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リモートワークで急増の懸念…衛生担当者が知っておきたい「アルコール依存症」

(更新:

サンポナビ編集部

外出自粛や各種のストレス…新型コロナウイルスの流行によって、アルコール依存症への懸念が高まっています。

アルコール依存症の基礎知識と、職場における対策について紹介します。

 

衛生担当者が知っておきたい「どこから」がアルコール依存症?

 

どこまでお酒を飲んでいたら「アルコール依存症」になるのか

「普段からお酒はよく飲む……けど、どこからがアルコール依存症なの?」

 

そう思っている方も多いかもしれません。

 

アルコール依存症については、その判断のひとつとして「家族・仕事・趣味など、これまで大切にしていたものよりも、はるかにお酒を優先させる状態」だといわれています。

 

これはつまり、飲酒の量を自分でコントロールできない・断酒できない状態や、離脱・禁断症状がみられる状態を指します。

 

また、アルコール依存症の診断にはガイドラインがあります。次のガイドラインをチェックしておきましょう。

 

●アルコール依存症の診断ガイドライン(ICD-10)

 

過去1年間に以下の項目のうち3項目以上が同時に1か月以上続いたか、または繰り返し出現した場合

1.飲酒したいという強い欲望あるいは脅迫感

2.飲酒の開始、終了、あるいは飲酒量に関して行動をコントロールすることが困難

3.禁酒あるいは減酒したときの離脱・禁断症状

4.耐性の証拠(少ない酒量では酔えない状態など)

5.飲酒が中心の生活。 お酒を飲んでいる時間が延長される

6.明らかに有害な結果が出ている、問題が発生しているにもかかわらず飲酒をする

出典:厚生労働省「みんなのメンタルヘルス総合サイト」より一部改変

 

 

そもそも「適切なお酒の量」ってどれくらい?

厚生労働省の掲げる「健康日本21」では「適度な飲酒」と「多量飲酒」について、次のように定義しています。

 

こちらについても確認しておきましょう。

 

●適切な飲酒

 

・1日平均20g程度の飲酒

 

●多量飲酒

 

・1日平均60gを超える飲酒

出典:厚生労働省「健康日本21

 

 

なお、60gとはお酒に含まれる純アルコール量のことで、瓶ビール(中瓶)なら約3本、25度の焼酎ならば300ml、日本酒で3合弱に相当するといわれています。

 

アルコール依存症が「健康」と「仕事」に与える影響

 

 

アルコール依存症が「健康」に与える影響~飲酒に関連する病気

「酒は百薬の長」ということわざもあり、適切な量を飲む分には、むしろ健康にとって良いイメージがあります。

 

しかし、2018年に医学雑誌の『LANCET』で掲載された論文によれば、少量のお酒でも健康に悪影響をもたらすという研究結果も出ているようです。

 

そして、言うまでもなく、過剰な飲酒はアルコール依存症だけでなく、数多くの病気と関連があります。

 

代表的なものには急性アルコール中毒があり、死亡に至るケースもあります。

 

その他、脂肪肝やアルコール性の肝硬変をはじめ、口腔がん、食道がん、大腸がんなど、さまざまながんにつながるといわれています。

 

アルコール依存症が「仕事」や日常生活に与える影響

アルコール依存症の恐ろしさは、仕事をはじめとした日常生活を送ることが困難になってしまうことです。

 

例えば、業務中の効率低下。そして、注意力の低下による事故や労働災害の危険性があります。

 

さらに、アルコール依存症に関しては、欠勤や早退が連続する事例も多くあり、周囲の同僚などに与える影響も看過できないものになってしまいます。

 

アルコール依存症とストレスや過重労働には深い関係があるといわれていますので、この対策には産業保健による働きかけも必要となってくるのです。

 

リモートワークの増加で懸念されるアルコール依存症の急増

 

 

職場でアルコール依存症の対策を行うことの大切さ

歓送迎会や忘年会、懇親会など、仕事の関係でお酒を飲む機会があるでしょう。

 

また、日常的な業務を進めるうえで、そういった“飲み会”がコミュニケーションを円滑化することもあります。

 

※ただし、職場としてはアルハラ(アルコールハラスメント)に注意する必要があります。そして、過剰な飲酒をしてしまう背景には、ストレスやメンタルヘルス不調があるといわれていることも忘れてはなりません。

 

だからこそ、企業としては産業保健の観点からアルコール依存症の対策を進めていく必要があります。

 

リモートワークの増加に伴う、飲酒習慣の注意点

仕事に関するストレスが原因となって大量の飲酒につながってしまうことも多いといわれています。

 

近年では精神疾患の労災請求件数は増加傾向にあり、企業にとってはメンタルヘルス対策が急がれているところです。

 

さらには、新型コロナウイルスに関する様々なストレスや、昨今の在宅勤務の増加も注意したいところです。

 

通勤がなくなったことで、早い時間から遅い時間までお酒を飲むことができる環境ができ、アルコールを摂取する機会が増え、お酒を飲むことが常態化してしまう。

 

そういったケースからアルコール依存症につながる恐れもあるでしょう。

 

 

人事や総務、衛生管理者の方は、産業医などの専門スタッフと連携し、健康診断やストレスチェックの結果を十分に活用して、適切なアルコール依存症対策・ストレス対策を行っていきましょう。

 

この記事の著者

サンポナビ編集部

サンポナビ編集部

企業の産業保健を応援する『サンポナビ』編集部です。産業医サポートサービスを提供している株式会社エムステージが運営しています。 産業医をお探しの企業様、ストレスチェック後の高ストレス者面接でお困りの企業様は、ぜひお問い合わせボタンからご相談ください。

 

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