特殊健康診断とは?対象者や一般健康診断との違いを解説
(更新:2025/09/29)


特殊健康診断は、業務内容に応じて対象となる従業員が定められています。
「どの従業員が対象なのか分からない」「対象業務や物質を把握するのが難しい」などの悩みを抱える人事労務担当者の方も多いのではないでしょうか。
本記事では、特殊健康診断の基本から対象業務、一般健康診断との違い、具体的な実施フローまでを解説します。特殊健康診断について正しく理解しましょう。
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特殊健康診断とは?

特殊健康診断とは、特定の有害業務に従事する労働者の健康を守るために実施が義務付けられている健康診断です。
労働安全衛生法第66条2項において定められています。
有害物質や危険な作業環境にさらされる業務が対象で、高気圧業務や有機溶剤業務など、8つの業務が対象となります。
一般健康診断との違い
一般健康診断の主な目的は、生活習慣病など病気の予防や早期発見をすることです。
対して特殊健康診断の主な目的は、有機溶剤中毒など、有害業務に起因する健康被害を早期に発見することです。
一般健康診断には、雇入時健康診断や、定期健康診断、海外派遣労働者に対する健康診断などが含まれます。

出典:健康診断を実施しましょう ~労働者の健康確保のために~(厚生労働省)
賃金の支払いに関する違い
特殊健康診断の受診に要した時間は労働時間とみなされるため、会社は労働者に賃金を支払う必要があります。
また、労働時間外に特殊健康診断を実施した場合には、割増賃金を支払わなければなりません。
一方で、一般健康診断の受診に要した時間の賃金は、労使間の協議で決定します。
ただし、受診率を向上させるためには、一般健康診断の受診に要した時間についても、会社が労働者に賃金の支払いを行うことが推奨されます。
※特殊健康診断 職場のあんぜんサイト(厚生労働省)
健康診断を受けている間の賃金はどうなるのでしょうか?(厚生労働省)を編集して作成
特殊健康診断の種類と対象者

労働安全衛生法第66条2項に基づき実施が定められている特殊健康診断の種類は8つです。
本章では、法令上は特殊健康診断に含まれないものの性質的に似ている、労働安全衛生法第66条3項に基づき実施が定められている「歯科特殊健康診断」と、じん肺法に基づき実施が定められている「じん肺健康診断」もあわせた10種類について解説をします。
- 特定化学物質健康診断
- 有機溶剤健康診断
- 電離放射線健康診断
- 高気圧業務健康診断
- 除染等電離放射線健康診断
- 石綿健康診断
- 鉛健康診断
- 四アルキル鉛健康診断
- じん肺健康診断
- 歯科特殊健康診断
特定化学物質健康診断
ベンゼンや塩化ビニルなど、がん原性や高い毒性を持つ化学物質を製造・取り扱う業務に従事する労働者が対象です。
がんや肝障害などの健康被害を早期に把握することを目的とします。
| 対象業務 | ベンゼン、塩化ビニル、クロム酸などを製造・取り扱う業務 |
| 検査項目 | 業務で取り扱う物質により異なる(例:ベンゼンは血液検査、塩化ビニルは肝機能検査) |
| 主な実施時期 | ・雇入れまたは当該業務への配置換えの際 ・6か月以内ごとに1回(一部の物質の胸部X線直接撮影は1年以内ごとに1回) |
| 結果の保存期間 | 5年(一部の発がん性物質は30年間) |
特定化学物質健康診断は、扱う化学物質により検査項目が異なります。
また、令和2年に項目の見直しがありました。改正後の対象物質と検査項目については、「化学物質取扱業務従事者に係る 特殊健康診断の項目を見直しました (令和2年7月1日 施行)」(厚生労働省)をご覧ください。
参照:「特定化学物質障害予防規則 第六章 健康診断(第三十九条-第四十二条)」(中央労働災害防止協会)
