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片桐はじめ


休職中に主治医や会社からリワークを勧められ、「早く復職したいのに遠回りではないか」「プログラムに参加して何の意味があるのか」と感じる人も少なくないはずです。
費用や時間をかけてまで通う価値があるのかと、疑問に思うのも当然の心理です。
本記事では、なぜリワークが「意味がない」と感じてしまうのか、その背景とプログラムの真の目的について解説します。
現在のモヤモヤした気持ちを整理し、納得して復職をスムーズに進めるための参考にしてください。
目次

リワーク(Return to Work)とは、休職中の方が職場復帰に向けて行うリハビリテーションプログラムです。医療機関や地域障害者職業センターなどが実施しており、復職に向けた土台作りを目的としています。
リワークの最大の役割は、「再休職の防止」です。
自宅療養で症状が改善しても、再発予防策やストレス対処法を身につけていなければ、復職後に再び同じ壁にぶつかり、体調を崩してしまうリスクが高まります。
ある調査では、リワーク利用者の復職1年後の就業継続率は83.2%と推計され、利用しなかった人の再休職のリスクは利用者の2.3倍でした。
プログラムを通じて「自分の傾向」と「対策」を学ぶことは、再休職のリスクを抑え、長く安定して働き続けるための強力な武器になります。
参考:リワークプログラム利用者の復職後1年間の就労継続性に関する大規模調査│日本うつ病リワーク協会

リワークを「意味ない」と感じるのは、休養明けの体力低下や、プログラム内容のギャップが原因です。しかし、真の目的はスキル向上ではなく、作業を通じた「思考の癖」の把握と、復職準備性の客観視にあります。
この目的を理解し、「今の自分の反応を知る場」と捉え直すことで、再休職リスクは劇的に下がります。どうしても辛い時には通所頻度を調整し、スタッフへ正直な気持ちを伝えること自体を「相談の練習」として実践しましょう。それがスムーズな復職への最短ルートになります。
ここからは具体的に「意味がない」と感じてしまう5つの理由と対策を紹介します。
リワークを利用する時期は、症状が安定し始めた回復期にあたります。しかし、休養により基礎体力が低下しているため、週に数回の通所やプログラム参加だけでも、想像以上に疲労を感じることがあります。
リワークは「リハビリ」です。骨折した人がいきなり走れないのと同じで、脳や体も急には動きません。
「計算ドリルや塗り絵など単純作業ばかりで、仕事に役立つとは思えない」と感じる不満は、意識が高い人ほど陥りやすい罠です。
リワークの初期段階では、スキルの向上よりも「集中力がどれくらい続くか」「疲労を自覚できるか」「ミスをした時にどう対処するか」などの働くための土台を確認することが主な目的です。
リワークでは集団でのプログラムが行われることが多く、対人関係上のストレスが生じることもあります。例えば、以下のような点がストレスになりがちでしょう。
休職中は一人で過ごす時間が長いため、集団の中にいるだけで神経が過敏になるのは自然な反応です。
お金の不安は、心の回復を最も妨げる要因の一つです。リワークに通っていても、主治医や産業医の復職許可がすぐに下りるとは限りません。医療機関でのリワークであれば健康保険が適用されますが、それでも一定の自己負担は発生します。
休職中で給与が減額、あるいは傷病手当金のみで生活している状況では、経済的な負担が不安要素となります。
症状が落ち着いてくると、このままゆっくり休めば元通り働けると考えがちです。日常生活が送れるようになると病状を楽観視し、「わざわざリワークを受ける必要はない」とリワークの意義を感じにくくなります。
しかし、「体力さえ戻れば大丈夫」という思い込みは、再発リスクを高める要因になります。

