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5分でわかる「飲酒」~やさしい衛生講話 第2回

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5分でわかる「飲酒」~やさしい衛生講話 第2回

(更新:

健康経営をがんばりたい、ねぎま産業(株)

 

従業員が50人を超え、従業員の労働災害の防止・健康増進について話し合う「衛生委員会」を毎月開いています。産業医のハシビロ先生が労働衛生・健康について講義をする「衛生講話」をのぞいてみましょう。

ねぎま産業(株)のキャラクターたちと一緒に健康について学ぶ「やさしい衛生講話」。

 

第2回のテーマは「飲酒」です。

 

衛生委員会
企業が、常時50人以上の労働者を使用する事業場ごとに設置するよう義務付けられている。労働者側委員や事業者側委員が衛生に関することを調査したり話し合ったりして、事業者に意見する場。毎月1回以上開催する。

 

衛生講話
産業医や保健師が労働衛生・健康について行う講義。従業員の健康教育の一環として、衛生委員会の中で実施する。

 

 

登場人物プロフィール

 

 

ハシビロ先生:ペンギン上司が「いい先生がいる」といって見つけてきた産業医。まじめで優しい。

 

 

 ペンギン上司:ちょっと毒舌。健康経営を目指して奮闘しているが、いつも詰めが甘い。

 

ニワトリ:平社員。ツッコミ担当。ペンギン上司によく振り回されている。

 

お酒の適量とは?

 

 

ペンギン上司:ではハシビロ先生、衛生講話をお願いします。

 

 

ハシビロ先生:今回のテーマは飲酒です。年末が近づき、忘年会シーズンまっただ中。お酒を飲む機会は多いのではないでしょうか。みなさんは普段、どのくらいお酒を飲みますか?

 

ニワトリ:ん~、飲み会の時にチューハイを1~2杯くらいかなぁ。

 

 

ペンギン上司:オレは毎日晩酌で500mlの缶ビール3本は飲んでいるかも。

 

 

ハシビロ先生:人によって飲酒の量・頻度はばらばらですよね。では、「お酒の適量」ってどれくらいだと思いますか?

 

ニワトリ:え…?お酒の適量なんて考えたこともないな…。

 

 

ハシビロ先生:お酒の適量には諸説ありますが、厚生労働省が定めるお酒の適量として「1単位」があります。お酒に含まれる純アルコール20g=1単位として、1日平均1単位がお酒の適量です。例えば、アルコール度数が5%のビールの場合、500ml缶1つで1単位となります。

 

厚生労働省e-ヘルスネット飲酒量の単位

 

この1単位を体重60kgの人が代謝するのに3~4時間、2単位だと6~7時間かかります。

 

お酒の適量・代謝にかかる時間には個人差があるため、女性やお酒の弱い方の適量はより少なく、代謝の時間はより長くなります。

 

アルコール健康医学協会 飲酒の基礎知識

 

 

(※1単位の例はアルコール健康医学協会「飲酒の基礎知識」による)

 

ニワトリ:じゃあ車通勤の人は、前日に飲みすぎると翌朝は酒気帯び運転になっちゃう…?

 

 

ハシビロ先生:その可能性は大いにあります。代謝には個人差もありますので、飲みすぎないようにしましょう。

 

 

ペンギン上司:1日平均ビール1本か…連日飲み会があると、普段飲まないトリでも適量をすぐにオーバーしそうだな。

 

飲みすぎるとどうなるの?

 

 

ペンギン上司:お酒の適量を超えて飲み続けるとどうなるのでしょうか。

 

 

ハシビロ先生:「酒は百薬の長」と言われるように、適切な飲酒量ならストレスの緩和・善玉コレステロールの増加などいい効果もあります。しかし、過度な飲酒は肝臓の病気やがん、アルコール依存症を引き起こす恐れがあります。

 

男性は1日平均純アルコール60g(日本酒換算で3合)を毎日5年以上飲むとアルコール性脂肪肝などの肝障害になると言われています。

 

ただし、こちらも個人差があるため、女性やお酒に弱い方はより少ない量(日本酒換算で1日平均2合)でも肝障害のリスクがあります。

 

アルコール性肝障害の診断基準の一つには、「長期(通常は5年以上)にわたる、1日平均純アルコール 60g 以上の飲酒(常習飲酒家)が主な原因である」があります。

 

