産業医面談はオンラインでできる?実施上のメリットと注意点を解説
2025/03/12 (更新:2025/03/12)
サンポナビ編集部


産業医面談は、従業員の不調をいち早く発見するために重要な役割を果たします。しかし、「産業医が忙しく、面談時間の確保が難しい」「面談可能な日程が限られており、調整が煩雑」などの課題がある企業も少なくないでしょう。
本記事では、産業医面談のオンライン実施の可否やメリット、注意点など、人事担当者が押さえておくべきポイントを解説します。
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オンラインでの産業医面談は令和2年11月から可能に
従業員の表情や仕草、話し方などから、疲労やストレスの程度を把握するため、産業医面談は原則対面での実施が義務でした。しかし、新型コロナウイルス感染症の影響で在宅勤務を導入する企業が出てくる中、対面での実施が難しいケースが増えたため、一定条件のもと、オンラインでの産業医面談が令和2年11月から認められるようになりました。
産業医面談だけでなく、衛生委員会も条件を満たせばオンラインでの開催が可能です。衛生委員会のオンライン開催の詳しい条件については、関連記事をご覧ください。
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一方で、産業医業務の一つである職場巡視は、原則実地で行う必要があります。作業場の気温や湿度、従業員の作業方法など、現場で直接確認しないと正しく評価できないケースがあるためです。
職場巡視のオンラインでの実施は、あくまで補助的な情報収集とし、必ず産業医が目視で確認する体制を整えましょう。
産業医面談をオンラインで実施するための3つの条件
オンラインで産業医面談を実施するために必要な条件は、以下の3つです。
- 産業医への情報提供と医師の要件
- 情報通信機器の機能とセキュリティ
- 面談の実施方法
1.産業医への情報提供と医師の要件
オンラインでの面談を効果的に実施するため、面接指導を行う労働者について、以下の情報を産業医に提供する義務があります。
- 事業場の事業概要や業務内容、作業環境
- 労働者が担当する業務内容や作業環境
- 労働時間などの勤務状況
面接指導を実施する医師は、以下の条件に該当することが望ましいとされています。
- 労働者が所属する事業場の産業医
- 過去1年以上にわたって、労働者の日常的な健康管理業務を行った医師
- 過去1年以内に事業場の職場巡視を行った医師
- 過去1年以内に対象の労働者に面接指導を実施したことがある医師
2.情報通信機器の機能とセキュリティ
オンライン面談で使用するシステムなどの情報通信機器も、機能やセキュリティに関していくつか条件があります。
まず、産業医と労働者がお互いに表情や顔色、声、仕草を確認できるような環境が必要です。そのため、映像や音声の通信が常に安定しており、スムーズなやりとりができることが求められます。音声のみで映像が映らず、労働者の姿が確認できない場合は認められません。
また、情報セキュリティに関しては、外部への情報漏えいや不正アクセスの防止などの対策が必須です。さらに、情報通信機器の操作が労働者にとって難しいものでなく、利用しやすいことも条件の一つです。普段の業務で活用しているWeb会議システムやチャットツールを活用するとよいでしょう。
3.面談の実施方法
オンライン面談の実施にあたり、まずは衛生委員会で実施方法について調査審議を行い、労働者に事前の周知が必要です。
また、面接指導内容が第三者に知られないような環境にするなど、労働者のプライバシーへの配慮が求められます。録画や録音を行う場合は、流出防止の観点から事前に同意を得ておくことが望ましいでしょう。
面接指導中に緊急対応を要する兆候がみられた場合に備えた、体制づくりも必要です。近隣の医師と連携したり、自社の産業保健スタッフが対応したりできるよう、体制を整備しておきましょう。
「情報通信機器を用いた労働安全衛生法第66条の8第1項、第66条の8の2第1項、 第66条の8の4第1項及び第66条の10第3項の規定に基づく医師による面接指導の実施について」(厚生労働省)を編集して作成
産業医面談をオンラインで実施するメリット
オンラインで産業医面談を行うことで、以下のメリットがあります。
- 産業医との日程調整の手間が少なくなる
- 従業員が産業医面談を受けやすくなる
1.産業医との日程調整の手間が少なくなる
産業医面談をオンラインで実施すると、産業医や従業員の移動時間が不要となるため、時間を合わせやすくなります。また、複数の事業所の従業員に対しても、産業医の訪問時間内で効率よく対応できます。これまで苦慮していた日程調整の煩雑さが軽減されるでしょう。
2.従業員が産業医面談を受けやすくなる
