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健康経営優良法人2026|認定基準と申請方法をわかりやすく解説

(更新:2025/09/11)

片桐はじめ

健康経営 認定基準
健康経営 認定基準

2017年度からスタートした、経済産業省の認定制度「健康経営優良法人」は、その認定企業数が年々増えており「健康経営優良法人2025」には大規模法人部門3,400法人、中小規模法人部門では19,796法人の認定発表がありました(2025年3月10日発表)。

 

健康経営®を推進し健康経営優良法人に認定されることは、いわば「ホワイト企業のステータス」にもなるため、企業等からの注目が高まっています。

 

本記事では、最新の情報をもとに、健康経営優良法人の基本的な知識から2026年認定基準のポイントまでを解説します。申請の流れや認定のメリットも紹介しますので、健康経営優良法人認定取得の参考にしてみてください。

〈編集部注〉申請期間や認定の基準等については記事作成時点での情報です。必ず経済産業省などのホームページにて確認してください。

 

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「健康経営優良法人」認定のための基礎知識

 

まずは、「健康経営優良法人」とは何かを知るところから始めましょう。認定制度の基本と法人部門の違いについて解説します。

 

「健康経営優良法人」とは

健康経営優良法人とは、経済産業省の認定制度です。積極的な健康活動に取り組んでいる企業(法人)に対して、毎年認定を行っています。

健康経営優良法人に認定されることで、従業員の健康管理を経営戦略の一つとして考え、実践する企業として社会的に評価されます。

 

「大規模法人部門」と「中小規模法人部門」、「ホワイト500」のちがいとは

健康経営優良法人は、企業の規模に応じて「大規模法人部門」と「中小規模法人部門」の2つにわかれています。部門ごとに認定基準が異なる点が特徴です。

 

さらに、大規模法人部門の上位500法人は「ホワイト500」、中小規模法人部門の上位500法人は「ブライト500」として認定されます。

 

また、中小規模法人部門には、ブライト500に準じる企業として「ネクストブライト1000」も設けられています。

 

健康経営の顕彰制度

出典:第3回健康経営推進検討会事務局資料(経済産業省)

 

〈認定基準の区分〉大規模・中小規模を分ける「従業員の人数」

 

健康経営優良法人の申請では、自社がどの部門に該当するかを正しく把握する必要があります。

 

従業員の人数によって、大規模法人か中小規模法人か区分けされる

大規模法人と中小規模法人をわける基準は「常時使用する従業員」の人数です。会社や士業法人においては、以下の基準で区分がわかれています。

 

申請区分

出典:健康経営優良法人についてよくある質問(経済産業省)

 

「常時使用する従業員」とは、必ずしも正社員に限りません。一定の条件を満たしたパートやアルバイトでも該当する場合があるため、注意しましょう。

 

※他業種の申請区分は「ACTION!健康経営」(株式会社 日本経済新聞社)の「申請について」をご確認ください。

 

健康経営優良法人は「健康経営銘柄」と何が違う?

「健康経営銘柄」とは、健康経営優良法人(大規模法人部門)に申請した法人のうち、上位500位以内から特に優れた企業を1業種につき1社選定するものです。対象となるのは、東京証券取引所の上場会社のみです。

健康経営優良法人の認定制度よりも前の2015年度から開始されました。「健康経営銘柄2025」では、29業種から53社が選定されています。

 

経済産業省と東京証券取引所が共同で行う点も、健康経営優良法人と異なる点です。

 

「健康経営優良法人2026(令和7年度調査)」の認定基準

 

健康経営優良法人認定を取得するためには、定められた評価項目をクリアする必要があります。認定の基軸となる5つの大項目と、「健康経営優良法人2026(令和7年度調査)」の変更点、各部門の具体的な認定基準について解説します。

 

健康経営優良法人の認定で基軸となる5つの基準

健康経営優良法人の認定基準は、主に以下5つの項目で構成されています。

 

  • 経営理念
  • 組織体制
  • 制度・施策実行
  • 評価・改善
  • 法令遵守・リスクマネジメント

 

