健康経営のユニークな取り組み7選│健康意識向上に役立つ企業事例を紹介
(更新: 2025/08/21)
片桐はじめ


健康経営®の推進において、他社とは違うユニークな施策で、従業員の健康意識向上をはかりたいと考える人事労務担当者も多いのではないでしょうか。
本記事では、健康経営優良法人に認定されている7社のユニークな取り組みを紹介します。従業員が楽しみながら参加でき、企業の課題解決にもつながる事例を参考にしてみてください。
目次
【大規模法人部門】ユニークな取り組み事例5選

大企業では、豊富なリソースを生かした健康経営の取り組みが見られます。特にユニークで従業員の参加を促す工夫がみられる5社の事例を紹介します。
1.亀田製菓株式会社
亀田製菓株式会社は、従業員が楽しみながら健康意識を高められるツールを積極的に利用しています。ヘルスケアアプリや手のひらを当てるだけで野菜摂取量を測定できるツールなどを通じて、従業員の健康づくりをサポートしています。
また、ストレスチェックの結果を専門家とともに分析する報告会を実施し、全国平均との比較から自社の課題を抽出しています。プレゼンティーズム(出勤しているが生産性が低い状態)などの客観的なデータに基づき、職場環境の具体的な改善策を検討している点が特徴的です。
参考:「“健康”を企業文化として根付かせたい」従業員のヘルスリテラシー向上を目指す亀田製菓グループの取り組み│株式会社エムステージ健康経営トータルサポート
2.株式会社関西テレビライフ
フィットネスクラブを運営する株式会社関西テレビライフは、全社的な健康イベントを積極的に行っています。事業所対抗のウォーキングイベントは参加率100%を達成し、従業員が運動を始めるきっかけづくりになりました。
また、グループ全体のインボディ測定会を開催するなど、従業員がデータに基づいて健康状態を把握する機会を提供しています。楽しみながら参加できる企画を通じて、組織全体の健康意識向上を目指しています。
参考:「地域の健康づくりは、従業員の健康意識から」関西テレビライフの健康経営優良法人取得までの道のりとは│株式会社エムステージ 健康経営トータルサポート
3.株式会社イトーキ
「健康的に働く」ための空間を提供する企業として、自らがその理念を実践する株式会社イトーキは、9年連続で「健康経営優良法人(ホワイト500)」に認定されています。
同社では健康経営推進委員会が中心となり、健康診断受診率100%の達成やがん検診、卒煙支援といった施策を展開しています。ABW(ActivityBasedWorking※)という働き方を実践しており、インフラ整備やコミュニケーションツール等のIT環境が整備されていたため、コロナ禍もスムーズにテレワークへ移行できました。
一方で、在宅勤務下では従業員のストレス状態が見えにくいという新たな課題に直面しました。そこで同社は、独自の項目を加えたストレスチェックを活用。結果をグラフで可視化したことで、管理職のメンタルヘルスへの関心が高まりました。
さらに、結果分析から職場の課題を特定し、管理職が「心理的安全性」の重要性を学ぶラインケア研修などを実施。管理職がメンタルヘルス不調対策を「自分ごと」として捉える意識改革に成功しています。
※ABW(ActivityBasedWorking):仕事内容や目的に応じて働く場所を自由に選択できる働き方
参考:「健康的に働く」ための空間を提供する企業として、社内外のあらゆる「働く」をサポート│株式会社エムステージ 健康経営トータルサポート
4.株式会社イオンバイク
全国約260店舗の自転車販売店を運営するイオンバイク株式会社は「健康経営優良法人2024」認定企業です。転倒予防、肩こり・腰痛予防を目的とした「イオン1分間体操」を毎朝実施しています。
また、メンタルヘルス対策として全店舗の店長向けにラインケア研修を実施し、部下の不調に寄り添うマネジメントを強化しています。
