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社員の生産性をどう向上させる?ワークエンゲージメントの活用方法

(更新:

サンポナビ編集部

従業員の仕事に対する「エンゲージメント」を向上させることは、生産性の向上だけでなく、メンタルヘルス不調や病気の予防にもなることをご存知でしょうか?

 

近年では、ワークエンゲージメントの活用で健康経営に取り組む企業も増えてきており、注目が集まっているのです。

 

「ワークエンゲージメント」と健康経営について解説します。

 

ストレス対策と何が違う?「ワークエンゲージメント」によるストレスマネジメント

 

ストレスマネジメントとしても注目されている「ワークエンゲージメント」とは?

「ワークエンゲージメント」とは、ウィルマー・B・シャウフェリ教授(オランダ ユトレヒト大学)によって提唱された、ポジティブメンタルヘルスの中心的な概念のひとつです。

 

ストレス対策として効果が期待できることから、近年では注目が集まっています。

 

ワークエンゲージメントを構成するには以下の「3つの要素」があります。

 

ワークエンゲージメントを構成する「3つの要素」

 

・活力:積極的に仕事に取り組む

・熱意:仕事へのやりがい

・没頭:仕事への熱中

 

つまり、従業員の仕事に対する「エンゲージメント」を支援することで、心身の健康向上を目指す取組みなのです。

 

そのためには、従業員一人ひとりが仕事に対して「有意味感」や「満足感」を得られるように取り組むことや、そのための職場づくりも欠かせません。

 

ここが、一般的なメンタルヘルス対策である「ストレス者への対応」(ネガティブメンタルヘルス)とワークエンゲージメントは異なり、「健康でいきいき働く」(ポジティブメンタルヘルス)が基本概念となっています。

 

健康意識の高い企業では「ワークエンゲージメント」の考えをを取り入れた活動を導入している企業も増えています。

 

「ワークエンゲージメント」が一般的なストレス対策と異なる点

企業における一般的なストレス対策といえば「ストレスによって不調になってしまった(しまいそうな)従業員」へのケアが中心でした。

 

しかし、ワークエンゲージメントはそうした「メンタル不調のケア」とは異なり、従業員の「エンゲージメント」を支援すること、そのための職場環境を整備することでメンタルヘルス不調を未然に予防する取組のことです。

 

つまり、ワークエンゲージメントとは「元気な人」も含めたメンタルヘルス対策といえます。

 

生産性の向上だけではない「ワークエンゲージメント」が注目される理由

 

 

「ワークエンゲージメントを高める」ことのメリット

「ワークエンゲージメント」研究の第一人者である慶應大学の島津明人教授の研究によれば、ワークエンゲージメントが高い人は、心身の健康だけでなく、仕事・組織への満足感が高くなること、離職・転職・休業が減少すること、積極的に業務に携わる・創造性が高まることなどが挙げられています(※)。

 

つまり、職場のワークエンゲージメントを高めることのメリットとは、従業員の「モチベーションアップ」による生産性の向上だけでなく、病気・離職のリスクを低減させることにも期待ができることなのです。

※出典:労働者健康安全機構「産業保健21」第98号

 

ストレスチェックを使ってエンゲージメントを測定する

ワークエンゲージメントの概念やメリットが分かったところで、次に職場の「エンゲージメント」の測定方法を見てみましょう。

 

ワークエンゲージメントを測定するには「新職業性ストレス簡易調査票(ストレスチェックシート80項目版)」を利用する方法があります。

 

「新職業性ストレス簡易調査票」は、いわゆる一般的な57項目のストレスチェックシートに、エンゲージメントを測定する23項目を追加した合計80項目のシートです。

 

この80項目版ストレスチェックシートを利用することで、従業員の「仕事に関する意識」や課題が「見える化」できますので、結果をもとにアプローチしていくと良いでしょう。

 

「新職業性ストレス簡易調査票」は厚生労働省のリーフレット「職場環境へのポジティブアプローチ」にて詳細を閲覧することが可能です。

 

また、高機能なストレスチェックでは「プレゼンティーズム(出社しているにもかかわらず、心身の健康上の問題でパフォーマンスが落ちている状態)」が測定できるものもあるため、まずはストレスチェックを通じて社員のパフォーマンスを知ることが大切です。

 

あわせて読みたい関連記事

 

職場で「ワークエンゲージメント」を活用するには?

 

 

「健康経営優良法人」の認定企業で活用されているワークエンゲージメント

近年では、メンタルヘルス対策に力を入れる企業も増加しています。

 

そのきっかけとなったのが、2015年にスタートした「ストレスチェック制度」でしょう。

 

ストレスチェック制度の義務化により、企業が従業員のメンタルヘルスと向き合う体制が構築されてきたといえます。

 

また、2016年には経済産業省の認定制度「健康経営優良法人」がスタートしており、認定企業の中には、ワークエンゲージメントを有効活用した事例も多数あります。

 

このように「いきいきとした職場」の実現は、メンタルヘルス対策のみならず、結果として「生産性の向上」「休職予防」「離職者」の対策としても効果が期待できるのです。

 

ワークエンゲージメントの活用事例を参考にして健康経営に取り組む

ワークエンゲージメントを活用した健康経営には、人事担当者・経営者がワークエンゲージメントについて情報を収集し、自社の職場環境に合った取組みを行うことが大切です。

 

そのためには、これまでに出てきたワークエンゲージメントに関する研究結果や、実際にワークエンゲージメントを活用している事例を探すことが効果的といえます。

 

事例については、経済産業省の健康経営優良法人の認定企業を参考にされてみてはいかがでしょうか。健康経営優良法人の認定企業では、ワークエンゲージメントを活用した好事例が多数掲載されています。

 

その他にも、ワークエンゲージメントやポジティブメンタルヘルスをテーマに、行政が主催しているセミナーに参加することも有効です。

 

いかがでしたでしょうか。

 

ワークエンゲージメントを高め、健康経営に活用することには大きなメリットがあります。

 

ストレス対策について課題を感じている場合には、まず職場のストレス対策が先決になりますので、自社の課題を産業保健スタッフと協力して、職場環境改善の視点から課題に取り組むことがよいでしょう。

 

この記事の著者

サンポナビ編集部

サンポナビ編集部

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