リワークに継続して通うことで得られるメリットは以下の3つです。
リワークでの活動記録が、「働く準備が整っている」ことを示す客観的な復職判断の材料になります。
多くのリワーク施設では指標を用いて利用者の状態を評価しています。例えば、代表的な指標である「復職準備性評価シート」は、以下の8項目から復職に必要な準備が整っているかを数値で把握できるものです。
| 項目 | 具体的な確認ポイント |
| 基本的な生活状況 | 起床時刻:出勤に間に合う時刻に起きられているか
食生活リズム:1日3食、決まった時間に食べているか 戸外での活動:散歩や図書館など、日中に外出できているか |
| 症状 | 精神症状:やる気のなさや不安などの支障はないか
身体症状:頭痛・倦怠感・吐き気などの症状がないか 熟眠感:「よく眠れなかった」という感覚があったか 睡眠時間:業務に耐えうる睡眠時間を確保できているか 日中の眠気:日中、強い眠気に襲われていないか 興味・関心:趣味などを楽しむ意欲が戻っているか |
| 基本的社会性 | 身だしなみ:清潔感があり、出勤可能な服装か
他人との交流:挨拶や雑談など、人との会話が苦でないか |
| サポート状況 | 家族:家族は復職を応援し、協力してくれるか
主治医:医師に本音を話せ、信頼関係があるか |
| 職場との関係 | トラウマ感情:発病に関するトラウマから生活に影響があるか
規則:時間や約束をきちんと守れているか |
| 作業能力 | 集中力:新聞や本を読むなどの活動に集中できるか
業務への関心:「働きたい」という意欲が湧いているか 業務遂行能力:健康なときの何割の力が回復しているか |
| 準備状況 | 上司:定期的な面談や電話連絡をしているか
準備:通勤練習や生活記録表の記入ができているか |
| 健康管理 | 服薬:薬を飲み忘れず、自己判断で止めていないか
健康管理スタッフ:産業医や保健師の話を聞く姿勢があるか 再発防止:休職原因を理解し、対策を話し合えるか |
主治医の診察だけでは、復職に必要な業務遂行能力の回復度や対人スキルが十分かを把握しにくいことがあります。
リワークから得られる客観的な指標を会社側に共有することで、会社側も安心して復職を受け入れやすくなり、復職判定がスムーズに進む可能性が高まります。
参考:参考ツール紹介│日本うつ病リワーク協会
リワークプログラムでは、復職後の再発を予防するストレス対処力を身につけられます。
その中でも、物事の捉え方や行動を変化させることで問題の解決を図る認知行動療法は、再発防止に高い効果が期待でき、リワークでも取り入れられています。
特に、うつ病の症状が改善しても、過去の失敗や不安を繰り返し思い出す「反すう思考」が残ってしまうケースは少なくありません。反すう思考に適切に対処できないと、ストレス負荷が大きくなり、再休職に至る可能性が高まります。
リワークプログラムの認知行動療法では、以下のような手法を用いて、思考の癖への対処法を学べます。
※あくまでも認知行動療法の一つであるため、行う内容はリワーク施設により異なります。
復職前に自分の思考への対処スキルを確立しておくことで、復帰後のストレス場面でも冷静に対応でき、スムーズな復職につながります。
参考:職場復帰後に再休職に至ったうつ病をもつ人の認知・行動の特徴│日本看護科学会誌
休職期間は、これまでの働き方やキャリア観を見直す機会でもあります。リワークプログラムの中には「キャリアデザイン」を取り入れているものもあり、今後の働き方について考える時間が持てます。
単に元の職場に元のまま戻るだけでなく、自分にとって無理のない働き方を模索することは、復職後の長期的な就労定着につながります。