入社3年目の店長候補者研修や自転車安全整備士の資格取得サポートなど、実務とマネジメント両面からの教育体制を整備。キャリアアップに伴う不安を軽減し、従業員が心身ともに健康で挑戦し続けられる職場環境づくりを進めています。
参考:産業医と二人三脚で従業員の健康意識向上へ|全国展開するイオンバイクが取り組む健康経営とは│株式会社エムステージ 健康経営トータルサポート
5.大同生命保険株式会社
大同生命保険株式会社は「健康リスクの把握」「健康増進」「労働時間の縮減」を3つの柱として健康経営を推進しています。
特にユニークなのが、自社開発のプログラム「KENCO SUPPORT PROGRAM(KSP)」の活用です。従業員は自身の健診結果をいつでも確認できるほか、ウェアラブル端末と連携させて歩数や睡眠状態を記録。ポイントが付与されるウォーキングキャンペーンを年3回開催するなど、楽しみながら健康増進に取り組める環境を整えています。
また、メンタルヘルス対策にも注力しており、管理職の95%以上が「メンタルヘルス・マネジメント検定」を取得。上司が部下の不調に早期に気づき、適切に対応できる土台を築いています。
19時にはパソコンを強制シャットダウンする制度や夕方の早い時間に退社する「ゆう活」の推進により、全社的な労働時間削減に取り組んでいます。
参考:2017年に健康経営を宣言「DAIDO-ココ・カラ」と称して積極的に推進する大同生命の健康経営の取組み│株式会社エムステージ 健康経営トータルサポート
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【中小規模法人部門】ユニークな取り組み事例2選

中小企業においても、経営層のリーダーシップやアイデア次第で、効果的な健康施策を行うことが可能です。独自の工夫で取り組みを行っている2社の事例を紹介します。
株式会社テルミック
金属加工を手がける株式会社テルミックは、少子高齢化による労働力不足を見据えて2018年頃より女性活躍推進に取り組みました。「鉄工所=男性職場」というイメージを覆し、従業員の約7割が女性という環境を実現しています。
同社では、長時間の座位勤務による運動不足と、コミュニケーション不足からくるメンタルヘルス不調が課題でした。運動不足解消のためにフィットネスジムの会費を月5,000円まで補助する制度や、座りっぱなしを防ぐ昇降式デスクを各部署に導入。従業員が運動を習慣化しやすい環境を整備しました。
さらに、コミュニケーション活性化を目的とした夕食補助制度「イートインテルミック」もユニークな取り組みです。定時退勤した従業員3名以上が社内で食事会をする場合、1人あたり1,500円を補助する制度で、従業員の孤立感やストレスの軽減につなげています。
参考:女性従業員の活躍を推進する株式会社テルミックが取り組む健康経営とは│株式会社エムステージ 健康経営トータルサポート
豊橋鉄道株式会社
豊橋鉄道株式会社は、地域と連携したユニークな健康経営施策を行っています。認知症の方々が公共交通機関を利用しやすい地域づくりの一環として、行政と連携した認知症研修を従業員向けに実施。「地域の健康度が上がれば、そこで暮らす従業員の健康にもつながる」という考えのもと、地域全体の健康づくりにも目を向けた活動を展開しています。
また、運輸業特有のリスク管理として、50人未満の事業所を含む全拠点でストレスチェックを実施。さらに、運転士などには脳ドックや心臓CT、睡眠時無呼吸症候群の検査を提供し、精密検査が必要な場合は費用を全額補助するなど、手厚いサポート体制を整えています。
参考:「企業は地域の構成要素の1つ」地域と職域の連携を目指す豊橋鉄道が取り組む健康経営とは│株式会社エムステージ 健康経営トータルサポート
健康経営の取り組みを成功させるポイント
紹介した事例からわかる、健康経営を成功させるためのポイントは以下の3つです。
- 経営課題として位置づける
- 自社らしさを反映して従業員を巻き込む
- データと専門性を活用する
1.経営課題として位置づける
