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VDT症候群とは?症状や治療法、予防法について解説

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VDT症候群とは?症状や治療法、予防法について解説

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サンポナビ編集部

現代はパソコンやスマホを利用して仕事をする機会が増えたことで、VDT症候群に悩まされることも多くなりました。さらにVDT作業についての労働衛生管理のためのガイドラインが、厚生労働省から示されました。

 

この記事では、VDT症候群の原因や症状、治療法について解説します。さらに厚生労働省が示したガイドラインをもとに、具体的な予防法をわかりやすく解説するので、参考にしてください。

 

VDT症候群とは

 

VDT作業でさまざまな症状や不調を抱える状態をVDT症候群とよびます。VDTは「Visual Display Terminals」の略で、ディスプレイやキーボードなどのパソコン装置を使ってデータ入力や文章作成プログラミングなどを行うことです。

 

VDT症候群の原因

VDT 症候群の原因として、次のような心身への影響が考えられます。

 

  • 長時間画面を見ることで眼にかかる負担
  • 同じ姿勢を長時間続けることで起こる首や肩、背中、腰への負担
  • 脳が受けるストレスによる自律神経の乱れ

 

以上のようにVDT作業は、心身にさまざまな影響を与えるため、従業員が悩まされる症状も多岐にわたります。

 

VDT症候群で悩まされる症状

 

 

VDT 症候群になると、次のような症状に悩まされます。

 

  • 眼の症状
  • 骨格筋系の症状
  • 精神・自律神経症状

 

各症状について、詳しく解説します。

 

眼の症状

眼の症状はVDT症候群のなかでも、とくに多くのVDT作業者に見られる症状です。北里大学病院で413名のVDT作業者を対象に行われた検診の結果によると、一日平均5.83時間のVDT作業を続けた場合、77.7%の人が目のかすみや疲れ、視力低下などの症状を訴えました。

 

引用:VDT検診|小野祐子・北里大学病院眼科

 

上記のアンケート結果からは、眼の症状を訴えたVDT作業者が最も多いことがわかります。また同研究では、眼の疲れなどの自覚的な訴えは、視力や屈折検査、瞳孔反応などの医学的検査の結果にも相関することも報告されています。

 

骨格筋系の症状

VDT症候群における骨格筋系の症状には、肩こりや首の痛み、腰痛などが考えられます。先述の北里大学病院の研究データでは、61.7%が頚肩腕症状を訴えており眼の症状についで2番目に多い結果でした。

 

頚肩腕症状とは、首や肩、腕に痛みを感じる症状で、悪化するとしびれや筋力低下につながることもあります。予防するためには、パソコンの使用時間を減らしたり、頻繁に休憩をとったりすることが大切です。

 

精神・自律神経症状

VDT症候群で精神や自律神経に問題がおこると、不安感やイライラ感に悩まされたり、吐き気を感じたりすることがあります。自律神経は内臓の働きや血圧、発汗などさまざまな機能を調整する働きがあります。

 

そのため、VDTが原因で自律神経が乱れると、食欲不振や便秘、高血圧、発汗異常などの症状が現れることもあります。

 

職場における目の健康については以下の記事も参考にしてください。

 

あわせて読みたい関連記事

VDT症候群の治療法

 

VDT症候群を治療する際は、病院から眼に潤いを与える点眼薬や体の緊張をほぐす飲み薬が処方されます。また、それと同時に、VDT作業中に休憩を取ったり、体操をして体をほぐしたりすることも大切です。

 

仕事が忙しくてなかなか休憩を取れない場合は、個人的な取り組みだけではなく、職場全体で仕事量の配分を見直したり、作業の効率化を検討したりすることも大切です。職場でできるVDT症候群の予防法については、次項で詳しく解説します。

 

職場でできるVDT症候群の予防法

 

 

職場でできるVDT症候群の予防法について、次の3つにわけて解説します。

 

  • 作業環境の整備
  • 作業管理
  • 健康管理

 

厚生労働省発行の「情報機器作業における労働衛生管理のためのガイドラインについて」をもとに解説するので、ぜひ参考にしてください。

 

作業環境の整備

作業環境を整備する場合は、次の5項目の改善を検討してみてください。

 

  • 照明や彩光
  • デスクトップ型パソコン
  • ノート型パソコン
  • 椅子
  • デスク

 

各項目について重要な部分を解説します。

 

照明や彩光

照明や彩光については、次の点に注意しましょう。

 

  • 場所にって明暗の差が出いように照明や彩光の明るさを調整して、まぶしくないようにする
  • ディスプレイのあるデスクでは照度を300ルクス以上とする
  • 書類やキーボード面の明るさを周囲と同じくらいにする
  • ディスプレイ画面に太陽光が直接当たる場合は、ブラインドやカーテンで直射日光を遮る
  • 不快感をともなうようなまぶしさ「グレア」を避ける

 

デスクトップ型パソコン

デスクトップ型パソコンを扱う場合は、ディスプレイやキーボード、マウスについて適切なものを使用することが大切です。

 

