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【まとめ】よくわかる「健康診断」種類と対象者・費用・検査項目等を解説

2022/05/25 (更新:2025/01/10)

サンポナビ編集部

人事労務・総務担当者の年中行事のひとつ、「健康診断」の手配と実施。初めて担当になった方は戸惑うことも多いのではないでしょうか。

 

また、これから健康診断を受ける従業員の方も、これを機に知っておきましょう。

 

本記事では種類や検査項目といった健康診断に関するベーシックな情報をまとめています。

 

後半では「健康診断って誰の義務なの?」「受診拒否したらどうなるの?」といった内容にも触れています。

 

 

健康診断には「特殊」「一般」の2種類がある

 

 

「特殊健康診断」の対象者

特殊健康診断とは、法定の有害業務に従事する労働者が受ける健康診断です。

 

特殊健康診断については労働安全衛生法第66条等にて定められており、健診を実施しなければならないとされている業務は次の通りです。

 

[1]高気圧業務
[2]放射線業務
[3]除染等業務
[4]特定化学物質業務
[5]石綿業務
[6]鉛業務
[7]四アルキル鉛業務
[8]有機溶剤業務

なお、これらのうち、一定の特定化学物質業務や石綿業務などについては、それらの業務に従事しなくなった場合でも実施しなければなりません。
このほか、情報機器作業(VDT作業)や振動業務などにおいては、特殊健康診断の実施が指導勧奨されています。

出典:職場のあんぜんサイト」(厚生労働省)

 

「一般健康診断」の対象者

一般健康診断とは職種に関係なく実施する健康診断で、すべての企業・労働者が対象になります。

一般健康診断の種類には、主に次の5つがあります。

 

一般健康診断の種類
対象者                                                              
①雇入時の健康診断
常時使用する労働者
②定期健康診断
特定業務従事者を除く常時使用する労働者
③特定業務従事者の健康診断
労働安全衛生規則第13条第1項第2項に挙げられる業務に常時従事する労働者
④海外派遣労働者の健康診断
海外に6か月以上派遣される労働者                                                                        
⑤給食従業員の検便
事業場附属の食堂又は炊事場における給食の業務に従事する労働者

 

 

常時使用する労働者とは?迷いやすい対象者をケース別に解説

 

パート・アルバイト・契約労働者

雇用形態にかかわらず、下記①②の両方を満たす場合には常時使用する労働者とみなされ健康診断の実施が必要です。

 

① 1年以上の長さで雇用契約をしているか、または、雇用期間を全く定めていないか、
あるいは既に1年以上引き続いて雇用した実績があること。
② 一週間あたりの労働時間数が通常の労働者の4分の3以上であること。
※ 上記の②にあたらない場合でも、①に該当し、同種の業務に従事する労働者の一週間の所定労働時間の概ね
2 分の 1 以上の労働時間数を有する者に対しても、健康診断を実施することが望ましいとされています。

出典:「各種健康診断について」(愛知労働局)

 

役員

役員は、使用者であり労働者の範囲に含まれないため、健康診断の実施義務はありません。

ただし、役員が使用者とみなされるかどうかは実態に即して判断されます。裁量権の有無や報酬体系などによって、労働者とみなされて健康診断の実施が必要になる場合もあります。

 

派遣労働者

派遣労働者は派遣元と雇用契約を結んでいるため、一般健康診断の実施義務は派遣元にあります。

 

ただし、有害業務に常時従事する派遣労働者に対する特殊健康診断は、業務と密接に関連するため派遣先に実施義務があります。

派遣元が実施すべき事項 第3章」「派遣先が実施すべき事項 第4章」(厚生労働省)をもとに編集して作成

 

従業員の配偶者・家族

従業員の家族や配偶者は「常時使用する労働者」に当てはまらないため、企業に健康診断の実施義務はありません。

ただし、特定健康診査や主婦健診など、被扶養者が健康診断を受けられる健康保険組合もあります。

 

 

健康診断はいつ実施する?

 

 

各健康診断の実施タイミングは下記の通りです。

 

雇入時の健康診断
入社時
定期健康診断
1年以内ごとに1回
特定業務従事者の健康診断
特定業務への配置換えの際、6か月以内ごとに1回
海外派遣労働者の健康診断
海外派遣前と海外派遣後に1回ずつ
給食従業員の検便
雇入れの際または当該業務への配置換えの際

 

雇入時健康診断は、その名の通り雇い入れの直前または直後に実施しますが、入社前であっても健診の実施は可能です。

 

原則的に雇入時健康診断を省略することはできませんが、本人が入社前の3ヵ月以内に医師の健診を受けていて、その結果を会社に提出したときは雇入時健康診断を省略できます。

 

ただし、本人が提出する診断書が必須の健診項目をカバーしている場合に限りますので注意が必要です。

 

また、原則として定期健康診断の間隔が1年以上空けることはできませんので、会社において定期健康診断の実施シーズンを変更する際には十分な注意が必要となります。

 

定期健康診断)

事業者は、常時使用する労働者(第四十五条第一項に規定する労働者を除く。)に対し、一年以内ごとに一回、定期に、次の項目について医師による健康診断を行わなければならない。

出典:労働安全衛生規則 第44条

 

 

健康診断の検査項目

 

 

