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二次検査の受診勧奨とは?受診率が低い理由や保健師活用のメリットを解説!

(更新:

片桐はじめ

「健康診断で『要精密検査』の従業員がなかなか二次検査を受けてくれない…」

「受診勧奨のメールを送っても返事がない…」

 

二次検査の受診率の低さに悩む人事労務担当の方も多いのではないでしょうか。受診しない理由や、保健師との連携方法を理解することで、従業員が納得して受診できる勧奨方法がわかるでしょう。

 

本記事では、二次検査の受診率向上に向けた対策や、保健師との効果的な連携方法を解説します。

 

 

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二次検査の受診勧奨とは?

 

健康診断結果 要精密検査

受診勧奨とは、健康診断結果で基準値を超える数値や病気の兆候がみられた従業員に対し、二次検査の受診を促すことです。

受診勧奨の対象となる範囲や、企業が果たすべき義務など、基本的なポイントを解説します。

 

受診勧奨の対象範囲

二次検査の受診勧奨の対象となるのは、健康診断結果の判定区分のうち、「C:要再検査・生活改善」と「D要精密検査・治療」の2つです。

 

【判定区分】

A:異常なし

B:軽度異常

C:要再検査・生活改善

D:要精密検査・治療

E:治療中

 

※医療機関ごとに判定区分の名称は異なります。「C:要再検査・生活改善」をC1、C2、C3と細分化している場合もあります。

 

二次検査が必要となる項目は、生活習慣病リスクのあるものが多くを占めます。

厚生労働省の調査では、何らかの異常がある割合が高い上位3項目は血中脂質、血圧、肝機能です。異常がみられた項目について、CやDの判定がついた従業員に対し、受診勧奨を行います。

 

「B:軽度異常」であっても、自覚症状がある場合や年々数値が悪化している場合には、受診勧奨を行うことが望ましいです。

 

※参考:判定区分 2025年度版│公益社団法人日本人間ドック・予防医療学会

健康診断種類別・有所見率の推移(厚生労働省)を編集して作成

 

企業が負う受診勧奨の義務

二次検査の受診は、法律上、企業に明確な義務が課されているわけではありません。

労働安全衛生法では、健康診断結果から受診を勧奨することが適当であるとしていますが、努力義務にとどまっています。

 

ただし、企業には安全配慮義務が課されています。受診勧奨をせずに病気の兆候を放置すると、従業員の健康状態が悪化しかねません。

その結果、安全配慮義務違反として責任が追及される可能性があります。

 

受診勧奨は努力義務にとどまるからといって放置するのではなく、従業員の健康を守るため、積極的に働きかけることが大切です。

 

健康診断結果に基づき事業者が講ずべき措置に関する指針(厚生労働省)を編集して作成

 

従業員が二次検査を受けたがらない3つの理由

 

二次検査の受診勧奨は、従業員が受けたがらない理由を把握した上で、適切な対策を講じることが重要です。従業員が二次検査を受けたがらない主な理由は、以下の3つです。

 

  • 自覚症状がない
  • 費用や時間の負担が大きい
  • どこで検査を受ければよいかわからない

 

自覚症状がない

健康診断で「要精密検査」と判定されても、自覚症状がなければ受診につながりにくいでしょう。特に、生活習慣病の初期段階では症状があらわれにくく、軽視されがちです。

 

例えば、「コレステロール値が高い」と結果が出ても、初期段階では頭痛や息切れなどの症状がほとんどありません。そのため、「自覚症状が出てから受診すれば十分」と考える従業員が多いのです。

 

費用や時間の負担が大きい

一次健康診断は企業の負担で受けられますが、二次検査は従業員の自己負担となるケースが多く、受診をためらう要因につながります。

 

また、仕事の忙しさから勤務中に時間を確保できないこともあります。さらに職場が業務を優先する雰囲気だと特に受診しにくいでしょう。

平日のみ対応の医療機関も多く、わざわざ休日に受診することに抵抗を感じて受診を後回しにする従業員もみられます。

 

どこで検査を受けるべきか分からない

検査をどこで受けるべきか分からず、受診をためらう従業員も少なくありません。二次検査を受ける医療機関は、従業員が任意で選べます。

定期健康診断を受けた医療機関やかかりつけ医で受けるのが一般的ですが、どこを受診すべきかを迷ってしまい、受診につながらないケースがあります。

 

また、二次検査を受ける医療機関を指定している企業もあるでしょう。

かし、その情報が従業員に正しく伝わっていなかったり、アクセスしにくい場所にあったりすると、受診につながりにくい可能性があります。

 

【人事労務担当者向け】二次検査の受診勧奨のポイント

 

人事労務担当者が二次検査の受診勧奨を行うときのポイントは、次の3つです。

 