有機溶剤等健康診断
塗装や洗浄、印刷などで法令指定の有機溶剤(トルエン、キシレンなど)を扱う業務に従事する労働者が対象です。
有機溶剤による皮膚障害や神経系の障害、肝機能障害などの健康被害を早期に把握することを目的とします。
| 対象業務 | 塗装、洗浄、印刷、接着作業など |
| 検査項目 | ・業務経歴の調査 ・作業条件の簡易な調査 ・有機溶剤による健康障害の既往歴ならびに自覚・他覚症状の既往歴の有無の検査 ・尿検査、肝機能検査などの項目についての既往の異常所見の有無の調査 ・有機溶剤による自覚・他覚症状と通常認められる症状の有無の検査 ※有機溶剤の種類に応じ実施しなければならない項目は異なる |
| 主な実施時期 | ・雇入れまたは当該業務への配置換えの際 ・6か月以内ごとに1回 |
| 結果の保存期間 |
5年間 |
参照:「有機溶剤中毒予防規則 第六章 健康診断(第二十九条-第三十一条)」(中央労働災害防止協会)
「別表(第二十九条関係)」(中央労働災害防止協会)
電離放射線健康診断
放射性物質を扱う病院・研究所・原子力発電所などで、管理区域内での業務に従事する労働者が対象です。
放射線による白血球の減少や、白内障などの健康被害を早期に把握することを目的とします。
| 対象業務 | エックス線装置の使用、放射性物質を扱う業務など |
| 検査項目 | ・被ばく歴の有無の調査及びその評価 ・白血球数及び白血球百分率の検査 ・赤血球数の検査及び血色素量又はヘマトクリット値の検査 ・白内障に関する眼の検査 ・皮膚の検査 |
| 結果の保存期間 | 30年 |
| 主な実施時期 | ・雇入れまたは当該業務に配置替えの際 ・6か月以内ごとに1回 |
また、放射線事故発生時などの緊急作業に従事する労働者が対象となる、「緊急時電離放射線健康診断」があります。(電離放射線障害防止規則56条の2)
表の検査項目に加え、甲状腺機能を調べるための血液検査が行われます。
参照:「電離放射線障害防止規則 第八章 健康診断(第五十六条-第五十九条)」(中央労働災害防止協会)
高気圧業務健康診断
高気圧業務健康診断は、潜水業務などの、気圧が高い環境で働く労働者が対象です。
減圧症や骨壊死などの健康被害を早期に発見することが目的です。
| 対象業務 | 高圧室内作業、潜水業務など |
| 検査項目 | ・既往歴及び高気圧業務歴の調査 ・関節、腰もしくは下肢の痛み、耳鳴り等の自覚症状又は他覚症状の有無の検査 ・四肢の運動機能の検査 ・鼓膜及び聴力の検査 ・血圧の測定、尿中の糖、蛋白の有無の検査 ・肺活量の測定 |
| 結果の保存期間 | 5年 |
| 主な実施時期 | ・雇入れまたは当該業務への配置換えの際 ・6か月以内ごとに1回 |
参照:「高気圧作業安全衛生規則 第四章 健康診断及び病者の就業禁止(第三十八条-第四十一条)」(中央労働災害防止協会)
除染等電離放射線健康診断
東日本大震災により放出された放射性物質により汚染された地域での「除染等作業」に従事する労働者が対象です。
除染作業に伴う電離放射線への被ばくによる健康被害を早期に把握することを目的とします。
| 対象業務 | 特定汚染土壌の収集・運搬、除染作業など |
| 検査項目 | ・被ばく歴の有無の調査及びその評価 ・白血球数及び白血球百分率の検査 ・赤血球数の検査及び血色素量又はヘマトクリット値の検査 ・白内障に関する眼の検査 ・皮膚の検査 |
| 主な実施時期 | ・雇入れまたは当該業務に配置換えの際 ・6か月以内ごとに1回 |
| 結果の保存期間 | 30年 |
参照:「東日本大震災により生じた放射性物質により汚染された土壌等を除染するための業務等に係る電離放射線障害防止規則 第二章 除染等業務における電離放射線障害の防止(第三条─第二十五条)」(中央労働災害防止協会)
石綿健康診断