国立国際医療研究センター肝炎情報センター アルコール性肝障害診断基準 2011年版

 

 

 

ペンギン上司:「常習飲酒家」かぁ…。オレ、晩酌でビールの500ml缶を3本前後飲むんだが、やっぱり体によくないのか…。

 

 

ハシビロ先生:そうですね。また、肥満の方の場合は1日平均純アルコール 60g以下でもアルコール性肝障害を起こしうるので注意してください。

 

国立国際医療研究センター肝炎情報センター アルコール性肝障害診断基準 2011年版

 

ニワトリ:肥満ってほんとにいいことないのな…。

 

 

ペンギン上司:もし肝障害になってしまったら、どうすればいいんでしょうか?

 

ペンギン上司:もし肝障害になってしまったら、どうすればいいんでしょうか?

 

 

ハシビロ先生:アルコール性肝障害にはさまざまな種類がありますが、たくさんお酒を飲む人が最初になる「アルコール性肝脂肪」の段階では、断酒をすることにより短期間で改善すると言われています。

 

しかし、不適切な飲酒が続くと、肝硬変、肝がん、食道静脈瘤と進行してしまう危険があります。

 

厚生労働省e-ヘルスネット アルコールと肝臓病

 

ニワトリ:がん…!?飲みすぎって怖い…。

 

 

ハシビロ先生:肝臓は「沈黙の臓器」と言われ、初期の肝障害の場合自覚症状が現れにくいのが特徴です。健康診断の結果も参考にし、不安があれば医療機関を受診するとよいでしょう。

厚生労働省e-ヘルスネット アルコールと肝臓病

 

正しいお酒の飲み方

 

 

ペンギン上司:お酒を飲むときに注意することはありますか

 

 

ハシビロ先生:飲酒の際の注意点はいくつかありますが、今回はその中でも四つのポイントを「おくゆき」という語呂合わせでご紹介しますね。

 

 

おつまみを食べながらのむ

空腹での飲酒は、アルコールが吸収されやすいのですぐに酔ってしまいますし、胃腸の粘膜を荒らしてしまいます。そのため、お酒を飲む際はおつまみを食べながら飲むようにしましょう。

 

おつまみは、肉類、魚介類、豆腐などの大豆製品、卵やチーズなど低カロリー、高たんぱくなものがおすすめです。また、枝豆や野菜類はアルコールの代謝を助けるビタミンやミネラルを含むため、積極的にとるようにしましょう。

 

くすりと一緒に飲まない

お酒と薬を一緒に飲んでしまうと、薬の効果がなくなったり、逆に強く効きすぎたりしてしまうので、一緒に飲まないようにしてください。

 

ゆっくり飲む

「一気飲み」のような短時間での大量飲酒は、急性アルコール中毒を引き起こし、最悪の場合死に至る可能性があります。

 

空腹を避けてゆっくりと飲むようにしましょう。

 

休肝日をつくる

休肝日を定期的につくることも大切です。アルコール性肝障害にならないためにも、週2日は休肝日をつくるとよいでしょう。

 

「おつまみを食べながらのむ・薬と一緒に飲まない・ゆっくり飲む・休肝日をつくる」のそれぞれの頭文字をとって、「おくゆき」です。ぜひ覚えてくださいね。

 

ちなみに、アルコール健康医学協会のホームページでは、正しいお酒の飲み方として「適正飲酒の10か条」が紹介されています。

 

 

ペンギン上司:お酒のつまみはいつも魚だから、「お」はばっちりだな!

 

ニワトリ:ペンギン上司の場合、むしろ「き」の休肝日の方が重要ですよ!

 

 

ハシビロ先生:そうですね。お酒は節度を守って楽しく飲むのが一番です。自分にとっての適量を知り、適切な飲酒を心がけてくださいね。

 

 

ペンギン上司:肝に銘じます!!!

 

★「やさしい衛生講話」は原則月1回のペースで連載予定です。

 

イラスト/とりのささみ。 (@torinosashimi)  ・ 文/サンポナビ編集部

 

参考)

アルコール健康医学協会 飲酒の基礎知識

厚生労働省 健康日本21(アルコール)

国立国際医療研究センター肝炎情報センター アルコール性肝疾患

国立国際医療研究センター肝炎情報センター アルコール性肝障害診断基準 2011年版

厚生労働省e-ヘルスネット アルコールと肝臓病

 

 

 

 

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