  • 受診しやすい環境を整える
  • 二次検査の必要性と情報を伝える
  • 受診勧奨方法を社内で統一しておく

 

受診しやすい環境を整える

従業員の時間や費用の負担を軽減する制度を整備し、二次検査の受診率向上につなげます。

 

時間の負担を軽減するには、就業時間内での受診を認める制度が必要です。例えば、時間単位の有給休暇制度を設けると、勤務中に受診しやすくなります。また、受診のための特別休暇を期間限定で付与し、受診を促す方法もあります。

 

費用の負担を軽減するには、検査費用の一部または全額を負担する制度が有効です。加入している健康保険組合によっては、費用の助成を行っているところもあるため、確認してみましょう。

 

また、受診先の医療機関リストを作成して一次健康診断結果とともに配布するなど、情報提供を行うことも大切です。医療機関のリストは、従業員の居住地を考慮した機関をピックアップするとよいでしょう。

 

一部の検査や特定保健指導で利用可能な「労災保険二次健康診断等給付」

 

労災保険の給付を活用することで、従業員が一部の二次検査を無料で受けられる「労災保険二次健康診断等給付」があります。脳血管疾患や心臓疾患の発症リスクが高い従業員に対して、二次検査と特定保健指導を無料で提供するものです。

 

対象者と検査項目は以下の通りです。

 

【対象者】

①一次健康診断の結果、以下のすべての検査項目で異常所見が認められた人

  • 血圧検査
  • 血中脂質検査
  • 血糖検査
  • 腹囲の検査またはBMI(肥満度)の測定

②脳または心臓疾患の症状を有していないこと

③労災保険の特別加入者ではないこと

 

【検査項目】

  • 空腹時血中脂質検査
  • 空腹時血糖値検査
  • HbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)検査
  • 負荷心電図検査または胸部超音波検査(心エコー検査)のいずれか一方の検査
  • 頸部超音波検査(頸部エコー検査)
  • 微量アルブミン尿検査(一次健康診断の尿蛋白検査で疑陽性者または弱陽性者のみ)

 

以上の条件を満たせば対象の検査が無料で受けられることを従業員に周知し、受診を促しましょう。支給に当たっては、受診先や請求期間(一次健康診断から3か月以内)にルールがあります。受診先や指定機関の場所などを含めて従業員に説明し、スムーズに受けられる仕組みを整えておきましょう。

 

労災保険二次健康診断等給付(厚生労働省)を編集して作成

 

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二次検査の必要性を伝える

従業員の健康意識を高めるため、二次検査の必要性について発信しましょう。

 

社内報で二次検査の重要さを伝える記事を掲載したり、年次研修で健康管理に関するテーマを盛り込んだりする方法があります。例えば、離職や休職がキャリアに与える具体的な影響を伝え、従業員に健康管理の大切さを意識づけましょう。

 

また、個別で受診勧奨をする場合は、受診をためらう理由を丁寧にヒアリングし、事情を理解しようとする姿勢を示しましょう。その上で、検査結果の意味やリスク、受診のメリットを伝えて納得してもらうことが重要です。

 

二次検査の必要性と情報を伝えることで、自律的な健康管理を意識づけ、受診率アップにつながります。

 

受診勧奨方法を社内で統一しておく

 

受診勧奨の方法について、オペレーションを統一して効率的に対応できるようにしておきましょう。

担当者の役割分担や勧奨のタイミング、使用する文書フォーマットの標準化が必要です。例えば、以下のように勧奨の回数に応じて段階的に対応を変えるなど、方法を決めておきましょう。

 

  • 1回目:書面またはメールでの受診勧奨
  • 2回目:電話での勧奨
  • 3回目:保健師面談を行う

 

二次検査の受診勧奨を行う際の例文・フォーマット

 

二次検査の受診を促すには、文書による方法が広く活用されています。効果的な勧奨につなげるためには、従業員の受診に対する心理的な抵抗に配慮した文章が有効です。従業員を尊重し、受診のための不安を取り除くような表現として、以下のポイントを心がけるとよいでしょう。

 

わかりやすく具体的に:「○○の数値が高いのは、生活習慣病のリスクが高まっている合図です」

受診のメリットを伝える:「今から治療すれば大がかりな入院や手術を避けられる可能性が高い」

できることを説明する:「血圧を下げるためには適度な運動が必要です。『1駅だけ歩く』『週1回だけウォーキングをする』など小さなことから始めてみましょう」

 

上記の3つのポイントを意識しながら、異常がみられた項目毎にフォーマットを準備しておくとよいでしょう。厚生労働省の例文を参考に、脂質異常のフォーマット例を紹介します。

 

脂質異常(コレステロール値など)

 

※出典:健診結果とそのほか必要な情報の提供 (フィードバック文例集)(厚生労働省)

 