石綿の取扱いや、試験研究のため製造する業務に従事する労働者が対象です。
肺がんや中皮腫など、潜伏期間が長い健康被害を早期に把握することを目的とします。
| 対象業務 | 石綿の製造・取扱い |
| 検査項目 | ・業務経歴の調査 ・石綿によるせき、たん、息切れ、胸痛等の自覚または他覚症状の既往歴の有無の検査 ・せき、たん、息切れ、胸痛等の自覚または他覚症状の有無の検査 ・胸部エックス線直接撮影による検査 |
| 主な実施時期 | ・雇入れまたは当該業務に配置換えの際 ・6か月以内ごとに1回 |
| 結果の保存期間 | 当該労働者が当該事業場において常時当該業務に従事しないこととなった日から40年 |
参照:「石綿障害予防規則 第六章 健康診断(第四十条―第四十三条)」(中央労働災害防止協会)
鉛健康診断
はんだ付けや鉛蓄電池の製造など、鉛やその化合物を扱う業務に従事する労働者が対象です。
鉛中毒による貧血などの健康被害を早期に把握することを目的とします。
| 対象業務 | はんだ付け、鉛蓄電池の製造、鉛を含む顔料の使用 |
| 検査項目 | ・業務経歴の調査 ・作業条件の簡易な調査 ・鉛による自覚または他覚症状の既往歴の有無、および血液中・尿中の既往の検査結果の調査 ・いらいらい、不眠などの神経症状または精神症状の自覚・他覚症状の有無の検査 ・血液中の鉛の量の検査 ・尿中のデルタアミノレブリン酸の量の検査 |
| 主な実施時期 | ・雇入れまたは当該業務に配置換えの際 ・6か月以内ごとに1回(一部の業務に従事する労働者に対しては1年以内ごとに1回) |
| 結果の保存期間 | 5年間 |
参照:「鉛中毒予防規則 第六章 健康管理(第五十三条-第五十七条)」(中央労働災害防止協会)
四アルキル鉛業務に従事する労働者
主にガソリン用添加剤として使用される毒性の強い化学物質を扱う業務に従事する労働者が対象です。
頭痛やめまい、いらいらや不眠などの神経症状をはじめとする健康被害を早期に把握することを目的とします。
| 対象業務 | 四アルキル鉛の製造・取扱い、ガソリンへの混入作業 |
| 検査項目 | ・業務経歴の調査 ・作業条件の簡易な調査 ・四アルキル鉛による自覚症状及び他覚症状の既往歴の有無の検査および血液中・尿中の既往の検査結果の調査・精神・神経症状の自覚・他覚症状の有無の検査(いらいら、不眠など) ・血液中の鉛量の検査 ・尿中のデルタアミノレブリン酸量の検査 |
| 主な実施時期 | ・雇入れまたは当該業務に配置換えの際 ・3か月以内ごとに1回 |
| 結果の保存期間 | 5年間 |
参照:「四アルキル鉛中毒予防規則 第三章 健康管理(第二十二条-第二十六条)」(中央労働災害防止協会)
じん肺健康診断
じん肺法に基づき実施が定められている「じん肺健康診断」は、粉じん作業に常時従事する労働者および、過去に粉じん作業に従事したことのある労働者が対象です。
「じん肺」とは、無機物または鉱物性粉じんを長期にわたって多量に吸い込むことで、肺の組織が繊維化し、硬くなって弾力性を失う病気です。気管支炎、肺がん、気胸などの健康被害を早期に把握することを目的とします。
| 対象業務 | 鉱物の採掘、金属の研磨、セメント製造など |
| 検査項目 | ・粉じん作業の職歴の調査 ・胸部エックス線直接撮影 ・胸部臨床検査 (必要に応じて実施) ・肺機能検査 (必要に応じて実施) ・結核精密検査その他合併症に関する検査(必要に応じて実施) |
| 主な実施時期 | ・新たに常時粉じん作業に従事することとなった際 ・法令に基づく、労働者一人一人の状況に応じて1年または3年以内ごとに1回 など |
| 結果の保存期間 | 7年 (結果記録およびエックス線写真) |
◆じん肺健康診断の結果に応じて決まる「管理区分」