雇入時健康診断の検査は11項目

雇入時健康診断の検査項目は労働安全衛生規則則第43条に定めがあり、実施が義務とされているのは以下の11項目です。

 

1.既往歴及び業務歴の調査

2.自覚症状及び他覚症状の有無の検査

3.身長、体重、腹囲、視力及び聴力の検査

4.胸部エックス線検査

5.血圧の測定

6.貧血検査(血色素量及び赤血球数)

7.肝機能検査(GOT、GPT、γ‐GTP)

8.血中脂質検査(LDLコレステロール,HDLコレステロール、血清トリグリセライド)

9.血糖検査

10.尿検査(尿中の糖及び蛋白の有無の検査)

11.心電図検査

 

定期健康診断、特定業務従事者健康診断の検査は一部省略可能

定期健康診断の検査項目は労働安全衛生規則則第44条、特定業務従事者健康診断の健診項目は第45条に定められています。
雇い入れ時の健康診断とほぼ同じ11項目となっており、(※)の項目は年齢による省略と、医師が必要ないと認めた場合に省略が可能です。

 

1.既往歴及び業務歴の調査

2.自覚症状及び他覚症状の有無の検査

3.身長、体重、腹囲、視力及び聴力の検査

4.胸部エックス線検査(※) 及び喀痰検査(※)

5.血圧の測定

6.貧血検査(血色素量及び赤血球数)(※)

7.肝機能検査(GOT、GPT、γ‐GTP)(※)

8.血中脂質検査(LDLコレステロール,HDLコレステロール、血清トリグリセライド)(※)

9.血糖検査(※)

10.尿検査(尿中の糖及び蛋白の有無の検査)

11.心電図検査(※)

 

雇入れ時健康診断の11項目との違いは?

雇入時健康診断では「4.胸部エックス線検査」となっているところが、定期健康診断、特定業務従事者健康診断では「4.胸部エックス線検査および喀痰検査」と変わります。

 

海外派遣労働者の検査は16項目

海外派遣労働者の検査項目は労働安全衛生規則第45条に定められています。第44条で定められている11項目に加えて、医師が必要とする際に実施する下記の5項目が定められています。

 

  • 腹部超音波検査
  • 尿酸値
  • B型肝炎ウイルス抗体検査
  • 血液型検査(ABO式、Rh式)※派遣前に限る
  • 糞便塗抹検査※帰国時に限る

 

 

〈よくある疑問まとめ〉健康診断は誰の義務?費用は?

 

 

健康診断の実施は誰の義務?

健康診断の実施は企業側(事業者)に義務があります。

 

企業は、労働安全衛生法第66条に基づき、労働者に対して、医師による健康診断を実施しなければなりません。この義務に違反した企業は、50万円以下の罰金が課せられます。

 

また、労働者は企業が行う健康診断を受けなければなりません。

 

健康診断を受診拒否したらどうなる?

労働者は健康診断を必ず受けなければなりません。

 

これは労働安全衛生法第66条1項にて「事業者は、労働者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、医師による健康診断を行わなければならない。」と定められています。

 

また、労働者の受診義務違反に対する罰則は設けられてはいませんが、もし受けなかった場合には企業が50万円以下の罰金を科せられる可能性があります。

 

そのため、企業は労働者に対して健康診断の受診を職務上の命令として、受診拒否する社員に対しては、懲戒処分の規則を設けていることが多いのです。

 

健康診断の費用負担は企業?労働者?

健康診断の実施は企業に義務付けられているものなので、健康診断の費用は企業が負担すべきものとされています。

以下の記事で健康診断の義務や費用について紹介しています。

 

健康診断の結果は、会社の「誰」が見られる?

では、健康診断の結果について、会社の「誰」が見ることができるのでしょうか。

健康診断の受診後、会社の中で健診結果を見ることが出来る存在は限られています。

以下の記事で解説していますので、あわせてチェックしておきましょう。

 

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人事なら知っておきたい健康診断の「保存期間」は?

特に人事担当者向けの内容になりますが、健診結果の取り扱いはとてもデリケートです。

また、結果については保存すべき期間も定められていますので、あわせてチェックしておきましょう。

 

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健康診断に関する要点まとめ

・健康診断には大きく分けて一般健康診断特殊健康診断がある

・一般健康診断とは、職種に関係なく行う健康診断

雇入時の健康診断定期健康診断は一般健康診断に含まれる

・雇入時の健康診断の対象は「常時使用する労働者

・「常時使用する労働者」は、一定の条件を満たしたパートやアルバイトでも該当する場合がある

・雇入時の健康診断は雇入れの直前または直後に実施する

・定期健康診断の対象も「常時使用する労働者

・定期健康診断は1年以内ごとに1回実施する

・定期健康診断の検査項目は雇入時の健康診断とほぼ同じだが、ある項目では基準に基づき省略が可能

・健康診断の実施は、企業に義務がある

・企業は、健康診断の受診を職務上の命令として命じることができる

・健康診断の費用は企業負担

 

さいごに確認しよう!学び度チェック

題:健康診断を拒否する社員に対して、会社はどのような対応をとれるか?

A.    何もできない

B.    職務上の命令として命じることができる

C.    来年の健康診断で代替できる

正解は…「B」!

企業は労働者に対して健康診断の受診を職務上の命令として命じることができ、受診拒否する社員に対しては、懲戒処分をもって対処することもできます。

 

 

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