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<産業医コラム>「-謹賀新年2026-」

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<産業医コラム>「-謹賀新年2026-」

浜口伝博

健康的な女性のイメージ
健康的な女性のイメージ

明けましておめでとうございます。

今年も、皆様の健康と幸福を心より願っております。

 

さてさてそうは言うものの、働きながら現実生活を送っていく中で健康を維持すること、幸福を実現することはたやすいことではありません。とくに健康面においては、ただでさえ、職場のストレスに加えて生活上のストレスもあります。

 

毎日いろいろやることもあって、多くの皆さんが睡眠時間を削って睡眠不足で疲労も取れないままお過ごしかもしれません。脳は睡眠が足りなくなると、だんだんと不安定になって、気分は落ち込み、イライラも高じて、絶望感をもつようになることもあります。これはまさに幸福からどんどん離れていく、正反対の生活スタイルです。

 

幸福を感じるのは「脳」ですから、これからは脳の健康維持に努める必要があります。近年、健康を害するスマートフォン(スマホ)の影響も徐々にわかってきましたので、デジタル時代における健康管理のあり方について少し説明をすることにします。

 

すでにスマホは、仕事にも私生活にも欠かせないツールとなっていますが、その反面、私たちの脳と心に深刻な影響を及ぼしていることもわかってきました。

 

昨年12月、米ペンシルベニア大学などの研究チームが発表した研究結果によると、「12歳以下でスマホを所有する子供は、持っていない子供と比べて、うつ病のリスクが31%、肥満のリスクが40%、睡眠不足のリスクが62%も高くなること」が明らかになりました。またスマホを持ちはじめる年齢が若いほど、これらの傾向が強くなることも報告されています。衝撃的なニュースです。

 

研究者たちによると、スマホの長時間使用は、子供たちの脳の前頭前野の発達を遅らせて、その機能を低下させるとのこと。結果としてその部分の脳の体積が増加せず、脳神経の発達が進んでいないようなのです。

 

脳の前頭前野は、思考力、判断力、意思決定、感情のコントロール、集中力、創造性など、私たちが社会生活を営む上で人間らしさを維持稼働させる高次の機能を司る部分です。この発達が未熟となると、深い考えができず、創造的な発想ができず、人に配慮できず、忍耐力が育たず、集中力や学習力も育ちません。

 

また脳の奥には扁桃体という部分がありますが、ここは感情の中枢で特に不安や恐怖を発動させる機能役割があるのですが、この機能は日常的に発現させるわけにはいかないので前頭前野が基本的に抑制的に管理しています。

 

ですので、前頭前野が低下すると、扁桃体への抑制が弱まり不安や恐怖といったネガティブな感情がコントロールできなくなり、結果として、些細なことで不安を感じやすくなり、ストレスに弱くなったり、うつ病を発症するリスクが高まるということになります。こういった脳の機能不全がスマホによって子供たちに起こっているのです。

 

子供たちの脳は成長期にあり、かつ脆弱なので外部の刺激でこんなにまで影響が起こっていることに驚くばかりですが、これは決して子供だけの問題ではありません。大人においても、スマホの過度な使用は前頭前野の機能を低下させ、脳を痛めることにつながります。

 

仕事で高いパフォーマンスを発揮して、心の健康を保つためには、大人である私たちこそ、スマホとの適切な距離感を保つことが大切です。「よく眠れない」「スマートフォンを手放せない」「集中力が続かない」「些細なことでイライラする」といったサインを見逃さないでください。

 

そこで、心の健康を維持するための5つのポイントを紹介しておきます。

 

1.デジタルデトックスを意識し、脳を守りましょう

 

スマホとの付き合い方が大切です。仕事中は必要な時だけ使用し、休憩時間には画面から離れて体を動かしたり、同僚と会話をしたりする時間を作ってください。休憩時間にスマホを見続けることは脳を休ませることにはなりません。休日には意識的に「スマホを触らない時間」を設けましょう。読書、音楽鑑賞、料理、散歩など、前頭前野を活性化させる活動に時間を使うことで、脳の健康を守ることができます。

 

2.質の良い睡眠を確保し、脳を回復させましょう

 

睡眠中、脳は日中に蓄積された老廃物を排出し記憶を整理します。成人の理想的な睡眠時間は7〜8時間です(最低でも6時間は取りましょう)。寝る前のスマホ使用はブルーライトにより睡眠の質を損ないます。就寝の1〜2時間前からはリラックスタイムを設け、規則正しい睡眠リズムを保ちましょう。

 

3.バランスの取れた食事で脳に栄養を届けましょう

 

脳は全身のエネルギーの約20%を消費する臓器です。特にオメガ3脂肪酸を含む青魚は脳の機能維持に重要です。食事の時間はスマホを脇に置き、食べることに集中しましょう。野菜や果物、魚類を積極的に取り入れ、三食を規則正しく摂り、こまめな水分補給を心がけてください。

 

4.適度な運動で脳を活性化させましょう

 

適度な運動は前頭前野を含む脳の機能を向上させます。運動により脳への血流が増加し、脳細胞の成長が促進されます。通勤時にはスマホをしまって一駅分歩く、階段を使う、昼休みに散歩をするなど、日常生活の中で体を動かす機会を増やしましょう。スマホ歩きは危ないですよ。週に150分程度の中強度の運動を目標に無理のない範囲で継続することが大切です。

 

5.リラックス会話で、心の健康を守りましょう

 

気の置けない友人たちと気兼ねなく会話することが実はストレス緩和に有効です。会話でストレスが解決しなくてもいいのです。ストレスをだれかと共有できた、という感覚そのものがあなたの気分を緩和します。厚労省の統計でも、ストレスを人に話しただけで解決はしていないけど、6割の人が気分が楽になったと回答しています。ストレスを口に出して、体の外にいったん吐き出す効果がストレスのレジリエンスにもなるのです。

 

これら5つはどれも特別なことではなく、だれでも実行できる内容です。ぜひ、できるところから心がけてください。行えば、結果として、健康と幸福は、やってきます!

 

 

文章出典:​​​​​​​人事・総務向け「ウェルビーイング経営」サポートメディア「ウェルナレ」専門家記事より寄稿

 

この記事の著者

浜口伝博

浜口伝博

(はまぐち・つたひろ) 産業医科大学医学部卒業。病院勤務後、(株)東芝(1986~1995)および日本IBM(株)(1996~2005)にて専属産業医として勤務。その後、Firm & Brain(有) を設立し開業型の産業医として独立。大手企業を顧客企業としてもち、統括産業医、労働衛生コンサルタントとして活躍するかたわら政府委員や医師会、関係学会の役員を務めながら、産業医科大学をはじめ、慶應義塾大学医学部講師 (非常勤)、愛媛大学医学部講師(非常勤)を兼任。