5つの大項目には実施が必須であるものと、何項目か以上の実施が条件になっているものに分かれます。

評価項目の詳細については、「ACTION!健康経営」(株式会社 日本経済新聞社)で確認ができます。

 

ここからは、前年より変更されたポイントについて、詳しく解説していきます。

 

大規模・中小規模部門共通:令和7年度調査の変更点

  1. 「メンタルヘルス」に関する認定要件項目名の変更
  2. 「性差・年代を配慮した職場づくり」が認定要件に追加
  3. 「仕事と介護・治療の両立支援」の設問の改訂
  4. 「プレコンセプションケア」の設問が追加
  5. 「健康風土醸成」の設問が追加

 

1.「メンタルヘルス」に関する認定要件項目名の変更

 

昨今では「メンタルヘルス」という言葉自体が、ネガティブな印象を与えているという意見を踏まえ、認定要件の項目名が「メンタルヘルス不調者への対応」から、「心の健康保持・増進」へ変更されました。

 

2.「性差・年代を配慮した職場づくり」が認定要件に追加

 

認定要件の「健康経営の実践づくりに向けた土台づくり」の評価項目が見直され、小項目として新たに「性差・年代を配慮した職場づくり」が新設されました。女性特有の健康課題や高齢従業員の支援など、多様なライフステージに応じたきめ細やかな健康支援が求められます。

 

3.「仕事と介護・治療の両立支援」の設問の改訂

 

仕事と介護の両立支援、仕事と治療の両立支援に関しても、それぞれ調査票・申請書への設問追加や選択肢の修正があります。令和6年5月に改正された育児・介護休業法を踏まえた修正や、社内の介護に関する制度の利用状況を確認する設問が追加されました。

 

4.「プレコンセプションケア」の設問が追加

 

将来の妊娠や出産を見据えた健康管理「プレコンセプションケア」に関する設問が調査票・申請書に追加され、従業員のライフプランをサポートする企業の姿勢が重要視されるようになります。

 

5.「健康風土醸成」の設問が追加

 

従業員のコミュニケーションやエンゲージメント向上を測る「健康風土醸成」の設問が調査票・申請書に追加されます。健康経営の施策が組織全体にどのように影響しているかの効果検証が求められているといえるでしょう。

 

以上の変更に伴い、認定に必要な選択要件数も増加しました。大規模法人は17項目中14項目、中小規模法人は17項目中8項目の達成が必要となり、より網羅的な実践が不可欠です。

 

大規模法人部門:令和7年度調査の変更点

大規模法人部門における変更項目は以下の4つです。

 

  • PHR(パーソナル・ヘルス・レコード)の活用可能な環境整備
  • 40歳未満の従業員に関する健診データ提供の必須化
  • 経営層による関与の可視化
  • ステークホルダー全体に対する健康経営のあり方を評価

「従業員の健康管理」と「企業全体の推進体制」の強化が重要なポイントといえます。

 

従業員の健康管理

 

調査票・申請書の設問において、個人の健康・医療・介護に関する情報をデジタルデータとして一元的に管理する、PHR(パーソナル・ヘルス・レコード)の活用度が評価されるようになりました。従業員が自身の健康データを確認して行動変容につなげるだけでなく、データ活用による健康支援を企業が行っているかが問われます。

 

さらに認定要件として、保険者との連携促進のため、40歳未満の従業員に関する健診データ提供が必須化されたのも大きな変更点です。

 

企業全体の推進体制

 

経営層の関与についてより具体的な取り組みが求められます。企業全体の目標や、KGIの検証の関与者、健康経営の推進方針を議論する会議体を確認する内容が、調査票・申請書の設問として追加されました。

 

また、ホワイト500の認定要件として、グループ会社や取引先へ健康経営を広げるステークホルダーへの展開が必須項目となりました。

ステークホルダーへの展開とは、健康経営推進マップなどを通してサプライチェーン全体への健康経営推進方法を広げることです。自社だけでなく、社会全体に対する貢献度が求められます。

 

中小規模法人部門:令和7年度調査の変更点

これまで任意回答だった「育児・介護と仕事の両立支援」に関する項目が、選択要件となりました。具体的な支援体制の有無が評価されるため、制度設計や周知活動がより重要になります。