  • ディスプレイ:作業を負担なく遂行できる画面サイズを使用し、コントラストや画面の位置、前後の傾き、左右の向きを調整できるものが望ましい
  • キーボード:文字が読みやすく、位置が作業者によって調整できるものがよい
  • マウス:使用者の手に適した形状や大きさのもので、操作性に優れたものを使用する

 

ノート型パソコン

ノート型パソコンを使用する際の注意すべき点は、デスクトップ型パソコンとほとんど同じです。ただしノート型は、デスクトップ型とは違い、ディスプレイとキーボードを分離できません。

 

そのため長時間使用する際には、外付けディスプレイもしくはキーボードを利用することが望ましいです。

 

また多くのノート型パソコンにはマウス機能が内蔵されていますが、必要に応じて外付けのマウスを利用するのもVDT作業の負担軽減につながります。

 

椅子

椅子については、次の条件を満たすものを使用しましょう。

 

  • 安定していて、移動できる
  • 体型に合わせて座面の高さが調節できる
  • 背もたれがある(傾きを調整できることが望ましい)
  • ひじ掛けがある

 

デスク

デスクについては、次の条件を満たすものを使用しましょう。

 

  • キーボードや書類、マウス、その他作業に必要なものを配置できる広さがある
  • 脚の周囲のスペースが窮屈ではないくらいの広さを確保できる
  • 机の高さを利用者の体型に合わせて調整できる

 

その他

その他にも、電子機器から不快な音が出る場合は、低減措置を講じるようにしましょう。換気や温度・湿度の調整、静電気除去、休憩設備の確保など事務所衛生基準規則に定められた措置を講じることも大切です。

 

作業管理

作業を進める際は、以下を管理してVDT症候群を予防しましょう。

 

  • 作業時間と休憩時間
  • 作業姿勢
  • ディスプレイの位置

 

各項目について説明します。

 

作業時間と休憩時間

体に負担をかけないためにも、1日の作業時間について以下の項目を守りましょう。

 

  • 連続の作業時間が1時間を超えないようにして、10~15分程度の休憩を設ける
  • 1時間の作業時間内にも1~2回の小休止を設ける
  • 従業員の特性や能力に配慮して無理のない作業量を配分する

 

作業姿勢

作業姿勢については、座った姿勢の合間に立った姿勢でできる作業を加えることが望ましいです。また座った姿勢で作業を続ける場合、次の姿勢を心がけましょう。

 

  • 椅子に深く腰掛けて背もたれに背中を当てる
  • 履物の足裏全体を床に接した状態にする(必要に応じてフットレストなどを使用する)
  • 膝の裏側と椅子の間には手の指が入る程度の余裕を作る

 

ディスプレイの位置

ディスプレイについては、次の点に配慮しましょう。

 

  • ディスプレイと眼の距離を40cm以上にする(見えづらい場合はメガネやコンタクトレンズを使う)
  • ディスプレイと眼の高さをほぼ同じ高さに合わせる
  • ディスプレイとキーボードもしくは書類との間の視距離について、なるべく差を少なくする
  • 作業者に合わせたディスプレイの位置や角度、明るさに調節する
  • ディスプレイに表示する文字の高さを3mm以上にすることが望ましい

 

健康管理

VDT症候群を予防するためにも、以下の健康への取り組みを行うことが大切です。

 

  • 配置前健康診断
  • 定期健康診断
  • 健康相談
  • 就業前後の体操

 

それぞれについて解説します。

 

配置前健康診断

新たにVDT作業に携わる従業員には、配置前の健康診断を実施しましょう。配置前健康診断の前後に一般健康診断が実施される場合は、一緒に行っても問題ありません。

 

定期健康診断

VDT作業者に定期健康診断を実施して、VDT症候群による不調や症状の早期発見に努めましょう。定期健康診断は1年以内に1回、VDT作業の区分に応じて必要な検査を実施する必要があります。一般の定期健康診断と一緒に実施しても差し支えありません。

 

健康相談

VDT作業者が気軽に健康相談を受け、慢性疲労やメンタルヘルスなどに関するアドバイスを受けられる機会を設けましょう。パートタイマーも含めて健康相談ができるような環境を整えることが望ましいです。

 

就業前後の体操

VDT作業の前後には体操やストレッチ、リラクゼーション、軽い運動を行うことが望ましいです。

 

VDTガイドラインについては次の記事も参考にしてください。

 

 

あわせて読みたい関連記事

パソコン作業で目の疲れを軽減するための指標「VDTガイドライン」とは?

職場環境を見直してVDT症候群を予防しよう

 

 

従業員がVDT症候群になると、眼や骨格筋、精神、自律神経の不調による症状に悩まされる可能性があります。作業環境の整備や作業管理、時間管理を行うことで、VDT症候群を予防することが大切です。

 

今回は厚生労働省の資料をもとに、職場環境を整える具体的な方法を紹介したので、従業員のVDT症候群を予防するためにもお役立てください。

 

この記事の著者

サンポナビ編集部

サンポナビ編集部

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