクセス防止などのセキュリティ対策を講じることが必須です。

 

情報通信機器を用いた労働安全衛生法第17条、第18条及び第19条の規定に基づく安全委員会等の開催について(厚生労働省)を編集して作成

 

5.議事録の周知・保管と改善措置の振り返り

委員会を開催した後は、遅滞なく「議事の概要」を全労働者に周知しなければなりません。周知の方法としては、各作業場の見やすい場所への掲示、書面の交付、または社内ネットワークでの共有などが認められています(労働安全衛生規則第23条第3項)。

 

また、作成した議事録は、「3年間」保存する義務があります(労働安全衛生規則第23条第4項)。電子データとして保存・管理する場合は、労働基準監督署の調査時などに必要事項が画面に表示され、写しを提出できるシステムにしておく必要があります。

 

さらに重要なのは、「委員会の意見を踏まえて会社が具体的にどのような改善措置を講じたか(または講じなかったか)」をしっかりと記録しておくことです。

 

話し合って終わりにするのではなく、その後の状況をフォローアップし、PDCAサイクルを回していくことが委員会の本来の目的です。

 

各委員会の違いを理解し適切な安全衛生管理体制へ

 

事業場の業種や規模によって、安全委員会、衛生委員会、またはこれらを統合した安全衛生委員会のいずれを設置すべきかが異なります。まずは自社ではどの委員会の設置が必要か把握しましょう。

 

その上で、月1回以上の開催や議事録の3年保存といった共通の法的義務を遵守し、適切な体制構築を行うことが重要です。

 

毎月の委員会の議事録作成を漏れなくスムーズに行うため、ぜひ以下の「議事録フォーマット」をご活用ください。

 

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この記事の著者

片桐はじめ

片桐はじめ

公認心理師・臨床心理士
精神科病院、心療内科クリニックの心理職として、精神疾患を抱える方や働く人のカウンセリングや心理療法等に従事。
現職の経験を活かし、メンタルヘルス・産業保健領域でのWebライター、インタビューライターとして活動中。

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