 

令和7年度健康経営優良法人認定事務局の活動及び申請認定に関するご報告(経済産業省)を編集して作成

 

「健康経営優良法人」申請から認定までのステップ

 

 

申請手順が異なる大規模法人部門、中小規模法人部門について、認定までの流れを5ステップで解説します

 

「大規模法人部門」認定までの4ステップ(ホワイト500を含む)

STEP1:「健康経営度調査」をダウンロード

経済産業省が実施する「健康経営度調査」に回答します。健康経営度調査とは、法人の健康経営の取り組み状況と経年変化を分析し、認定にかかる基礎情報を得るためのものです。

 

STEP2:「健康経営度調査」に自社の取り組み状況を記載してアップロード

 

STEP3:認定委員会による審査

 

STEP4:日本健康会議による認定

認定の発表は毎年3月に行われます。

 

 

「中小規模法人部門」認定までの5ステップ(ブライト500を含む)

 

STEP1:「健康宣言」事業に参加する

協会けんぽ等の保険者が取り組んでいる「健康宣言」に参加します。健康宣言事業とは、中小企業が健康づくりに取り組むことを宣言し、協会けんぽがサポートするものです。参加については、加入している協会けんぽや保険組合に問い合わせてみましょう。

 

STEP2:「健康経営優良法人(中小規模法人部門)認定申請書」をダウンロード

 

STEP3:「健康経営優良法人(中小規模法人部門)認定申請書」に自社の取り組み状況を記載してアップロード

 

STEP4:認定委員会による審査

 

STEP5:日本健康会議による認定

認定の発表は毎年3月に行われます。

 

 

「健康経営優良法人2026」の申請期間はいつ?

 

●大規模法人部門(ホワイト500含む)の申請期間

2025年8月18日(月)~10月10日(金)17時締切

●中小規模法人部門の申請期間

2025年8月18日(月)~10月17日(金)17時締切

 

申請を検討している場合には、経済産業省や公式ポータルサイト「ACTION!健康経営」のホームページをチェックしておきましょう。

 

認定にはどんなメリットがある?「健康経営優良法人」

 

 

健康経営優良法人、認定のメリットは、生産性向上・業績向上・株価上昇etc

健康経営優良法人に認定されるメリットは、「従業員の健康を大切にしている企業」として、よりよい社会的評価を受けることです。

結果として、企業の業績向上や株価への好影響も期待できます。また、働きやすい職場として認知されることで、採用活動が有利になったり、従業員の定着率が向上したりする効果も見込めます。

 

中小企業にもメリット多数!自治体からの表彰や低利融資も

中小企業が健康経営優良法人に認定されると、自治体から表彰されることがあります。企業の知名度やブランドイメージの向上につながるでしょう。

また、地域の金融機関から融資金利の引き下げを受けられる場合もあります。国の補助金審査や公共入札で加点評価されることもあり、事業拡大のチャンスを広げられます。

 

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健康経営優良法人の認定取得は入念な準備が必要

 

健康経営優良法人の認定は、企業の価値向上につながる多くのメリットをもたらします。一方で、申請準備には手間がかかり、健康経営推進体制の構築など組織的な対応が不可欠です。

 

特に、2026年度からは、PHR活用やプレコンセプションケアなど、より専門的な対応が求められます。申請準備の負担軽減と専門性にもとづく効果的な施策実行のためには、外部の専門家サービス活用も有効な方法の一つです。

 

株式会社エムステージでは、健康経営優良法人認定取得をサポートする「健康経営優良法人コンサルティング」を提供しています。

「健康経営に取り組みたいけど何から始めればよいかわからない」「社内にリソースがない」という方は、お気軽にご相談ください。

 

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「健康経営®」は、NPO法人健康経営研究会の登録商標です。

 

この記事の著者

片桐はじめ

片桐はじめ

公認心理師・臨床心理士
精神科病院、心療内科クリニックの心理職として、精神疾患を抱える方や働く人のカウンセリングや心理療法等に従事。
現職の経験を活かし、メンタルヘルス・産業保健領域でのWebライター、インタビューライターとして活動中。

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