じん肺健康診断は、胸部エックス線や肺機能の検査の結果に応じて管理区分が定められます。管理区分とは、以下のようにじん肺の進行度を5段階に区分したもので数字が大きいほど進行度が高いことを示します。

出典:じん肺健康診断、じん肺管理区分について(厚生労働省 奈良労働局)
じん肺管理区分の決定には、検査結果を都道府県労働局長へ提出し、審査を受ける必要があります。決定通知を受けた後は、管理区分を労働者へ通知し、適切な就業上の措置を講じるよう努めなければなりません。
◆じん肺健康診断の実施頻度
じん肺健康診断は、以下のタイミングで実施が必要です。
- 就業時
- 定期
- 定期外
- 離職時
【就業時】
新たに常時粉じん作業に従事することになった時に実施。ただし、以下の者を除く。
①当該就業日の前に粉じん作業従事歴がない労働者
②当該就業日の前1年以内にじん肺健康診断を受けて、「じん肺の所見がない」と診断され管理区分が管理1とされた労働者
③当該就業日の前6か月以内にじん肺健康診断を受けて、じん肺管理区分が管理3ロとされた者
【定期】
以下の管理区分に応じた頻度で実施。

【定期外】
①常時粉じん作業に従事している労働者(じん肺管理区分が管理二、管理三又は管理四と決定された労働者を除く。)が、通常の健康診断(労働安全衛生法第66条第1項または第2項)で「じん肺の所見がある」「じん肺にかかっている疑いがある」と診断を受けたとき。
②合併症により1年を超えて療養した労働者が、医師により療養を要しなくなったと診断された時
【離職時】
離職の日まで1年を超えて常時使用していた労働者が、離職時にじん肺健康診断を行うように求めた時に実施。
ただし、以下の者を除く。
①常時粉じん作業に従事しており、管理区分が管理1の労働者で、直前のじん肺健康診断から離職までの期間が1年6か月未満の場合
②常時粉じん作業に従事しており、管理区分が管理2・3の労働者で、直前のじん肺健康診断から離職までの期間が6か月に満たない場合
③過去に常時粉じん作業に従事したことがあり、現在は非粉じん作業に従事しており、管理区分が管理2・3の労働者で、直前のじん肺健康診断から離職までの期間が6か月に満たない場合
参照:「じん肺法施行規則 第二章 健康管理(第九条-第二十九条)」(中央労働災害防止協会)
歯科特殊健康診断
労働安全衛生法第66条3項に基づき実施が定められている「歯科医師による健康診断」は、塩酸、硫酸、フッ化水素など、歯やその支持組織に有害なガス・蒸気を発散する場所での業務を行う労働者が対象です。
主に、歯のエナメル質が溶けてしまう「歯牙酸触症(しがさんしょくしょう)」などの健康被害を早期に把握することを目的とします。
| 対象業務 | 塩酸、硝酸、硫酸、亜硫酸、フッ化水素、黄りんなど |
| 検査項目 | 歯牙酸触症による歯や支持組織の異常の有無に関する診断 ※明確な実施項目の規定はない |
| 結果の保存期間 | 5年 |
令和4年10月に労働安全衛生規則の一部が改正される以前は、労働者50名以上の事業場を報告義務の対象としていましたが、改正により、労働者数に関係なく、歯科健康診断結果報告書を所轄労働基準監督署長に提出することが義務付けられました。
参照:「労働安全衛生規則 第一編 第六章 健康の保持増進のための措置(第四十二条の二-第六十一条の二)」(中央労働災害防止協会)
「労働安全衛生規則の一部を改正する省令案 概要」(厚生労働省)
【健診担当者向け】特殊健康診断を実施する5ステップ
特殊健康診断を円滑に進めるには、対象者のリストアップから実施後の措置までを計画的に進めることが不可欠です。
計画的な実施のためには、以下の5ステップに沿って進めるとよいでしょう。
- 対象者と実施する特殊健康診断の特定
- 健診機関の選定と費用の確認
- 特殊健康診断の実施と結果の受領
- 有所見者への事後措置
- 労働基準監督署への報告
ステップ①:対象者と実施する特殊健康診断の特定