リワークの利用について、よくある疑問と回答をまとめました。
A.一般的には3か月から7か月程度とされています。医療機関によっては、3か月を1クールとしてプログラム内容を網羅できるような計画を立てているところもあります。
リワークの利用期間は、個人の回復状況や勤務先の就業規則で定められている休職期間によって決まります。たとえば、主治医の判断により慎重な経過観察が必要な場合は6か月、休職期限との兼ね合いで調整が必要な場合は3か月というように、状況に応じて柔軟に設定されます。
あらかじめ残りの休職可能期間を確認し、医療機関と相談しながら無理のない計画を立てましょう。焦って期間を短縮しようとするよりも、万全の状態に戻すことを優先する方が、結果的に再休職のリスクを下げられます。
参考:リワークプログラムとは│日本うつ病リワーク協会
A.リワークに通わずに復職することは可能ですが、再休職のリスクが高まります。また、リワークを利用しないと、通勤訓練の実績や作業能力の回復度など復職判定に必要な情報が足りず、会社側が復職の判断をしづらくなることもあります。
リワークなしで復職を目指す場合は、自主的な通勤練習や起床時間の徹底など、自分でリハビリを行い、復職準備をすることが必要です。生活リズム表などで記録を残して主治医や会社に共有すると、復職の判断をしやすくなります。
A.医療機関で行うリワークでは、自立支援医療制度を活用すれば費用を軽減できます。
自立支援医療制度とは、精神疾患などで通院が必要な人の医療費負担を軽減する制度です。通常3割の医療費が原則1割負担となり、リワークもこの対象に含まれます。
なお、世帯所得等に応じてひと月あたりの支払上限額が設定されますが、具体的な負担上限額は自治体の判断によって決まります。
また、地域障害者職業センターなどの公的機関では、原則無料でリワークが受けられます(公務員は除く)。しかし、実施機関や定員に限りがあるため、受けるまでに時間がかかる可能性もあるでしょう。
A.まずは施設スタッフや主治医に「何がつらいのか」を率直に相談してみてください。プログラムの変更や通所頻度の調整などで、負担を軽減できる可能性があります。また、状況を相談し調整することも、復職後に必要なスキルの一つです。
どうしても合わない場合は、別の医療機関や施設への転院を検討することも選択肢の一つです。無理に通い続けることがストレスとなり、症状が悪化しないようにしましょう。
A.近年は、自宅から参加できる「オンラインリワーク」に対応した施設が増えています。通所による体力的な負担や、集団での対人ストレスを感じる人にはおすすめです。
施設によっては、オンラインから始め、体力の回復に合わせて週1〜2回の通所へ切り替えることも可能です。

企業がリワークの利用を推奨する背景には、労働契約法にもとづく「安全配慮義務」があります。従業員が心身ともに健康な状態で働けるよう、必要な措置を講じる義務です。
リワークを通じて段階的に復職準備を整えることは、再発や再休職のリスクを軽減させる効果があります。そのため、メンタルヘルス不調者の対応においては、リワークの活用が安全配慮義務を果たすために有効な手段といえます。
主治医の「復職可能」という診断書だけで復職を認めると、再発してしまうリスクがあります。主治医は「日常生活に支障がなくなれば復帰可能」と判断することが多く、職場で求められる負荷に耐えられるかまでは判断しにくい場合があるためです。
リワークでの客観的な評価データがあれば、従業員の回復度を正確に把握でき、適切な配慮のもとで復職を許可しやすくなります。
復職支援を円滑に進めるためには、産業医や復帰先の管理職、人事労務担当者の連携が不可欠です。主治医や産業医が判断する回復度と、現場が求める業務遂行能力にズレがあると、無理が生じて再休職のリスクが高まります。
異なる立場の担当者が情報を共有し、復帰をサポートする体制を整えることが、安定した職場復帰には必要といえます。
しかし、産業医面談などに関する連絡調整やスケジュール管理をすべて手作業で行うのは、担当者にとって大きな負担です。こうした課題の解決には、復職支援に特化したシステムの導入もおすすめです。
株式会社エムステージが提供する「WellcoHR」では、オンライン上で復職プログラムの管理や情報共有をスムーズに行えます。厚生労働省が推奨する手順に沿って、休職者の休職期間や診断書、生活リズムなどの情報も漏れなく管理できます。
休職者の管理でお悩みの方は、ぜひお気軽にご相談ください。
リワークが「意味ない」と感じる背景には、プログラムがあわないことや開始時期が早すぎるといった要因が考えられます。しかし、リワークは再休職を防ぐ有効な方法であり、自分自身のストレスの傾向や対処法を正しく理解するために必要です。
「意味がない」と感じたときは、一度立ち止まって、その理由を主治医やスタッフに伝えてみてください。納得のいく形でリワークを活用し、自信を持って復職できる日を目指しましょう。
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