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〈がんと仕事〉「2人に1人がなる」がんの基礎知識と予防方法を知ろう

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サンポナビ編集部

日本では「2人に1人ががんになり、3人に1人が死亡する」といわれています。

 

しかし、医療の進化により、かつては「不治の病」といわれていたがんも、今では治療をしながら働ける「長く付き合う病気」に変化しつつあります。

 

一方で、がんと診断されたことで約3割の人が仕事を辞めてしまっている現状があります。

 

「働く世代」でも増えるがん。がんに対する偏見をなくすためにも、まずは正しい知識を持つことが大切です。

 

がんの現状と予防について紹介します。

 

そもそも「がん」とはなんでしょうか?

 

がんは細胞の「コピーミス」から生まれる

人間の体は約60超個の細胞からできていて、そのうちの約1%の細胞が毎日死んでいます。

 

その死んだ細胞を補うために、細胞の設計図であるDNAを毎日数千億回コピーしながら、細胞分裂を繰り返しています。

 

細胞分裂の段階で「コピーミス」が起こることがあります。これが遺伝子の突然変異です。

 

遺伝子の突然変異により「死なない細胞」ができてしまうと「がん細胞」になってしまうのです。

 

「がん」が見つかるまでには時間がかかる

コピーミスから生まれたがん細胞は、分裂を繰り返して増殖します。

 

1個が2個、2個が4個、4個が8個、8個が16個…という風に。がん細胞は「死なない細胞」ですから、時間が経った分だけ細胞の数は増えていきます。

 

そして、がんが検査でわかる大きさになるまでには、およそ10年から20年の時間が必要だといわれています。

 

また、がんは老化の一種であるため、長生きするとがんが増えるのは、突然変異の蓄積と、免疫の衰えに原因があります。

 

日本では、毎年100万人の方ががんに罹っているといわれています。日本が「世界一のがん大国」だと呼ばれる理由は、長寿国でもあるからなのです。

 

がんって何?」(東京都保険医療局 東京都がんポータルサイト)をもとに編集して作成

 

がんを取り巻く現状と、患者の生存率

 

 

がんを理由に約30%の人が仕事を辞めている

がんは日本人の死因第1位です。

 

国立がん研究センターによれば、2016年にがんで死亡した人数はおよそ373,000人。がんの死亡率は60歳代から増加し、高齢になるほど高くなります。

 

また、15歳~64歳の「働く世代」にもがんと診断される数が増えており、がんと診断されたことをきっかけに、約3割が仕事を辞めたり、解雇されているという現状があります。

 

こうした現状から、がんの持つイメージが社会に与える損失が大きいことがわかります。

 

医療の進歩でがん生存率が向上している

「生存率」とは、がんと診断されてから生きられる確率のことです。

 

例えば「5年生存率」であれば、「診断後5年間生きられる確率」ということになります。

 

全部位の5年生存率は67.9%。部位別にみると前立腺で90%以上、甲状腺、子宮体、乳で70%以上90%未満、大腸、胃、腎臓、子宮頸など50%以上70%未満、というようになっています(※)。

 

生存率で重要なのはがんの早期発見です。

 

また、化学療法、放射線治療の進歩によって生存率は向上していますので、がんになったからといって何もかもをすぐに諦めるべきではないといえます。

全がん協加盟がん専門診療施設の診断治療症例について」(国立がん研究センター)をもとに編集して作成

 

がんの原因と予防~日頃からできること~

 

 

がんはなぜ発生するの?

がんを予防するためには発生要因を知ることも大切です。

 

がん発生の主な5つの要因を性別ごとにみてみましょう。

 

・男性のがん発生要因

  • 1位:喫煙
  • 2位:感染
  • 3位:飲酒
  • 4位:塩分摂取
  • 5位:過体重・肥満

 

・女性のがん発生要因

  • 1位:感染
  • 2位:喫煙
  • 3位:飲酒
  • 4位:過体重・肥満
  • 5位:塩分摂取

科学的根拠に基づくがん予防」(国立がん研究センターがん情報サービス)をもとに編集して作成

 

「感染」以外は日頃の生活習慣を見直すことで、がんの予防にもつながることがわかります。

 

※「感染」とは、胃がんであればピロリ菌、肝臓であればB型・C型肝炎ウイルス、子宮頸があればヒトパピローマウイルス(HPV)など、病原体を原因とするがんの発生要因です。

 