リモートワークで働く従業員も、わざわざ出社する必要がないので面談を受けるハードルが低くなります。
また、従業員数50人未満で産業医選任義務がない支社等でメンタルヘルス不調が起きた場合でも、オンライン面談でスピーディーな対応が可能です。
「最近遅刻や欠勤が増えた」「業務負荷が心配」など、些細なことでも定期的なフォローが行いやすくなるため、より効果的なメンタルヘルスケアの実現ができるでしょう。
産業医面談をオンラインで実施する際の注意点
オンラインでの産業医面談は、前述した3つの条件に加え、以下の点に注意して行いましょう。
- 面談場所のプライバシーを確保する
- 必要に応じて対面実施も組み合わせる
- オンライン対応できる産業医を選ぶ
1.面談場所のプライバシーを確保する
オンライン面談は、場所を問わずアクセス可能な便利さがある一方で、プライバシーの確保には特に配慮が必要です。周囲に人がいるオープンスペースでの実施は避け、防音設備のある会議室など、面談内容が第三者に漏れないような環境を用意します。
従業員が自宅から参加する場合も、家族など第三者に面談内容が聞こえない環境を確保するよう、事前にルール化しておくとよいでしょう。
2.必要に応じて対面実施も組み合わせる
面談内容や状況によっては、対面での実施が望ましいケースがあります。特に、初回の面談時には、従業員の心身の状態を詳しく確認する必要があるため、対面実施が望ましいです。
また、メンタルヘルス不調が疑われる場合など、産業医が表情や声色などをより詳しく観察する必要があるときも、対面実施がおすすめです。例えば、ストレス過多で喫煙や飲酒量が増えていないかを、臭いから判断できる場合があります。
産業医と相談しながら、対面実施が必要なタイミングを事前に決めておくとよいでしょう。
3.オンライン対応できる産業医を選ぶ
オンライン面談を効果的に実施するためには、適切なスキルを持った産業医を選ぶことが重要です。通信トラブル時の対応やプライバシー保護の意識など、オンラインならではの要件を満たす産業医を選びましょう。
特に、オンライン面談では非言語的なコミュニケーションが伝わりにくく、従業員にドライな印象を与える場合があります。音ズレに配慮してゆっくり話したり、意図的に相づちを大きくしたりするなど、オンライン上のやりとりに応じた対応ができる産業医が望ましいでしょう。
産業医面談のオンライン対応時のチェックリスト
産業医面談のオンライン実施には、プライバシーの配慮など注意すべきポイントがいくつかあります。実際の運用において困らないよう、以下のチェックリストに沿って実施していきましょう。
システム環境の確認事項
- インターネット接続や通信状態のテスト
- カメラ、マイク、スピーカーの動作確認
- セキュリティ設定(パスワードなど)の確認
- 通信トラブル発生時の代替方法の準備(電話など)
面談環境整備のポイント
- 第三者に情報が漏れないようプライバシーが守られた個室
- 従業員の姿が確認できる適切な照明、明るさ
- 外部の音が聞こえない静かな環境
- 他の従業員等の個人情報が映り込まない配慮
従業員への周知事項
- オンライン面談への同意確認
- 面談目的と実施内容、所要時間の説明
- Web会議システムへの接続方法の説明
- 当日の緊急連絡先の共有
産業医がオンライン対応できない場合の対応策
産業医の方針によっては、オンラインでの面談対応ができない場合があります。オンラインでの実施を断られた場合は、次のように対応するとよいでしょう。
- 産業医と交渉する
- オンライン対応可能な産業医を探す
- 専門職への面談サービスを導入する
1.産業医と交渉する
産業医面談をオンラインで実施することで、従業員の面談機会が増え、メンタルヘルス対策の実効性が高まることを説明しましょう。
月1回の訪問時には対面で実施し、それ以外の面談をオンラインにするなど、段階的な導入を提案するのも一つの方法です。
産業医の不安や懸念点を確認しながら、無理のない形での導入を目指します。
2.オンライン対応可能な産業医を探す
産業医との交渉が難しい場合は、オンライン対応可能な産業医への変更を検討しましょう。地域の医師会や、産業医のマッチングサービスで紹介を受けられます。
自社に合った産業医の探し方については、以下の関連記事を参考にしてみてください。
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3.オンライン面談サービスを導入する
選任している産業医に加え、必要時のみ専門職とのオンライン面談サービスを利用することもおすすめです。
自社の産業医は面談業務以外にウェイトを置き、突発的な面談対応は外部のオンライン面談サービスを活用するなど、自社の課題にあわせて上手く組み合わせて利用するのがおすすめです。
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