経営層が健康経営の重要性を自らの言葉で社内外に発信し、明確なビジョンを示すことが大切です。トップの強い意志が示されることで、健康経営が組織全体の優先事項となり、従業員の意識も変わります。そのため、経営層への働きかけが必要となります。
経営層を動かすには、まず健康経営を「会社の成長戦略」と認識してもらうことが不可欠です。他社事例や自社の健康課題データをもとに、生産性への影響を可視化して説明しましょう。
重要性が経営層に伝われば、メッセージ発信やイベント参加といった具体的な役割を依頼します。
また、取り組み内容を社外へ発信することで企業イメージの向上などの効果が得られ、さらに重要性が認識されるでしょう。
2.自社らしさを反映して従業員を巻き込む
従業員が「自分ごと」として主体的に健康づくりを行うためには、自社の事業や企業文化と結びついた施策が効果的です。従業員にとって「自分たちの会社ならではの施策」として受け入れやすいでしょう。例えば、エンタメ企業がゲーム感覚のイベントを実施したり、食品会社が食育に力を入れたりすることが挙げられます。
また、主体性の向上には、施策の企画段階から従業員の意見を反映させることも重要です。アンケートやワークショップを通じてニーズを吸い上げることで、従業員の当事者意識を高めて満足度の高いプログラムを実施できます。
現場の意見を積極的に取り入れて自社らしい取り組みを推進するなど、従業員を巻き込む仕組みづくりが重要です。
3.データと専門性を活用する
経験や現場の肌感だけに頼らず、データに基づいて健康課題を特定し、施策を立案・評価することが大切です。健康診断の結果やストレスチェックの集団分析データなどを活用し、自社の健康課題を正確に把握しましょう。
また、産業医や保健師などの専門家との連携も欠かせません。専門的見地から健康リスクや維持増進のメリットを説明してもらうことで、従業員のヘルスリテラシー向上につながります。
ウェアラブル端末で日々の活動量を可視化したり達成度に応じたインセンティブを用意したりすることも、モチベーション維持に有効です。
健康経営の取り組みを推進する4つのステップ

健康経営施策を推進するためには、体制の構築から現状把握、実行まで計画的に実施することが大切です。具体的な4つのステップは以下のとおりです。
| ステップ | 内容 |
| ①経営トップの方針発信 (健康宣言) |
経営者が健康経営に取り組むことを社内外に明確に宣言します。 |
| ②推進体制の構築 | 人事総務や産業保健スタッフ、現場の従業員など、部門横断的なメンバーで推進チームを構成します。 |
| ③計画策定と実行 | ストレスチェック、エンゲージメントサーベイ、健康診断結果などを精査し、自社の課題を洗い出します。さらに課題に基づいて具体的な目標(KPI)を設定し、施策を実行します。 |
| ④評価・改善 | 施策の効果(KPIの達成度、推進チームメンバーのフィードバックなど)を検証し、評価と改善を繰り返して次の計画に生かします。 |
健康経営推進の取り組みが形骸化しないよう、以上の4つのステップに沿って入念に体制を整えて実行しましょう。
健康経営は「従業員目線」の理解が不可欠
健康経営推進事例に共通するのは、従業員の意識向上には「自分ごと」として主体的に取り組める工夫が欠かせないという点です。
そのためには、従業員の目線に立って課題を理解し、健康づくりの重要性と目的を共有しながら取り組む必要があります。
従業員のニーズを的確に捉えて効果的な施策を立案するためには、健康経営コンサルタントのような専門家の活用も役立ちます。また、「健康経営優良法人」の認定取得を目指すことは、取り組みを体系的に進める上で明確な目標となるでしょう。
株式会社エムステージでは、健康経営優良法人認定取得に向けたコンサルティングサービスを提供しています。現状把握から計画、施策の実行と評価までトータルでサポート。健康経営の推進でお悩みの際は、お気軽にご相談ください。
※「健康経営®」は、NPO法人健康経営研究会の登録商標です。