業務ごとの作業内容や使用物質をリストアップし、特殊健康診断の対象となる従業員を法律に基づき特定します。
労働者の作業日報や配置転換履歴、化学物質の安全データシート(SDS)、事業場の作業環境測定結果などの資料を総合的に確認することで、適切に対象者を特定することができます。
人事労務の健診担当者だけでは特定が困難なため、現場の作業管理者や安全担当者と連携して勧めるとスムーズでしょう。
ステップ②:健診機関の選定と費用の確認
次に、実施が必要な特殊健康診断の検査項目に対応している医療機関の選定をおこないます。
すべての医療機関が特殊健康診断を実施しているわけではないため注意が必要です。
また、特殊健康診断を実施している医療機関でも、対応可能な検査項目は医療機関毎に異なります。
必要があれば、巡回健診の可否なども確認しましょう。
ステップ③:特殊健康診断の実施と結果の受領
健診機関が決まったら、対象となる従業員に受診を勧奨します。
「なぜ特殊健康診断の受診が必要なのか」を丁寧に説明し、予約手続きを進めましょう。
健診機関から結果を受領したら、内容を確認します。
石綿業務は40年、電離放射線業務は30年など、対象業務ごとに法令で定められた期間を守って厳重に保存しましょう。
ステップ④:有所見者への事後措置
特殊健診の結果に所見があった従業員に対しては、適切な事後措置を講じる必要があります。
事後措置として行うのは次の3つです。
- 医師による意見聴取
- 就業上の措置
- 作業環境改善
◆医師による意見聴取
まず、健診結果について医師から3か月以内に意見を聴取しなければなりません。
意見聴取をする医師は、自社の業務内容や環境をよく理解している産業医が望ましいとされています。産業医に特殊健康診断結果や現場の作業環境などの情報を提供し、連携をとって対応しましょう。
医師や歯科医師が行うのはあくまで意見と勧告であり、事後措置内容の最終決定を行うのは事業所です。
◆就業上の措置
医師の意見に基づき、就業上の措置を決定します。
・通常勤務
・就業制限
・要休業
「健康被害の疑いがある」であれば、医師が指定した検査を一定期間ごとに行い経過観察をしたり、作業内容の変更や労働時間の短縮などの就業制限を行ったりします。就業が困難と判断された場合は、業務への就業を禁止して療養に専念することが必要です。
措置を決定する際は、一方的に決めるのではなく、対象となる従業員と十分に話し合い、理解を得ることが望ましいです。
◆作業環境改善
個人の措置だけでなく、職場環境自体の見直しも重要です。有所見の根本原因が職場にある場合、環境を改善しなければ同様の健康被害や疾病が発生するおそれがあるためです。
作業環境を改善するため必要な措置の例
・危険性・有害性の高い化学物質等の製造・使用の中止
・生産工程・作業方法の改善による有害物質の発散防止
・設備の密閉、隔離、自動化、遠隔化(工学的対策)
・局所排気装置や全体換気装置等の設置(衛生工学的対策)
出典:岡庭 豊「職場の健康がみえる 産業保健の基礎と健康経営」株式会社メディックメディア,2019年,p123
上から順に、効果が高く、優先度が高い改善例です。実現可能な限り優先度の高い措置を実施することが望まれます。
また、産業医と連携して職場巡視結果を共有したり、衛生委員会で審議したりするなど、計画的に進めましょう。
ステップ⑤:労働基準監督署への報告
特殊健康診断の結果は、所轄の労働基準監督署長に報告する義務があります。特殊健康診断ごとに、専用の報告書様式を使用し、遅滞なく提出しましょう。
提出は、窓口や郵送のほか、e-Govによる電子申請も可能です。
特殊健康診断に関するよくある疑問
人事労務担当者の方が悩みがちな特殊健康診断に関する疑問について、Q&A形式で解説します。
Q.特殊健康診断を行わないことで罰則はありますか?