脂質異常に関する項目は、上記の表の①②が受診勧奨の対象となります。①と②でよくあるケースについて文例を紹介します。

 

【①:LDL(悪玉コレステロール)が180mg以上】

脂質検査の結果、悪玉コレステロールが非常に高いことがわかりました。この値は、

一般的にLDL100mg/dl未満の人と比べて、心筋梗塞や狭心症に約3~4倍なりやすいことがわかっています。この健診結果を持って、すぐにかかりつけの医療機関を受診してください。

 

【②:LDL(悪玉コレステロール)が140mg/dl以上180mg/dl未満】

脂質検査の結果、悪玉コレステロールが高いようです。この値は、一般的にLDL100mg/dl未満の人と比べて、心筋梗塞や狭心症のリスクが約1.5倍~2倍高まります。

改善のためには、バターやラードなどの動物性の脂肪を控え、オリーブオイルなどの植物系の油や魚をよくとるようにしましょう。また、コレステロールの多い食べものも控えることがおすすめです。

まずは、自分でできる生活改善からスタートし、保健センターなどで保健指導を受ける方法があります。できれば3~6か月後にかかりつけの医療機関で再検査を受けるようにしてください。

特に、あなたが糖尿病や腎臓病、心血管病、高血圧である場合は、動脈硬化が進みやすいです。心筋梗塞や狭心症になりやすい状態かもしれませんので、早めに再検査を受けてください。

 

健診結果とそのほか必要な情報の提供 (フィードバック文例集)(厚生労働省)を編集して作成

 

産業保健師と連携して受診勧奨を行うメリット

 

 

産業保健師と連携して受診の必要性を説明することで、受診率向上につながります。産業保健師を活用するメリットについて解説します。

 

人事労務担当者の負担を軽減し、勧奨漏れを防ぐ

人事労務担当者は、健康診断業務のほかにもさまざまな業務を抱えています。保健師が個別にチェックすることで勧奨漏れを防ぎ、人事労務担当者の負担を減らせるでしょう。

 

保健師が健康診断結果をチェックすることで、二次検査が必要な従業員に漏れなく勧奨しやすくなります。見落としがちなケースもフォローできるでしょう。

 

個別面談で受診したがらない従業員の行動変容を促す

 

保健師が従業員と個別に面談することで、二次検査をためらう従業員に重要性を理解してもらい、受診につなげます。

 

健康診断結果だけを見ても、「内容がよくわからない」と感じる従業員も少なくありません。保健師がわかりやすく説明することで、従業員の行動を促します。

 

例えば、「血糖値が高い」という結果に対して、「現在の数値では糖尿病予備軍の状態で、このまま放置すると重篤な合併症を引き起こす可能性があります」と説明します。

リスクだけでなく、「早めに治療することで重症化を防げます」と早期治療のメリットを伝えることで、不安の解消も行います。

 

専門家である保健師からの詳しい説明と親身なアドバイスにより、二次検査の必要性を理解し、受診率向上につながるでしょう。

 

保健師面談の様子は、以下のイメージ動画をご覧ください。

 

 

適切な支援方法につなげられる

保健師が個別に面談することで、健康診断結果には表面化していない問題も把握でき、適切な支援につなげやすくなります。睡眠やストレス、生活習慣などは健康診断結果だけでは把握できません。表面化していない問題を把握することで、有所見の背景にある要因を特定しやすくなります。

 

例えば、健康診断で「高血圧」とされた従業員の背景には、睡眠不足やストレスが関係していることもあるでしょう。保健師面談で、「異動して勤務時間が変わってから睡眠不足が続いている」「上司とうまくいかずストレスが増えた」など、個別の要因を把握できます。

 

その上で、睡眠不足が続いているなら生活習慣のアドバイスを保健師が行い、睡眠障害が疑われる場合は医療機関の受診を勧めます。また、ストレスが原因なら、産業医と連携したり、外部の相談窓口の利用を案内したりすることもあるでしょう。

保健師が従業員に必要なサポートのコーディネーター役としても活用できるため、適切な支援につなげられます。

 

二次検査の受診勧奨は産業保健師と連携した対応が効果的

 

二次検査の受診率を向上させるためには、人事労務担当者が主体となり、人事制度の整備や社内への周知徹底といった対策を講じることが重要です。また、従業員一人ひとりが二次検査の必要性に納得して行動するためには、保健師との連携が有効です。

 

株式会社エムステージでは、必要なときに必要なだけ保健師との面談ができる「Sanpo保健室」をご提供。保健指導のプロである保健師から受診勧奨を行います。

面談当日に面談報告書が発行されるため、保健指導後の後追いなど、人事労務担当者がどのように対応すればよいかが明確にわかります。即日利用開始でき、最短2営業日後に面談実施が可能です。

ご相談は無料で承っていますので、ぜひご相談ください。

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