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職域接種で注目される「企業内診療所」の設置・開設で知っておきたいこと

(更新:

サンポナビ編集部

新型コロナワクチン職域接種に関するニュースとともに注目される「企業内診療所」。

 

ワクチン接種が可能な医師人材の確保・提供を行う株式会社エムステージには、企業内診療所の設置・開設に関する問い合わせが急増しています。

 

本記事では、職場内診療所を設置・開設する際に知っておきたいことを紹介していますので、事前にチェックしておきましょう。

 

企業内診療所とは?設置・開設するメリットとデメリット

 

ワクチンの職域接種で注目される「企業内診療所」とは

職域接種の会場として企業から注目される「企業内診療所」。

 

企業内診療所とは、その名の通り企業の中に設置される診療所のことであり、医師が医療行為を行うことが可能な施設です。

 

主に大企業(大規模な事業場)において設置されていることが多く、従業員の少ない中小規模の企業に企業内診療所が設置されているケースは少ないと言われています。

 

企業内診療所には医師や看護師が在籍し、従業員の体調不良等に対応することで、健康を確保する役割を持っています。

 

また、企業によって診療所の規模や設備の内容はさまざまであり、最低限の設備で運営されている企業内診療所もあれば、薬剤師を配置し、薬の処方にまで対応する場合もあります。

 

企業内診療所を設置するメリットとデメリット

企業内診療所は、従業員やその家族の健康保持を目的とした福利厚生の施設です。

 

よって、企業内診療所の設置により、従業員がすぐに診察を受けられることは大きなメリットになります。

 

一方で、企業内診療所を運営することにはコストがかかるため、あまり診療所が活用されていない場合等では、事業者にとって費用面のデメリットが発生します。

 

また、営利を目的として企業内診療所を設置・運営することは原則的に禁じられています。

 

こうした理由もあり、企業内診療所の運営コストを削減するため、大企業であっても閉院を選択するケースも増えているようです。

 

しかし昨今、新型コロナウイルスワクチンの接種会場として、新たに企業内診療所を開設するケースも登場しています。

 

企業内診療所を設置・開設する際のルールと届出

 

 

職域接種のために企業内診療を開設・設置する際のルール

企業内診療所を開設する際には、いくつかの基準を満たしていることと、適切に届出を出す必要があります。

 

ですので「今日からここが会社の診療所です」という風に企業内診療所を開設し「ここで職域接種を実施します」とすることはできません。

 

診療所の設置に関しては医療法(第7条第1項)にて、施設の管理者として医師等を指定することを定めています。

 

また、医師や歯科医師、助産師以外の者が診療所を開設する場合には、都道府県知事の許可を得ていなければなりません。

 

しかし、医療法上の臨時的な措置として、そのルールが一部変更され「職域接種のための診療所の開設」であれば比較的容易に診療所を開設することが可能になりました。

 

●医療法第7条(一部改変)

 

医師および歯科医師以外の者が診療所を開設しようとするとき、または助産婦でないものが助産所を開設しようとするときは、開設地の都道府県知事の許可を受けなければならない。

 

企業内診療所を開設・設置する際の届出は?

医療法の臨時的な措置については、厚生労働省の「新型コロナウイルス感染症に係るワクチンの迅速な接種のための体制確保に係る医療法上の臨時的な取扱いについて」にて、詳細が確認できます。

 

この臨時措置では、職域単位でのワクチン接種を目的とし、新たに一時的に開設される診療所、つまり「職域接種診療所」の設置について、届出に関するルール等を緩やかなものにしています。

 

具体的には条件を満たせば“医師、歯科医師等でなくても開設ができる”ことと、“開設の届出は事後でも可能になった”こと、そして、届出に必要な情報が簡略化されたことが挙げられます。

 

本来であれば医療法施行規則(第1条の 14 第1項又は第4条)により「敷地の面積及び平面図」「建物の構造概要及び平面図」「維持の方法」などを記した書類を用意する必要がありますが、届出に関し以下の4つのみを指定しています。

 

また、通常であれば診療所の開設から10日以内に届出を提出する義務がありますが、その点に関しても緩やかな変更がなされています。

 

●企業内診療所の開設届けに必要な情報

 

・開設者の住所及び氏名(法人であるときは、その名称及び主たる事務所の

所在地)

・名称

・開設の場所

・開設の予定年月

届出は各都道府県に対し提出します。

 

企業内診療所を開設・設置する際の注意点

 

 

企業内診療所を開設・設置する際の注意点①

医療法の臨時措置によって、企業内診療所を設置する開設者が「適正かつ安全なワクチン接種に係る医療を提供するための法に規定する義務(施設・人員・構造設備基準、医療安全等)を行うことが可能である」と認められることを、都道府県知事等が確認する必要があるので注意します。

 

また、常勤する医師でなくとも職場内診療所の管理者となれますが「医師とは常時連絡を取れる体制を確保すること」と同時に、「医師がその責務を確実に果たせること」が求められています。

 

そして、医師に関する注意点として、職域接種により自院等で医療に従事しない場合には、医師自らが運営する医療機関において一時的に他の医師を確保する等の必要があります。

 

企業内診療所を開設・設置する際の注意点②

企業内診療所(職域接種診療所)を使って企業が利益を得ることは禁じられています。

 

例えば、取引先や下請け企業、あるいはその従業員の家族に対し、職域接種診療所にてワクチン接種を行うことは可能ですが、その際に料金を徴収すること等は禁止であるため気を付けましょう。

 

ですので、利益を目的とした事業として職域接種診療所を開設することもNGとなります。

 

また、ワクチンの職域接種が終了した場合、速やかに診療所の廃止届を提出することを忘れないようにしてください。

 

●注意点

 

ワクチンの職域接種に関しては日々情報が更新されますので、厚生労働省のホームページ等から最新の情報を入手するようにしてください。

 

 

職域接種を目的とした企業内診療所の開設について紹介しました。

 

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この記事の著者

サンポナビ編集部

サンポナビ編集部

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