A.法令で義務付けられた特殊健康診断を実施しなかった場合、労働安全衛生法第120条違反となり、50万円以下の罰金が科される可能性があります。また、罰則だけでなく、企業の安全配慮義務を果たす上でも特殊健康診断の実施は重要です。
特殊健康診断の実施は企業の義務であり、従業員が受診を拒否した場合でも企業には受診させる責任があるため注意しましょう。
Q.パートやアルバイトも対象となりますか?
A.パートやアルバイトであっても、有害業務に「常時従事」していれば特殊健康診断の対象です。「常時従事」とは、継続して有害業務に従事したり、一定期間ごとに繰り返して携わったりする場合を指します。
Q.派遣社員も対象となりますか?
派遣社員は、一般健康診断においては派遣元に実施義務がありますが、特殊健康診断は派遣先に実施義務があります。
※製造業における派遣労働者に係る安全衛生管理マニュアル(厚生労働省)を編集して作成
Q.特殊健康診断は年に何回実施すればよいでしょうか?
A.原則として6か月以内に1回の実施が必要です。ただし、じん肺健康診断は管理区分により1~3年に1回に加え離職時にも必要であり、実施頻度が異なります。
定期的に行う特殊健康診断に加えて、雇い入れ時と配置転換時にも実施する必要があります。
Q.特殊健康診断の頻度の緩和はできる?
特殊健康診断の頻度は、特定の条件を満たせば年1回に緩和できます。実施頻度の緩和が可能なのは、以下の物質を扱う業務です。
- 特定化学物質(特別管理物質などを除く)
- 鉛
- 四アルキル鉛
- 有機溶剤
要件には、直近の作業環境測定の結果が良好であることや、従業員に新たな異常所見がないことなどが含まれます。
- 当該労働者が作業する単位作業場所における直近3回の作業環境測定結果が第一管理区分に区分されたこと(四アルキル鉛を除く)。
- 直近3回の健康診断において、当該労働者に新たな異常所見がないこと。
- 直近の健康診断実施日から、ばく露の程度に大きな影響を与えるような作業内容の変更がないこと。
出典:直近及び今後の健康診断等の改正状況について(厚生労働省)
煩雑な健康診断の実務は、外部委託で効率化を
特殊健康診断は、法律で定められた企業の義務であり、従業員の健康と安全を守るために必要不可欠です。
しかし、対象者のリストアップから健診機関の手配、未受診者への勧奨、最長40年にわたる結果の保管まで、実務はとても煩雑です。
受診のタイミングに関しても、しっかり把握をしてコントロールする必要があります。
煩雑な事務作業の負担軽減には、外部委託サービスの活用も有効です。
株式会社エムステージでは、健診業務をまとめて代行する「健診予約代行サービス」をご提供しています。
健診機関の手配から請求書の対応、受診者の予約管理まで一括で委託できます。
さらに、健康管理システムを導入すれば健康診断結果の一元管理も可能です。
特殊健康診断の実務でお困りの方は、お気軽にご相談ください。
※健康診断予約代行サービスはエムステージグループ企業の株式会社ミライトとの直接契約になります。
この記事の監修者
本田 和樹
看護師として急性期精神病院で5年間勤務したのち、2020年4月エムステージに入社。 産業保健師の業務委託事業立ち上げに携わる。 労働と精神衛生についての啓蒙活動、寄稿なども行う。 マネージャーとして数多くの保健師の業務サポートを行っている。
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