今日からできる5つのがん予防

国立がん研究センターが40歳から69歳の男女、総計140,420人に対して行った調査によれば、「禁煙」「節酒」「食生活」「身体活動」「適正体重の維持」の5つの生活習慣に気を付けて生活している人と、そうでない人とでは、男性で43%、女性で37%がんになるリスクが低くなるという推計2)が示されています。

 

がんを予防する5つの生活習慣を見てみましょう。

 

1.たばこを吸わない/他人のたばこの煙を避ける

 

喫煙は肺がんをはじめ、すい臓がん、胃がん、大腸がんなどの様々ながんと関連しています。

 

喫煙者は非喫煙者に対してがんになる危険性が約1.5倍に高まります。

 

2.お酒を控える

 

飲酒は食道がん、大腸がんと強い関連があります。

 

また、男性よりも女性の方が飲酒の影響を受けやすいこともわかっています。

 

●お酒の量は具体的にはどれくらい?

 

1日の飲酒量の目安は以下となります。

・日本酒:1合

・ビール大瓶(633ml):1本

・焼酎:原液で1合の2/3

・ウイスキー:ダブル1杯

・ワイン:ボトル1/3程度

※純エタノール量換算で1日あたり約23g程度

 

3.食生活を改善する

 

「塩分の摂りすぎ」「野菜・果物不足」「熱すぎる飲み物・食べ物をとること」ががんの原因になることが明らかになっています。

 

日本人に多い胃がん、食道がん、食道炎のリスクを減らすためには食生活の見直しがポイントです。

 

<減塩>

塩分の摂りすぎはがん予防だけでなく、高血圧、循環器疾患のリスクも低下させます。

 

Q.塩分の適切な量はどれくらい?

 

A.厚生労働省の目安では、男性で1日あたり8.0g以下、女性で1日あたり7.0g以下にすることを推奨しています。

いくらや塩辛などの塩分濃度が高い食べ物は避けると良いでしょう。

 

<野菜や果物をとる>

 

野菜や果物を食べることはがんのリスクを低下させることに期待できます。

 

また、脳卒中や心筋梗塞などの生活習慣病予防にもなりますので、意識的に野菜・果物を食べることが大切です。

 

Q.野菜や果物はどれくらい食べるのがいい?

 

A.厚生労働省策定の「健康日本21」で提唱されている目安としては、野菜を1日当たり350g(小鉢5皿分)、果物は50g(小鉢1皿分)です。

 

<熱い飲み物や食べ物を控える>

 

熱い飲み物、熱い食べ物は食道がんと食道炎のリスクを高めるという報告があります。

 

口の中や食堂の粘膜を傷つけないよう、冷ましてから口にするようにしましょう。

 

4.身体を動かす

 

身体活動量が高い人ほど、男女ともがん全体の発生リスクが低くなるという報告があります。

 

高齢者や休日にスポーツをする機会が多い人はがんのリスクが低下します。

 

普段の生活の中で、可能な限り身体を動かすことが大切です。

 

Q.どれくらい運動するといいの?

 

A.歩行と同等以上の運動を1日で60分。息がはずみ汗をかく程度の運動は1週間に60分程度行いましょう。

 

5.適正体重を維持する

 

肥満度を表すBMIの数値に注意してみしょう。

 

男性の場合、BMI値が21.0~26.9、女性の場合はBMI値21.0~24.9でがんのリスクが低いことが示されています。

 

研究によれば、男女ともに太りすぎていても痩せすぎていてもがんの死亡リスクが高いことがわかっています。

 

男性では肥満よりも痩せている人、女性では肥満の方がリスクが高いという結果が出ています。

 

※BMIはこちらのサイトで簡単に算出できます(生活や実務に役立つ計算サイト(カシオ計算機株式会社)へリンクします)。

 

 

国民病とも呼ばれるがんは、多くの人が罹る可能性を持っており、医療の進歩によって「不治の病」ではなくなりました。

がんに対する偏見をなくすこと、がんを予防するために生活を見直すことが、がん対策の第一歩になります。

また、厚生労働省は2024年11月に病気の治療と仕事の両立支援に取り組むことを、企業の努力義務とする案を示しました。

企業は、治療しながら働くことを希望する従業員に対して、受け入れ環境の整備を進める必要があり、産業医や主治医との連携が欠かせません。

 

株式会社エムステージでは、産業医の紹介から、従業員の健康管理業務、メンタルヘルス対策まで、企業の健康課題に必要なソリューションをトータルで提供しています。

 

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